飛脚走りと、キャベツの夏

嬬恋高原キャベツマラソン 2018年7月1日(ハーフ)

関東地方は、まさかの6月29日の梅雨明け宣言
夏です。早すぎです。
いつのまにか、沖縄地方と同じ気候帯に入ったということでしょうか。

梅雨明け3日後の今日、群馬県北西部の嬬恋高原ではキャベツマラソン大会です。北軽井沢マラソンのとなり村。キャベツの産地として名をはせています。

 

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朝から、夏に突入した太陽光線が容赦なくふりそそいでいます。標高1400メートルとはいえ、気温はグングンと上昇を続けます。

「スポーツなどの屋外活動はひかえましょう」という天気予報のご忠告などどこ吹く風、わが道をゆくランナーたちで会場は大盛況です。

 

暑さのもたらす変化

 

暑くなると、人はどうなるか。
いえ、こむつかしい人体生理の話じゃありません。

暑さは、人を興奮させる。
人生ワビサビの「演歌」に、暑さは似合いません。冬の寒さでヒュルリーとこごえてこそ、哀愁を歌えるのです。

暑さといえば、地中海沿岸の陽気さ。
ラテンの調べ。
きわめつけは、ブラジルはサンバの大盛況。
おどれ、うたえ、さわげ。
すべて、暑さあってこそです。雪まつり会場に、サンバは無理です。

で、夏に突入したマラソン大会。
走る前から、汗がしたたり落ちます。
とくれば、冬の大会とは、世界がまったくちがいます。

そうです、キャベツマラソン会場は、すでに「サンバ会場」化しています。村長さんまで大興奮。マイクをにぎって離しません。祭りだ、わっしょい。

 

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アドレナリン全開

 

スタート地点。

ハーフマラソンランナーは、およそ2000人。林の中にイッパイです。にぎやかです。日差しがまぶしい。
わたしは勢いにおされて、ほとんど最後尾につきました。

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午前9時にスタートすると、いきなり長い急坂をくだります。
そうです、暑さの中、ただでさえコーフン状態のランナーに最初に待ちかまえているのは長い長いくだり道です。
ふだん、平地ではおそいランナーでさえ、スピードアップしてしまいます。

暑さの興奮に、重力の加勢、スピードの興奮が重なって、もうペースもあったもんじゃない大集団がバンバンバンと大きな足跡を響かせてかけおりてゆきます。

ああ、やっぱりサンバの行進だあ。マラソンじゃない。 

 

林から、大高原の世界へ

 

スタート地点にもどるレースですから、くだった以上は、同じだけ昇るというのが宿命です。
このレースの特徴は、くだりが終わったな、と思うと、いきなり昇りがはじまってくることです。平らなところがない。
昇りに入ると、さすがに足音バンバンの盛況はとだえますが、かわって始まるハアハアハアの吐息の大合唱。

真夏の大型犬でさえ、こんな息ははきません。

スピードは落ちますが、にぎやかさの変化はありません。昇りでもつづくサンバのリズム。

5キロほどくだると、急に木立がとぎれ、場面が一気に開かれてゆきます。

嬬恋高原

広い広いキャベツ畑。キャベツ高原。全国に年間1800万ケースを出荷する、といわれていますからケタがちがいます。

コースと並行して植えられているキャベツの美しさと均衡は、まさにプロの技です。わが家の虫と共存しているキャベツとは、雲泥の差です。脱帽。

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給水所にもキャベツ、キャベツ

 

マラソン会場では、キャベツ食べ放題なんですが、給水所でも変わりません。給水所にもキャベツが盛られています。キャベツづくし。

なにしろキャベツは食べる胃腸薬ともいわれるくらいです。キャベツに食べ過ぎの心配はありません。主成分は「ビタミンU」ともいわれるキャベジン、くわえてリゾホスファチジン酸等、荒れた胃粘膜保護作用ばかりでなく、細胞修復細胞再生促進と神のような働きが内蔵されているわけですから。

はやさを目ざすランナーにとっては、給水所は通過点のひとつですが、わたしのような鈍足ランナーにとっては、停留所になります。

ストップして、キャベツをいただく。
「おいしいですねえ。甘いし水々しい」
「でしょ。そこの畑でとってきたばかりのを切ったのよ」
「つけるのも、色々あって迷いますね」
「みんな試してみて」

盛大なキャベツのざく切りだけではなく、キャベツにつけるミソも迷うほど並んでいます。とりあえず、みんな試してみます。

「どれも、いい味ですねえ」
「ゆっくり食べてって。いくらでもあるから」

給水所の裏手には、見渡す限りのキャベツ畑がひろがっています。

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キャベツは、いくらでも切るからね、といわれました


 

遠くの山、近くの山

 

キャベツ畑をこえた、ずっとずっと向こうの南面には、わたしが東側から毎日眺める浅間山がちがう表情でどっしりとかまえています。

それをかこむように、浅間隠山鼻曲山湯の丸山、篭ノ登山

 これらは、みんな、わたしもテッペンをふんだ山々です。 

コースの反対側には、キャベツ畑につづく丘陵がせり上がって、四阿山(あずまやさん)にいたる稜線がいっしょについてきます。
この山頂にも、3回立っています。
群馬と長野を境するこの山の頂上からは、360度の絶景が待っています。富士山も、眺められます。感動もんです。

上州、信州の境界周辺には、魅力的な山々がたくさんあります。

ちなみに、わたしは山は静かにゆっくり、景色や空気を味わいながら登るのが好きです。そして景色のいい場所で、ラーメンをつくったり、コーヒーをいれたり。道草登山愛好家です。

坂道ばかりのコース上では、どうしても視線が下に向かいがちですが、頭をあげるとワクワクの山々にかこまれたキャベツマラソンコースです。

 

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これがキャベツだ

 

アップダウンをくり返して、18キロをこえてきました。真夏の日差しは、いぜん容赦しません。遠くにサイレンの音が聞こえるのが、気になります。

さあ、さいごの超ド級の昇りが待ちかまえています。
覚悟を決める給水所。
水をいただき、甘い豆をいただくと、給水のオバちゃんから威勢のいい掛け声で送りだされます。

「さあ、これからがキャベツマラソンだよ!」

そうです、このレースはハッパを食べさせてくれるだけでなく、ハッパかけられるんです。

おっし。
くだりにくだった急な坂道が、今度は反対の顔をして、ゴールまで待ちかまえています。
おそらく、スタート地点にキャベツを置いたら、ここまで威勢よくコロコロところがってくることでしょう。

キャベツコロリン。

気をひきしめます。
しかして、現実は気合だけでは、カラダを押し上げてゆくことはできません。
ま、体力がついてゆかない、ということです。

走っては、歩き、また意を決して走り、歩き、のアリさん行進でゴールを目ざします。
それでも、一歩すすめば、一歩ちかづく。
マラソンには、人生がつまっています。

ようやくいい香りの充満する土のグランドに到着。 グランドは平らです。にぎやかです。サンバです。祭りだ。

坂とキャベツを堪能したレースでした。
2時間16分。
記録表のすぐ下には、昨年の記録が併記されていました。昨年より5分遅いのか。

1年で5分遅くなるとしたら、あと何年走れるんだろうな。 

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