突然の電話
ある日、職場にNHKと名のる方から電話が入ります。
一体、何の事件か。
スネに何本どころじゃないキズをもつ身としては、できれば静かにくらしたい(本音)。
幸せの黄色いリボン(意味不明)。
昨今、医療事故の増加に歯止めがかからず(ひと事にあらず)。
「あのお、走りについて、話をうかがいたいのですが」
あー、事件事故じゃなかったんですね。
走りでいいんですか。
急に、パアーと明るくなると、二つ返事で了解しました。
そしてNHK参上。
さすがNHKといいたくなる、サワヤカさとキレ味をもった気持ちのよい記者さんが職場までおみえになりました。
最初は、走りについての雑談。
2回目は、職場ウラの駐車場で、走りの実践談義。
そして、2回目の取材の最後にひと言。
「こんど沖縄100Kマラソンに参加するって言ってましたよね。われわれもカメラマンを同行して取材にいっていいですか?」
数秒、かたまりました。
ことわる理由もありませんでしたから「はい、どうぞ」といって別れました。
その直後から、事態の深刻さがジワジワと身にしみてきました。
先が読めない
ウルトラマラソンの特徴を、どう表現しましょうか。わたしのような制限時間スレスレ組みにとっては「走ってみなければ、あとはどうなるか予測もつかないレース」と断言しちゃいます。
ハーフマラソン:タイムはともかく、スタートすれば、ゴールは待っていてくれます。
フルマラソン:おおきなアクシデントさえ起こさなければ、あきらめなければゴールはあるでしょう。
しかして、100Kマラソン。
カラダは、どこまでガンバってくれるか。
途中の、迫りくる制限時間の壁をどう乗りこえてゆけるか。
どんな気象条件にみまわれるか。
わたしの人生と同じで、不確定要素が多すぎて、先はまったく読めません。
途中キケンとなった日には、どう責任をとったらよいでしょうか。
ふたたび、グンマーの地へ、顔を向けられるでしょうか。
まあ、そういうことも含めてがウルトラマラソンか。
たとえ「飛脚走りをもってしても、きびしいレースなんでっせ」と地元の青少年たちに愛と勇気をあたえる映像を残してくれるはず。
なにしろ、映像のプロ集団。
実に、ノー天気。
はい、血液型は、オーです。
ホテルのロビーから始まる
予定では、沖縄取材は、レース当日、レース会場からスタート、の予定です。
ところが、どういうエンなのか、数えきれないホテル群を有する那覇にあって、とまるホテルが一緒だったのです。
エンというのは、しばしばこういうものですか。
マラソン決行日の早朝、午前3時すぎに県庁前をたつシャトルバスにのるため、エレベーターでロビーにおりたちます。
すると、そこにはNHK 前橋放送局からいらした記者さん、カメラマン、音声さんが、多数の機材をならべて出発するところでした。
またまた、不思議なエン。
うわあ、これだけの人材、これだけの機材が、こんなわたしの走りの取材のために空路、沖縄までやってきていただいているのですね。
ヘノコは、どーする。
いえ、今日は沖縄100Kマラソンです。
「そ、それでは、現地で」
シャトルバスの中で、とんでもないことになっているな、と身ぶるいしました。
実際の映像機材。こんなに持ってきていただいてるのですか。
スタート会場から
漆黒のやみがまだ支配する中、スタート・ゴール会場の与那古浜公園だけは灯にこうこうと照らし出され、ランナーたちも続々と集結してきます。さあ、始めましょうか。
いよいよ、現地取材がスタートします。
まずは走りの準備です。
わたしは、しゃがみこんで、ゾーリからワラジにはきかえます。
すると、カメラは足のまん前、チョー接近して、ぐっとフオーカスをあわせてゆきます。
え、この距離、このアングルから撮影ですか。
さすがに、恥ずかしくなります。
そうと知っていたら、グンマーでネイルサロンによって(あるのか知りませんが)、おしゃれな爪アートをしてくるんだった。
かわいいブタさんの絵でもかいてもらっておけば、うけたのに(うけないか)。
以降、わたしの一挙手一投足にカメラが追い、マイクが支え、ときおり記者さんの質問がとんできます。
一体なにごとか、とまわりのランナーからは思われたでしょうね。
こんなオッさんですもの。
アイドルが初挑戦の図だったら、どんな結果であれ、絵になるのにね。
どーも、すみません。
今回、お世話になった取材班。おわったあとは、みな日焼けで真っ赤になっていました。
そして、コースの道すがら
レースは、20キロごとにチェックポイントがもうけられており、そこを通過するとネットを介して、位置情報が伝えられるようになっています。
取材班は、現地のタクシーを借りきって、ポイント、ポイントで待機しては、カメラをそなえて「飛脚走り」を映像におさめてゆきます。
なにしろ、沖縄です。
美しいバックグラウンドには、不自由しません。
カメラの設置場所は、教えてもらっていません。
気がつくと、長い直線路のむこうに、カメラが立っています。
わたしは、たんたんと走り、そのまま走りぬけてゆきます。
習性として、カメラを向けられると顔がニヤけてしまい、指にピースサインが立ってしまうのですが、「ふつうに走ってください」と言われていますので、できるだけさりげなさを演出します。
なにしろ、今回の取材の一番の目的は「飛脚走りの解明」にあるのです。
え、ウソでしょ。
自分でも、恥ずかしくなるような目的です。
かつて、こんなに真剣に飛脚走りを受けとっていただけた方がおるでしょうか。
わたしでさえ、ないのに。
アタマが下がります、ははあ。
ゴール会場にて
すっかり夜のとばりがおりたゴール会場。しかしそこだけは、こうこうとした灯りが輝き、とぎれない声援がこだましています。
長かったゴールラインが、視界に入ってきました。
その先、右手には、カメラが待ちかまえています。
さて、どんなポーズでゴールを踏みましょうか(笑)。
2キロ手前から、考えていました。
両手を下に広げて、ゆったりしたゴールシーン。
片手を突きあげ、イケイケどんどん的なゴールシーン。
やっぱ、両手を挙げてのグリコポーズでしょ。
両手をあわせて、合掌🙏おいのりポーズ。
いろんなパターンを想起しながら、ゴールした瞬間には無意識に両手がバンザイ\(^^)/してました。
沖縄陶器のやむちん完走メダルを首にさげたまま、その場でインタビューとなります。
目の前には、テレビカメラ。
右手に記者さん。
あごの下には、集音マイク。
わたしは、記者さんのほうに視線をむけたまま会話をして、カメラの方には目を向けないでと指事されてスタート。
さすが、敏腕記者さんです。
飛脚走りの勉強もされていて、するどい質問が飛びだしてきます。
ただし、こちらは100キロを走った直後で、完走の興奮と疲れで、何をしゃべったのか、よく覚えていません。
その中で、印象に残った質問。
「80キロをすぎて、フォームが乱れてきませんでしたか?」
民放だったら、ここで記者さんをかかえて海に放りこむ、なんて答えも絵になるかもしれませんが、笑顔で受け流します。
わたしも、少しは人間ができたかしら。
いやはや、それにしても貴重な経験をさせていただきました。
みなさまのNHKのおかげです。
長い1日をお世話になりました。
それだけでは、すまない
裏付けが大切。
ワシらのギョーカイ用語では、エビデンス(根拠)と語られるようになったことでしょうか。
レースという、日常とはちがった雰囲気と設定だけでは、飛脚走りの本質を見逃しかねない。
すべては、日常が基本。
そう思われているのか、これで取材は終了とはなりませんでした。
「年明けの疲れがぬけた日曜日、こんどは休みの日に走るといういつものコースを現地取材しますので、予定をつくってください」
どこまでも几帳面、綿密、ぬかりがありません。
単に沖縄に行きたかっただけじゃなかったんですね(笑)。
いえいえ、沖縄でも、朝は3時前から夕方7時すぎまで、超ハードロング取材には、まこと頭が下がりました。
さあ、しかし新たな悩みがでてきました。
普段の、冬の走りかあ。
わたしは、ボロくなった地下タビ、ゴムのゆるくなったジャージ(ヒモで固定)、もう何年も着ているまだ着られるワークマ□のボロジャンパー、毛糸の帽子と手袋、という完全地元の農家のオッさんスタイルで走っているんです。
そのまま、畑仕事もしますから、まがうことなく農家スタイルです。
はやい話、チョー貧乏っくさい格好です。
けっして皇居ランニングには、むいてません。
皇居で走ったら、警備員から声をかけられかねません。
はなやかさ、ゼロどころか、マイナス。
かといって、いまさらパリッとした皇居ランナーファッションというセンスもありません。
しかもしかも、さらなる追加で、わたしの職場姿も見てみたいと(一応、仕事もしてます)。
まだまだ、悩みはつきません。
ランナーへ するどく切りこむ 記者魂
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