猫のお告げは樹の下で(青山美智子著、宝島社)

おみくじを信じますか?

 

神社にもうでると、オミクジがあります。
お告げの内容はさまざまですが、書き出しは比較的共通です。
「大吉」「中吉」「吉」「凶」とか。

本書にでてくる神社は、都会から少しはなれた、ちいさな町の、ちいさな通りから入ったところに、ひっそりとあります。
境内には、大きなタラヨウの木があり、その下には赤いベンチがおいてあります。

ここにたたずんでいると、運がいいと、オシリに星のマークがある「ミクジ」とよばれるに出会えます。
ミクジは、一枚のタラヨウの葉を運んできます。
タラヨウの葉は、じょうぶで、小枝などでひっかくと線がそのまま残るため、実際に手紙にも使えます。

ミクジのもってきたタラヨウの葉には、ある文字が描かれています。
この文字は、なぜか、ミクジに出会い、ミクジからもらった人にしか見えません。
写メで残そうとしても、うつりません。
50年もくらすこの神社の宮司さんも、会ったことがないし、読んだことがないくらいです。

そして、タラヨウの葉にかかれた文字は、読んだその人の人生を少しずつ変えてゆきます。


 

ポイント

 

第3話は、うまくゆかない就活中の学生がでてきます。
自分で何をしたいかもわからないまま、職種も選ばず、何社にもエントリーしても、ことごとく門前払いがつづきます。
失意の毎日。

そんなある日、アルバイト先のCDショップで知り合った、アニキとよぶ25歳のフリーターのアパートに誘われます。
約束の時間より少しはやく着いたので、ぶらりと足を運んだのが、この神社でした。

そこでミクジと出会い「ポイント」とかかれたタラヨウの葉をもらいます。

アニキのアパートでは、古いギターを借り、はじめて楽器を手にします。
アニキは、アマチュアのロックバンドを組んでいたのです。
一方、日常に進展はなく、就職のメドはたちません。

そんなある日、アニキからプロデビューを目ざしてアルバイトをやめることを告げられます。
借りたギターを返さなくては。
必死に4つのコードを覚え、「線路はつづくよどこまでも」を身につけます。

でも、たやすくはない。
指は痛むし、つっかえて和音をうまく弾き語れません。
「まだ全然、はなむけになりませんでした」
アニキの前でギターをつまびきながら、おもわず涙がほほを伝わります。

するとアニキも鼻声で答えます。
「まだダメって思えるなら、絶対大丈夫だ。
まだダメと、もうダメは、ぜんぜん違うんだぞ。
まだってことは、これからがあるんだ」

するとアニキは、持ち出した自作のカードに、★を5つもつける。
ありがとう、って「感謝」したいときにつけているんだという。
このポイントがいっぱいになると、すっげえ喜びが湧くんだ、と。
あ、ポイント

まだ貸してくれたギターを、指の痛さを感じながらつづけてゆくことで、つづける努力の楽しさ、深さを感じてきました。
そうか、オレはこの気持ちを伝えたい、こういう仕事をしてみたい。
感謝のポイント

やがて、はじめて自分の「コトバ」をもって、楽器店の就活にいどんでゆきます。


 

ミクジには、どこで会えますか?

 

残念ながら、わたしの近くに、ミクジの住むという神社はありません。
タラヨウの木もありません。

あってほしいけど、ない
よくあることです。

どうしましょう。
あきらめる?

もったいないです。
ないなら、不器用でも、自分でつくってみる。

タラヨウの葉がないなら、ツバキの葉でも、キャベツの切れ端でもいい。
葉に文字がかけないのなら、心の中で念じるだけでもいい。

実際にミクジのくれるタラヨウの葉の文字は、ほかの誰にもみえないのだから。

文字がアタマの中に、浮かび上がってくれること。
それが一番、大切なこと。
ひとつの「コトバ」があり、それを念じることで、人生はしばしば新しくつむがれてゆきます。


 

ポカポカ

 

冬の朝ランは、意外と敷居が高い。
ふみ出す一歩に、大きな決心が必要。

なにしろ、さむい
フトンから出るのに、決心と気合がいる。
家の外は、氷点下。

くわえて、くらい
くらい中で、ジタバタしたくない。
くらいなら、寝ていればいいでしょ。

そういうとき、おまじないを念じてみる。
ポカポカ」「ポカポカ」「ポカポカ

アタマの中に、少しづつ陽の光が射しこんでくる。
カラダが、少しづつあたたまった感じになる。
おーし、一瞬のスキをついて、フトンから出ると、ジャージにウインドブレーカーをはおる。

うーー。
実際はさすような気温の中で、でも歩きだし、走りにかわってゆくとポカポカが始まる。
ふみこむ霜柱のサクサクという音が、小気味いい。
一周してくれば、すっかり汗ばんで「あー、走ってよかった」

また、カラダの痛いところを念じてとなえてもいい。
「ポカポカ」

コトバが、行動を変えてゆく。
コトバが、カラダを変えてゆく。


 

お手本

 

どんなコトバが、どんな風に生き方をかえてゆくのか。
お手本が、本書「猫のお告げは樹の下で」では、7人の人生で語られています。

「ニシムキ」
「チケット」
「ポイント」
「タネマキ」
「マンナカ」
「スペース」
「タマタマ」

特別変わっているわけではないコトバ。
決してうまくはいってなかった毎日。
ところが、ミクジからもらったタラヨウの葉に描かれたコトバに出会い、ナンダと反感をもったり、逆じゃないかと腹をたてたりしながら、でも少しずつ生活が動きだしてゆく。
じんわりと、心あたたまる作品集です。

コトバの力は、ときに無限大です。
場合によっては、食べものや、最新ギアや、サプリより力になってくる。

マラソンレースの後半。
くじけそうになったとき。

どんなコトバをもっていましたか。
どんなコトバがでてきますか。

「イケる、イケるって」

いろんなことのあった1年、そしてこれからの1年。
変えてゆくのは、自分のココロの中にもつ「コトバ」かもしれません。

いいコトバを、もちたいですね。

そして、これからの寒い季節、晴走雨読もいいかも。

たーさん
コトバのチカラが 走るチカラへ

 
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