一周で、力尽き
名は、体をあらわす、なんていいます。
レース名が「地獄の夏マラソン」です。
シャレっ気、あるじゃん。
遊びごころ満載。
小さい子が、浮き輪を胴にまいて、プールにかけ出してゆく気分です。
はい、そんなノリでの参加です。
ところがです。
走り出すと、ぼくをアッという間におい抜いてゆくランナーたち。
えっ、あなた方は、マジに走りにきているんですか?
しぼられたカラダ。
力強い足音。
ビュン、ビュン、ビュンです。
ハーフの部のランナーは、よけいにスタートダッシュが豪快かも。
まだ、先は長いんだよ。
アタマの上の、お天道様が見えていますか?
熊谷だよ。
真夏だよ。
この下を、これから走ってゆくんだよ。
長老様のご忠告も(わたしのことね)、まったく耳には届かないようです。
これじゃ、レースじゃないか(はい、レースでした)。
わたしとしましては、5時間切りを目ざしてトロトロスタート、という計画がつられてオーバーペース気味。
これで、もつかなあ。
その結果は、はやくも1周であらわれてきました。
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熊谷路、そんなに走って、どこへゆく。
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わずかな日影をもらえるコース。一瞬の冷涼感も、役に立ってくれてない。
チグハグ
1周、というのは、まだ3キロです。
疲れのたまる距離ではありません、ふつうは。
そもそも、下見をかねた走りでしょ。
ああ、こういうコース設定になっているのだな。
いがいに、ゆるいのぼり、くだりもあるのかな。
まったく日差しをさえぎるものがない直線路。
おおきな木の枝がはりだして、ひとときの涼をもたらす日影道。
さまざまな表情が、つづいてゆきます。
なにせ、14周もグルグルするのですから、1周目は下見で十分なんです。
ちなみに、14周は、だれがカウントするのか。
1周くらい、インチキできないものか。
受付で渡されたのは、なんともアナログチックなアイディアでした。
太い輪ゴムが13本、の支給。
これをウデにまいて、スタートします。
1周して、スタート地点の陸上競技場にもどったら、所定の箱に、この1本を入れてつぎの周回にすすむ。
2周したら、2本目を投入。
13周まわったら、輪ゴムは終了。
フリーの腕で、最後の1周をまわってゴールだよ。
これなら、まず、まちがえませんって。
ところで、1本目をはずして、ふたたび外周へ。
このあたりから、何となくオカシイ。
ひとことでいうと、カラダのチグハグ感。
波にのってこない。
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腕にまかれた13本のゴム輪。これで、14周を数えてゆきます。
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一周で一本のゴム輪をココに投入して、ふたたび外周に出発。
徐々に潜水開始
走っている感じが、いつもとちがいます。
疲れ、とは別物です。
疲労感は、長く走ればやってくる、いつものお友達ですから。
これをひとことでいうと、チグハグ感なんです。
しっくり、こない。
動きと呼吸が、あってこない。
こういうとき、ぼくは、よくオナカに手を当ててみます。
ときに、手は、耳よりもよく聴いてくれます。
手当てなんていいますもんね。
オナカが冷たい。
汗で、冷えているのかもしれません。
べつに、オナカが痛いとか、吐き気とかの具体的なものではないんです。
ただ、さわってみると、冷たい。
こういうとき、カラダの動きはよくない。
このままゆくと、だんだん沈没に向かいます。
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容赦ない日差し。向こうには、走っているランナーの点。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2020/08/P1050453-1024x768.jpg)
ギンギンギラギラ、お天道様は元気です。
やがてズキズキ
2周目、3周目、チグハグ感は減りません。
すると、こんどはこめかみにズキズキ感もでてきました。
うーん、なんとなく、熱中症?
でも、まだスタートしたてだぜ。
走りつつ、秘伝の飛脚玉をチューチュー。
口の中に、甘酸っぱさが広がります。
オ・イ・シ・イ。
とはいえ、状況は変わりません。
あいかわらず、こめかみズキズキ感はでたり、ひっこんだり。
陸上競技場にもどってくると、同じアナウンスが繰り返されます。
「無理をしないように」。
いやあ、マラソンって、無理をするもんじゃないですか。
無理をするな、といわれれしなければ、永遠にゴールは来ませんよ、なんて。
(よくない発想です)。
同時に、ファイティングポーズを要求されます。
「大丈夫なら、OKサインをつくってください」。
はい、オーケーですよ。
なぜか、陸上競技場に入ると、元気がでてくるんですね。
ひとに見られている、というのは、元気付けの1大要因なのでしょう。
お調子モノ。
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さてさて、陸上競技場にもどってきました。
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トラックの逆走?広い競技場です。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2020/08/P1050457-1024x768.jpg)
ゲートをくぐって、1周。ここで、OKサインを求められます。
せめてハーフは
走りながら、思いをめぐらせます。
このチグハグ感とズキズキ感がつづくなら、いさぎよくリタイヤしよう。
その決断を、どこにおこうか。
とりあえず、7周。
ハーフの距離まで、ガンバレるか。
ゴールの目標から、中間点の小さな目標へ、予定の切りかえ。
その間も、2週に1回の割合で、飛脚玉をチューチュー。
今回、持参の食べものは、コレだけ。
腕時計は見ない(いつもですが)。
スピードが落ちているのはわかります。
でも、スピードが落ちて、何となく走りがスムースになってきたでしょうか。
このクソ暑い中、自分の力以上の走りすぎかな。
ゆっくりペースなら、まだゆけそう。
いつの間にか、チグハグ感やズキズキ感が消えてゆきました。
そして、ハーフの距離をこえてゆく。
陸上競技場の大時計を見上げると、そろそろ、お昼をむかえる時刻。
まだまだ、いける、いけるって。
だんだんと、無心になってきました。
レースの展開というのは、本当に、読めないものです。
(つづく)。
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虫取りの少年にはげまされる。若いって、強い。
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池のハスの花にはげまされる。気分は極楽?
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無理するな それでもしちゃう レースかな
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