森のトレイル
自然林の中の森の小径(トレイル)。
すんだ空気。
大自然にいだかれた、心やすらぐ空間。
都会のランナーにおかれましては、トレランのイメージって、おしゃれ?
生い茂った草やツル。
ヘビにカミナリに毒虫。
歩けばからむクモの糸。
はい、ふだん徘徊するわが里山の雰囲気は、こんなものです。
なんで、そんな道に入ってゆくのか。
常識の欠如、ゆえの酔狂なんでしょうかね。
ところで、トレイルランニングです。
名前は、カッコいい。
8月18日、赤城山の北面でおこなわれたレースです。
ボクは、30kmコースに参加しました。
しかし、正直申せば、長いのぼり坂ではランニングがつづきません。
すっかり、トレイルウオーキングになってきました。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/08/P1040239-1024x768.jpg)
ランニング? ノー、 ウオーキングです。前のランナーも。
山道の装備
舗装されていない山道。
とくると、アタマに浮かぶのは、長グツか地下タビです。
富士山は、地下タビでのぼっています。
六根清浄。
近所の雪の積もった山道は、長グツが便利です。
今回は、走りが入るので、長グツは向きません。
12枚のコハゼをはめるひざ下までの地下タビにしました。
これだと、小石も入りにくい。
ふだんの畑作業用のやつです。
「営林署の方ですか?」
そう聞かれましたが、笑って「いいえ」と答えておきました。
見りゃあ、わかるだろう。
って、わからない格好しているから、こういう疑問を持たせてしまうんですね。
一応、今日はランナーです。
たとえ、コスチューム的には、あか抜けていなくても。
仕方なし。
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スタート前。畑のドロも洗ってきています。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/08/P1040253-1024x768.jpg)
ゴール後。畑仕事のときより、キレイです。
分け入っても
スタートは、予定よりも10分遅れ。
なんでも、しゃべる人が遅刻してしまったから、というユルイ大会。
その流れでではありませんが、後方からのユルユルスタート。
すでに、前方は長く大きな縦列。
そう、トレランのひとつの特徴は、道幅がせまいことです。
スタートは二車線を解放して、なんて状況はつくれません。
最初から、山道。
後ろの方のユッタリペースの流れにのって、息を整えてゆきます。
やがて、縦列は自然に前後にのびて、バラけてゆきます。
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行きにはいただけた、スイカエイド。帰りには、もう残っていませんでした。
そして、徐々にまわりを囲むのはランナーから、自然の景観へと変化をはじめます。
沿道から、声援をおくるひともいません。
人家もありません。
天気予報では、相変わらず熱中症予防情報を流していますが、木洩れ日の光は、やわらかさを感じさせます。
汗は、いっぱい流れてきますが。
サクサクと、走りつづける。
すると無性に種田山頭火が思い浮かんできました。
だんだんと、気分はレースから旅気分に。
山ごえ、垰ごえの旅。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/08/P1040232-1024x768.jpg)
さわやかです。気持ちいいこと、このうえなし。
漂泊の俳人
種田山頭火は、明治15年に、山口の大地主の長男として生まれます。
しかし、やがて家は没落。
おおきな造り酒屋も破綻させ、家をすて、家族をすて、放蕩の旅人になってゆきます。
そんな中で、自由句をかきつづけ、59歳でポックリと脳卒中でいったひとです。
やくざれ人生の中で、季語や五七五にこだわらない自由律は、こだわるものを捨ててきた、あるいは逃げてきた生き方に重なるのかもしれません。
しようもない人生。
でも、どこかで惹かれるのはなぜでしょうか。
自分も、そうなのかもしれない。
いくつかの句は、おなじみかもしれません。
・分け入つても分入つても青い山
・どうしやうもないわたしが歩いてゐる
・捨てきれない荷物のおもさまへうしろ
・うしろすがたのしぐれてゆくか
・うつむいて石ころばかり
・ころりと寝ころべば空
・青葉の奥へなほ小径があつて墓
・あるけばかつこういそげばかつこう
・ひとり山越えてまた山
・いつでも死ねる草が咲いたり実つたり
・うれしいこともかなしいことも草しげる
・すべつてころんで山がひつそり
・つかれた脚へとんぼとまつた
・どうしようもない私が歩いている
どれも、森の中を走る心境に付き添ってくれます。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/08/P1040241-1024x768.jpg)
後半は、すっかり静けさの中の行脚となってゆきました。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/08/P1040244-1024x768.jpg)
前後に、誰もみえない空間、も増えてきました。
ゴールの先の現実世界
あわい緑色の世界。
セミと風のよぎる音しかない世界は、こんなボクでも、ココロが洗われてゆきます。
おお、こうなるんだったら、白装束で参加すべきだったでしょうか。
首から、ホラ貝をぶら下げて、ブオーと鳴らしてみたい。
山伏ですか。
あるいは、頭に懐中電灯をツノのように縛りつけてみるとか。
八つ墓村ですか。
すっかり、妄想の世界に、入りこんでしまっています。
ペースは、ゆっくり自分ペース。
やがて、前方下の方から、スピーカーの声が聞こえはじめてきました。
ゴールまで、もう少し。
そして、ゴールライン。
完走証には、「30kmの部」と書かれています。
でも、ウデのGPS時計は、27キロを過ぎたところです。
いえ、コースはズルしていません。
実際の山なり、道なりの距離と、頭上から計測する理論値の誤差でしょうか。
ま、そういうアバウトな感じも、楽しい大会です。
ゴールでもどった世界では、朝とれた新鮮な地元レタスをいただく。
かき氷も、いただく。
暑い日の、小さな旅、すてきなレースでした。
一応、30kmの部。
3時間53分37秒。
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ゴールラインが目の前に。遅いから、人出の波も去っています。
最後になってしまいしたが、ふだんは人通りのなさそうな今回のコース。
じつは、倒木や一部で生い茂った草たちで、野生化していたそうです。
それを、地元の方が、コツコツと整備してくださったあとのレース開催でした。
本当に、感謝いたします。
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妄想と 空想ふくらむ 森の小径
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