昔の名前で出ています

名曲

 

京都にいるときゃ
忍(しのぶ)と呼ばれたの
神戸じゃ
渚(なぎさ)と名乗ったの

ご存知でしょうか。
小林旭さんの名曲『昔の名前で出ています』の出だし。
作詞は、星野哲郎さん。

ショバをかえたら、源氏名もかえる。
それが、町をながれてゆくものの習性でしょうか。
気持ちも、かわりそうですし。
あるいは、フンギリをつけるための覚悟でしょうか。

でも、呼び名はかわっても、忍は忍さん。
性格まで、かわるものではありません。

それでも、流れついた場所で、雰囲気がかわることがあるかもしれません。
つとめたお店で、かわることもあるかもしれません。
いろんな時代があった。
そうして、ひとの歴史がつくられてゆく。

 



 

自己紹介

 

「私」は、むかしは名前はありませんでした。
でも、あるときから、こう呼ばれるようになりました。
忍じゃありません。
仔呂菜」です。

そう、ウイルスの仲間です。
ヒトの粘膜が、職場です。
そこに入って、しばしお仕事して、くらす。
そして、小銭をためたら、出ていって次に流れてゆく。

その中で、少しずつ姿をかえてゆく。
忍が渚になったようにね。
でも、忍は忍なんです。

ふつうは、ヒトに何もしません。
気づかれない、ということ。
気づかれないまま、そこで働き、またショバをかえる。
そうして、長い年月をすごしてきました。

ときに、敏感に「私」を察知するヒトもいます。
免疫くんが、「あれ?」って、気づく。
そして、熱をあげる。
すると、入りこんだハナ、ノド、気管の症状がでることがあります。
ハナ水、ノド痛、セキ。

そのときは、すぐに追いだされます。
あるいは、やっつけられちゃうこともあります。
この間の関係を、人間界では「カゼ」とよんでいるようです。

「私」たちは、つねに大集団でいます。
なので、いっぺんにたくさんのヒトがカゼ症状がでることがあります。
そのときは、「流行性感冒」ともいわれます。

ずうっと、そうやって生きてきました。

 



 

悪いお店

 

ある仲間が、悪いお店で、ボッタクリをしていると聞きました。
なんでも、コウモリの粘膜をショバにしたみたい。
くわしくは、遠くの国の話なんで、わかりません。
その時の源氏名が「孤美兎」と名乗ったらしいです。

悪どく、ずいぶんとかせいで、羽振りを広げたようです。

でも、悪事って、長くは続けられないもんなんですね。
ボッタくれば、やがてお店にお客さんは寄らなくなります。
なにしろ、お客さんが倒れちゃうもんだから、営業もできなくなります。
どうやら、「孤美兎」のお店は、つぶれたようです。
「孤美兎」も、いなくなりました。

たまには、そんなヤツもできる。
世の中、善人だけじゃありませんね。

 



 

改心

 

仲間が、とんだ悪さをして、すいませんでした。
反省しています。

それにしても、ずいぶんとたたかれました。
身からでたサビですから、仕方がありませんが。

「私」たちの身もとが、次々にわれてゆきました。
あの、PCRっていう身元調査法ができたんですね。

いまも次々と調べられていて。
そんなに悪どいこと、しなくなっているのにね。
全員、取り調べって。

くわえて、悪さをした仲間をやっつけるために、人間側も「兵器」を開発したというじゃありませんか。
人間のなかに、ICBMではなくて、なんかスゴイのを注入しておくようですね。
体内で、自爆しなければ、いいですけれど。

まだ実験段階だと聞きましたが。
「私」たちの成分と、その兵器が炸裂すると、なんだか信じられないような爆発もあるようですね。
開発途中だから、仕方がありませんか。

世界平和は、遠のくばかりです。

「私」たちも、反省しているんです。
でも、その声は、届いてくれません。
なにしろ、声が出せないものですから。

せつないです。
「昔」のあやまちでも、許してもらえない。
ひとりの「悪さ」が、その仲間すべての否定になってゆく。

そういう世の中が、つらいですね。
とっても、疲れました。

そりゃ、みんなが善人なら、いいでしょうが、そんな理想論ばかりでありませんでしょ。
それは、人間の世界だって、同じじゃないんでしょうか。
えらそうなこといいって、すいません。

 



 

いろんな考え

 

『飛脚走り』というブログを借りて、「私」たちの声を代弁してもらおう。
してもらいました。
でも、なかなかうまくゆきませんね。
どうも、世間さまにたいして、信用もなさそうなブログだったようで。

でも、もっと「私」たちを理解してくださる方もいらっしゃいます。
たとえば、フランク・ライアンさん。
こんど、福岡伸一先生の監修のもと、ステキな本が翻訳されました。
ウイルスと共生する世界』です。
人間と「私」たちとの関係を、的確に表現なさってくださっています。

 
こういう理性がまだある、というのが救いです。
監修者の福岡伸一先生のお言葉。
「ウイルスは私たち生命の一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。
私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共存し共生していくしかない」
名著です。

 

そして、カゼだって、悪いばかりじゃない。
自分を見直すのに、大切な機会じゃないか。

そうおっしゃってくださった、野口整体のカリスマ先生野口晴哉先生も、素晴らしい本をかかれています。
風邪の効用
感染症のカナメは免疫力。
そういわれながら、免疫力をおとしめる方法に走る人間の方もすくなくないようです。
熱を敵視したり、強引に下げることに執着したり。
免疫力イコール熱なんですが。

「私」たちの声とともに、自分のカラダからの声も、聴いてみてくださいね。
どんなことを、いっているでしょうか。

今回、イヤな気分をもたれてしまわれたら、すいません。
でも、「私」たちウイルスと人間は、太古から共存する間がらです。
それは、未来永劫、変わることもないでしょう。
いがみあってばかりじゃ、さみしいです。

ふつうの、付き合いにもどれませんか。
昔の名前は、もう忘れましたか。
新しい名前ばかり、勝手につけないで。

「私」たちは、いまは昔の名前で出ています。

「強いものは、生き残れない。
生き残るために必要なことは、変化に適応できること」

なお、今回は筆者の「妄想」による創作(フィクション)です。
現実社会とは、いっさいの関係はございません
その点、誤解なきよう、せつにお願いいたします。

 



 

たーさん
覚えてましたか おなじみの 忍です

 

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