勝田全国マラソン2019、完走イモが待っている

君よ、勝田の風になれ

 

ほそ長い商店街がはさむ道に、11,000名ほどのランナーが出番を待っています。
ときに2019年1月27日。
スピーカーからは、『君よ勝田の風になれ』の楽曲が、くり返し流れてきます。
テーマソングをもつマラソン大会、それがこの勝田全国マラソンです。
スーパーや家電量販店に入ったときの雰囲気、に似ているでしょうか。

午前10時30分、号砲は届きませんが、先頭集団がスタートしたようです。
やがて、わたしの前後のランナーたちも動きはじめ、スタートラインをふみます。

 


 

数百メートルは、そのまま商店街通りをすすみますが、右手におれると、片側二車線の広い幹線道路になります。
そこの上下線をすべて使って、ランナーが分散されてゆきます。

これだけの道幅を確保していただけると、前後の混雑も生じるはずもなく、やがてランナーのペースでひろがった列は、後半の一般道に入っても余裕です。
さすが、67回目のしにせマラソンの反時計周りの周回コース設定です。

最初は、腕時計などまったくながめず、ランナーの流れと自分の気持ち良いペースにあわせてすすみます。

 


 

今期最大級の寒気団到来

 

今日は、救護ボランティアランナーとしての参加です。
みなと一緒にフルマラソンコースを走らせていただきますが、イザ何かあった場合には救護活動をしてゆく、という立場です。
何も出会わなければ、ふつうに走ることが認められています。

しつこいですが、そのために「一番でだけは走らないでくださいね」という確認事項だけは事前会議の席で強調されます(笑)。

フルマラソンのスタートは、やや遅めの午前10時半となっています。
これは、首都圏からの日帰りランナーの方も参加しやすいように、という配慮もあるようです。

おかげで、雲ひとつない空からは、太陽の光がサンサンと照らされて、ほっこり暖かさも感じられるようになってきました。
それでも、天気予報では、今期最大級の寒気団が日本全体をおおっているから注意してね、とさかんに報じています。
ときおり吹きぬける風は、たしかに冷たい。

最近気になることは、非常にこまかい「気象比較データ」が持ちだされてくることです。
この冬一番とか、数年に1度とか、かつてないとか、記録にないとか。

冬は寒いもんだ、とノー天気にかまえているわたしには、子供時代のほうが寒かったと記憶しています。
だって、裏を流れる川をせきとめて、有料の天然スケート場があったくらいですから。
今は、凍ることすら、めったにみられません。

自分の感覚で、判断してみる。
はい、時代に乗りおくれた発想です。

 


 

千手観音ロード

 

勝田全国マラソンは、老舗の大会です。
そのためなのか、公式給水所で提供されるものは、水や電解質水、他といった、シンプな構成が主体です。

昨今の地元名産品てんこ盛りの、新型ご接待マラソンとは一線を画す清さをもっています。
お昼時間をはさむ大会ですが、オナカにたまる食べものは、ほぼ提供されません。

くわえて、勝負マラソン
フルの制限時間こそは6時間をとっていただいていますが、4時間をすぎると道路規制は解除されてしまいますので、ランナーは歩道を走り、信号機に従わなくてはなりません。
つまり、マラソンランナーとしての特別待遇から、一般日常ランに切りかえられてしまいます。

なのに、なぜ、こうもあついのか?

それは、沿道の方々によるところも大きいと感じます。

公設の給水所は8カ所、スポンジ提供は6カ所が用意されています。
一方、私設のエイドというか、お接待は、小さい子が「チョコどうぞ」と手をさしのべてくれるところまでふくめると、とても数えきれません。

100とか200なんて単位ではないんです。
とんでもない数のあつい手が、ランナーへむけて、さし延べられています。

日本に凱旋帰国するテニスの大坂なおみ選手の、空港ロビーでの歓迎ぶりはこうなんだろうか、と思っちゃうくらいの感動ものです。
日ごろ、もっとマジメに働けと叱責されるわが身を、一瞬でも忘れさせてくれる心やすらぐ光景。

場所によっては、これをどうぞ、という手がずっと続き、わたしは「ああ、千手観音ロードだあ」とうならずにはいられません。

まさに、神さま、仏さま、私設エイドさまさま。

 


これをどうぞ、と差し出す手の行列。グッときます。

 

楽隊ロード

 

そしてまた、学校の前を通ると、そこの学生さんたちの演奏が力を与えてくれます。
音楽好きな土地がらなんでしょうか。

わたしなど、小学校時代にさわった楽器は、ハーモニカとたて笛だけでしたが、ここでは、ほとんどオーケストラといっていい規模の小学生や中学生たち。
高度で、すてきな演奏です。

思えば、わたしの青春時代は、音楽といえばレコードでした。
A面、B面、オモテとウラがある。
きちんと、人生も教えていました。

やがてウラが消えて、オモテだけとなり、C面とD面がいっしょになってしまったためにつけられた名前なのか、CDの時代へ。
オモテもウラもない、混沌の幕開け。

そして今は、CもDも消えかけて、配信というんでしょうか、実態の見えない世界へ。
進歩なんだか、よくわかりません。

それはさておき、そのまま聞き流すのは、もったいない。
つい、少しだけですが、足を止めて聞き入ってしまいます。
うまいんだな、これが。

 


 

勝田マラソンも数をかぞえてきて、だんだんと楽器演奏をきける場所の地図が頭に入ってきました。
そして、そこまでガンバってみる。
コース上の、小さな目標ができてゆきます。

 


 

最後の前渡小学校の演奏で力をもらうと、あとは6キロ、ゴールをめざすのみです。

 


ここで力をもらったら、あと6キロ。いける、いけるって!

 

そして、今日はわたしのお気に入りのロッキーおじさんにも会えました。
ロッキーのテーマを流していただいています。
しっかりあいさつできました、ラッキーです。

スタートして出た広い幹線道路にもどってきました。
ゆくときは、平らにみえた路面が、帰りはやや登っているように感じるのは疲れからでしょうか。
ときおり、強くおし返す風にあおられます。
でも、もう少し。
歩幅を、意識して、ちぢめます。

いける、いけるって。

 

ゴールは、あつい

 

ゴール地点は、はなやかです。
コース横には、桟敷席までもうけられていて、大勢の方の声援が耳にはいってきます。
視線も、キョーレツ。
ここは、笑ってゴールしないと、カッコつかない。

 


 

今日は、コース上で、何人かのランナーに声をかけられ体調の話などをしましたが、立ち止まっての救護シーンはありませんでした。

過去、この大会では、救急車要請2名をふくめ、救護シーンも少なくありません。
そこで学んだことは、「勝田マラソンの午後は寒い」。

だいたい倒れているランナーの方、さわらせていただくと、チョー冷たくなっています。
低体温症です。
ヒエヒエ。
まずすることは、保温対策、からという感じです。

そして冷えきって動けなくなっているランナーにつきそっていると、こちらまで冷えきってきます。
芯から冷えます、身ぶるいがおきます。
そのため、わたしの格好は、冬の日常ラン仕様です。
長ソデの重ね着、ズボン、手袋。
足もとだけは、ハダシにワラジでしたが、まあ足もととオツムはにぶいから。

 


 

3時間58分でゴール(ネットタイム)。

さて、車できたレースです。
よくいわれることですが、マラソンの本当のゴールは、家に着くまで。
帰りも170キロの道のりが待っています。
レース後のひとり運転は、眠気に注意です。
無事、着くことができました。

気温はさむくても、あつい大会でした。
完走者には、「かんそう」にひっかけて「完走イモ」がいただけます。
中身は乾燥イモです。
本当は、参加者、全員にいただけます。
おいしいです。
お世話になりました。


 

たーさん
勝田みち 沿道つなぐ あつき手よ

 

 

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