思うようにはゆかない
この世の中、うまくゆかないことに、こと欠きません。
捨て鉢になっているわけではありませんが。
ランニングについては、どうでしょうか。
記録がのびない。
ココが、アソコが痛い。
走る気力が、わいてこない。
レースが、次々と中止になってしまう。
ことは、ランニングだけではありません。
仕事がうまくゆかない。
私生活も、不規則になっちゃって。
友だちがいない。
生活費を、どうしていったらいいだろう。
うまくゆかないことをあげていったら、キリがなくなりそう。
どうしたらいいん?
そうだ、本を読もう。
そんなんで、いいんですか。
たまには、だまされてみる。
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横山保美登場
通称、保美。
って、たんに名前を略しただけです。」
じつに「うまくゆかない」日々をおくっています。
過体重。
いじめられっ子キャラ。
ところが、ある日、からかいを笑いでかえしたら、反応がちがいました。
だんだんと、ツッコミのかえしのツボがみえてくる。
すると、遠まきにしていた子が、話しかけてくるようになる。
そうか、笑いには、世界をかえる力があるんだ。
単純すぎます。
でも、若さとは、そこがいいところ。
そして高卒と同時に、静岡から東京のお笑い学校へと、とびこんでゆく。
しかし、現実は、そんなに甘いもんじゃありません。
多少太って、金髪にそめた女性芸人なんて、めずらしくもありません。
美人キャラのりん子と「魚ニソン」というコンビを組むが、いっこうに芽はでない。
すでに10年。
そんなおり、事務所の先輩の梶井が「P1グランプリ」を受賞。
苦労人の芸人でした。
その先輩から、電話がはいる。
これまで、友人のお父さんのヘルパーをしていたが、売れだして無理になった。
あとがまを、ひき受けてもらえないか。
75歳と若さはあるが、足腰が弱く、アルツハーマーがはいっている。
1月20万円の報酬があるで。
バイトをクビになったばかりの保美にとっては、渡りに船。
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賢造さん、登場
息子と2人くらしの賢造さん。
今日から、保美が面倒をみるジイさんだ。
けっこう立派なお屋敷にすんでいる。
このひとを、息子の仕事にあわせて、原則週末以外をみる。
朝から、息子の帰宅まで。
賢造さん、たしかに物覚えは、まったくよくない。
安美の名前は、いくら教えても、口からでてこない。
かと思うと、ときどき、はっとするツッコミを差しこんでくる。
いや、ツッコミなんて上等なものじゃない。
ボケの合い間にでる、意表をつくコトバだけ。
でもそれが、妙にハマることがある。
ある日、小さなもよおしに急遽、出番がまわってくる。
賢造さんへのピンチヒッターを、だれにお願いしようか。
いいや、息子には、こっそりだまって連れだしちゃえばいいや。
転倒が危険だからと、外出はきつく禁止されていましたが。
車イスにのせた賢造を、漫才会場までつれ出す。
会場のひとも、気をきかせて、ステージ前に車イスを入れてくれる。
そこで、リン子とのいつものかけあい。
なかなか、リン子の反応がにぶくて、盛り上がりにかける。
美人なんだけど、真剣さがイマイチ感じられない相方。
その話に、とつぜん、賢造が入りこんでくる。
ええっ?
しかし、なぜか、今までにない受けで、会場が大盛り上がり。
保美の中にも、電撃が走る。
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イケル、イケル
ここは、大バクチかも。
台本は無理だが、賢造さんとのコントは、十分に成りたつのではないか。
アドリブで、のり切ればいい。
売れないといっても、この世界で10年やってきた保美のヒラメキ。
「魚ニソン」解散。
このコンビでは、お互いが次にすすめない。
安美は、「スミレ」という名で、賢造さんとコンビを結成。
もちろん、息子やリン子の大反対とか、山は高かったが。
とはいえ、出番なんて、そうそうこない。
ところが、少しずつ、お客さんの反応がかわってきたのを肌で感じはじめる。
このリアクションを、感じたかったんだ。
マイナー番組への出演から、名前が、少しずつ浸透をはじめる。
さすが、映像の力。
といっても、要介護老人とのコンビです。
次々と仕事をこなし、というわけではありません。
充実した2年間。
しかし、不安に思ってきたことが、徐々に現実に。
賢造さん、いよいよ、本格的にわからなくなってきたみたい。
ふたたび、大決心の時期。
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ありがとう
コンビの解散。
賢造さんは、家での対応がむつかしくなり、施設にゆく方向へ。
桜のさく時期。
予告した最終公演。
思いもかけないひとが、かけつけてきてくれる。
メッセージも届く。
なんて幸せなときをすごせたのだろう。
でも、どうして、こんなにもうまくゆけたのだろう。
台本をなくして、その場の自然な流れにのってゆく。
力まない。
そして、最後は、笑いにかえる。
笑いが苦しくなって、自暴自棄になっていたときもある。
でも、これでわかった。
これからも、笑いを一生続けたい。
だって、笑うことで、幸せになれるんだ。
笑うことは、簡単。
理屈はいらない。
簡単だけど、身がまえていては笑えない。
ギューギューに生きていると、案外、むつかしいかもしれない。
ハハハハハ。
声をあげて、笑ったのはいつですか。
そいうえば、いい走りも、笑ったときと同じ感覚で感じませんか。
苦しさと感じるか、笑えるか。
読後感、サイコーの本です。
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