飛脚走りで、2018沖縄100Kウルトラマラソン、後半戦

後半戦のスタート

たくさんのスタッフ、家族、友人らでにぎわう糸満市役所前を出ると、ふたたび孤独な走りにもどります。

ただし孤独とはいっても、ウルトラマラソンでは前後するランナーはすべて仲間です。
おたがいに声をかけあい、はげましあい、笑いあい、愚痴りあい、ときにはしばらくおしゃべりで併走しつづけることもあります。

とくに、この大会では背中のゼッケンは、各自でコメントを記入する形式になっています。
わたしは、今回「笑っているかい」と声かけしてね、と書いておきました。
ココロおれたとき、一番効くサプリが「笑い」だからです。

すると、突然うしろから声をかけられます「笑っているかい?」
お、おー、もちろん。
お互い、ニンマリ。

そこから、しばらく話や自己紹介が。
小島さん、元気に仕事にもどっていますか?(一番長く話しつづけた方)。

一方で、100キロの距離を500余名のランナーですと、ときに前方にだれも見えなくなることがあります。
ハッと気づくと、前をだれも走っていない。
あちゃぁ、コースアウトしてしまったか。
一瞬、そんな不安がよぎります。

そんなときは、スピードを落として(決してあげられない)、後続のランナーを確かめて安心したり。
前後でつながっているのだな、としみじみ感じます。

後半戦の腕時計は、ふつうの時刻表示にしてあります。
もう、1キロを何分、なんて計算はできません。
そもそも、坂の多いこのコースにラップ通りになる部分自体が少ない。
大切なのは現在時刻と、これからの関門時間との関係だけです。

あとは、歩かないで走るだけ。


何度も何箇所でも、あわもり君が激励してくれました、いーオッさんです

 

いよいよ内陸部へ

南の駅やえせ(68キロ、第5関門)をこえると、コースは左手におれ、いきなりのぼり坂がはじまります。
さあさあ、内陸方面へと舵をとります。


しばし、海に別れをつげます。

確実にペースが落ちはじめます。
後半のペースを落とす3大要因を、わたしは次のように分析しています。
(1)急坂がふえる
(2)疲れがたまってくる
(3)オジイ、オバア給水所の出現

このうち(1)(2)について、解説は不要でしょう。
特筆すべきは(3)です。

これまでの給水所は、若者が主体でした。
ところが、内陸に切りかわると、給水所スタッフの平均年齢が急にアップするんです。
これが、ペースを落とす重大原因につながってゆきます。

胸に「看護師」とかかれたビブスをつけた従軍看護師、いえ失礼、フレッシュナースさんも給水に参加してくださっています。
わたしはマイカップをさし出し「お水ください」と声をかけます。
するとペットボトルの動きが一瞬止まって、ナースさんの眼光がキラリ。
「どこから来たね、あーグンマーね」
「ええ、そうです。朝は氷がはってます」
「わたしは全国の修学旅行生をみてるからね。グンマーの子はみないい子だよ」
「はあ、そうですか」

ここから、修学旅行生版県民ショーがはじまってゆきます。
でも、どうみてもグンマーの場所はわかっていなようです。
内地の北のほう、くらいの話ぶり。
そんなこと気にせず、グンマーの学生気質が語られはじまる。
そうじて、田舎にゆくほど、好感度が増してゆく雰囲気。

別の給水所では、オジイが待ちかまえています。
「暑いけど、この木陰はいいですね。木の実がなりそうですね」
「夏にうまい実がなるよ。子どものときは、竹の棒でつついてから登って食べたもんだよ」
「棒でたたけば、落ちてきませんか」
「いや、落とすのは別のものだ。木の実を食べたいのは鳥も同じさ。その鳥をねらってハブが待っているんだ」
「木の上にハブですか?」
「ハブは、器用に木登りするんだ。だから、まずハブがいないか、棒でたたいて落としてからじゃないと、とんでもないことになる」
「そ、そうなんですか」
「山の中でハブにかまれた日にや、病院も間に合わない」
このあと、ハブの木登りの話に話題がうつりはじめる。

うーん。
おもしろいです。
もっと聞きたい、でもレース中なんです。
なごりおしさ満杯ですが、話の腰をおらせていただき、先に進まねばなりません。

つまり、誤解していただきたくないのですが、給水所のオジイ、オバアは、わたしの元気のミナモト、沖縄100Kの最大の魅力のひとつ、ということです。
これがあるから、やめられない。

くわえて、ドMな坂道、グテングテンの疲労感、というのも非日常感あふれる楽しみ。
すべてが、ワクワク力でつつまれています。


給水所で待つ、実に魅力的なみなさま!!!

 

フル2本の先に待つもの

ダラダラとした、のぼり坂がつづきます。

ふうー。
もう走っているんだか、歩いているんだか、わからなくなってきます。
おおきく弧をえがくのぼり坂。
息をはずませて、のぼりきります。


ちょうどフルマラソン2本分をすぎたあたり。
神のやどる沖縄南部地域。
ここで神さまは、とっておきの「ごほうび」を用意してくださっています。

大きなトンネルを抜けると、突然の別世界の光景が目の前にあらわれてきました。
真っ青な一面の大海原、かたむきはじめた日差しにかがやく水平線。
おもわず、息をのむ大パノラマです。
その中へ、一気に突入してゆきます。
支える足元には、長くカーブをえがきながらくだるニライカナイ橋

ニライカナイとは、海のかなた(海底)にある理想郷の名前でもあるそうです。
言葉通り、理想郷に飛びこんでゆく気持ちにさせてくれます。
全長660メートル、高低差80メートルを、このときばかりは疲れも忘れ(忘れっぽくなるのもありがたい)、一気にくだって、いえ、あまりの絶景に途中で立ち止まっては景色をカメラにおさめ、またくだってゆきます。
眼下には、夜明けまえに通った知念岬も確認できます。

そしてニライカナイ橋をおりきった先にまつ公民館給水所には、また、話好きのオジイがいたはず。


ニライカナイ橋からの絶景は、一瞬、疲れを忘れさせてくれます。

 

西の山に日は落ちて

暑かった日差しをそそいだ太陽も、ぐっと西に傾いてきました。
太陽を左手に見ながら日没をむかえると、ふたたび前方に太陽があらわれ、それが山の稜線に消えると、またあらわれ、というのを何度かくりかえしたあと、いよいと右前方に本当の日の入りをむかえます。

日没は、ものさみしい。
レース中は、とくにもの悲しい。
制限時間が、せまってくるからです。


やがて、ファミマ前給水所(92キロ、第8関門)。
ここでの楽しみは、沖縄ソバです。
ツルツルという、やわらかなノド越し。
お汁のしょっぱさ。

翌日もお店でいただきましたが、90キロを走っての立ち食いソバの味は、ことのほか別格です。
「ああ、おいしい」
「そーお、もう一杯食べてって」
「いいんですか、ありがと。いただきます」

疲れは、もうなんだかわからなくなってきています。
でも気力だけは、このソバで回復です。

あと10キロをきってきました。
いける、いけるって。


この小さなカップの中に、元気のミナモトがギュッとつまっています。

 

そしてゴール

街中の通りをのぼりきると、一気にくだって最終給水所へ、あとは海岸線を一路ゴールまでです。
すっかり、やみにつつまれて、持参したライトに灯を入れます。

コース上で、すっかりばらけてしまっているランナーたち。
かなり前をだれかが走っている雰囲気は感じますが、距離感まではわかりません。

なぜ走れているんだろう。
いつもとは違った感覚が支配しています。
それでも、足は止まらず、小マタのまま一歩一歩先へと進めます。

あかりに照らされた芝生が輝くスタート地点でもある与那古浜公園へと足をふみ入れて来ました。
入り口から、声をかけられます。
「ナイスファイト、ご苦労様」

公園内を突っきり、ついにフィニッシュゲートが視界にあらわれます。
その先には、色とりどりの琉球衣装をまとったかわいい女の子たちが、三線の音にあわせて待っていてくれます。
その両側からも、惜しみない声援。、拍手。
こんなに待っていてもらえるもの、レースの他にはありません。


ありがとう。
思わず両手をあげてのゴール。
13時間25分。

参考までに、大会で記録していただいた20キロごとのラップを紹介させていただきます。
ハーフより、ちょこっと短い距離感です。
こんなもので、ゴールできるんです。

0〜20キロ:2時間22分19秒
20〜40キロ:2時間16分59秒
40〜60キロ:2時間40分54秒
60〜80キロ:3時間3分58秒
80〜100キロ:3時間0分9秒

今年は、夏のような暑さにみまわれたせいもあり、出走545人中、ゴールされたのは358人(完走率66%)という結果だったそうです。

胸にさげさせていただく沖縄陶器の「やむちん」完走メダル。
大きくて、重くて、素敵でした。

たーさん
速くゆくなら ひとりがいい
遠くへゆくなら みなが要る


ワラジは、そうとうほぐれてきました

 

ウルトラマラソン 一番の難所

ウルトラマラソンで一番大変なところは何でしょうか。

ウルトラマラソンは、ふつう朝の4時とか5時にスタートします。
そのため、できればスタート地点近くに前泊したい。
ところが、ウルトラ開催地は、しばしば小さな町で開催されます。

ということで、わたしがウルトラマラソン選択で一番悩まされるのは「前日までにソコにゆけると、泊まる場所を確保できるか」となります。

たとえば、サロマ湖ウルトラマラソンは、人気レースのため出場枠をとるのも大変なようですが、そこまで飛ぶ飛行機、宿泊場所の確保は、もっと大変とききます。
くわえて、イベント加算ともよばれる、いつもより割高で請求される宿泊代やツアー代金。
難易度、高すぎです。

そこで、沖縄100Kウルトラマラソン。

那覇へは、全国からジャンジャン飛行機が飛んでゆきます。
那覇市内には、多くのホテルや旅館があります。
レース会場までは、那覇市内からシャトルバスで一気にゆけます。
しかも観光、帰省のオフシーズンで、どこも余裕があります。
そして、イベント加算なんか、どこにもありません。

うーん、素敵です。
近所のウルトラもいいけど、沖縄のウルトラもいいよ、ということです。
ただし、ひとつ気をつけていただきたいのは「コースの坂道、けっこうハードでっせ」。


たまには、富士山を下にみる。


今回のホテルは、せまいながらも琉球畳、和でノンビリ。

 

ところで、今回の沖縄100Kウルトラマラソン。
実は、わたしの地元の国営放送局記者さんに興味をもっていただき、グンマーから記者さん、カメラマン、音声さんの総勢3名が大層な放送機材をかかえて沖縄まで飛んできて、スタートからゴールまでの密着取材が同時進行していました(笑)。
これで途中リタイアした日には、グンマーにはもどれない。

そのキンチョーとプレッシャーのドタバタ珍取材記は、次に特別編を予定しています。

 

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