考えちがい
ウルトラマラソンは、観光マラソンに分類されます。
とくに、あたたかい季節。
景勝地。
(個人的見解、少数意見かな)
12月の沖縄は、小春日和な乾季。
なにもかもが、キラキラと輝いています。
さすがの台風もいません。
こんななかで、1日中、走りを楽しめるのです。
しかも、エイドの熱烈サポート付き。
思いきり、はじけたくなるってもんじゃ、ありませんか。
ということで、今回は『琉球おばぁ』スタイルでの参戦。
構想1年。
そう、前回大会後に、さる琉球衣装店で手にいれたキモノ。
あやしいオッサンが、おそるおそるのキモノ店侵入。
マラソンで着たい、というと、お店のオバちゃんも「うりひゃー」と大乗り気。
あれがいい、これがいい、と紹介されたなかからの一品。
色鮮やかな、黄色が基調。
という流れで入手となったハデハデ衣装での登場とあいなりました。
ついに、表舞台に立つ瞬間。
スタート会場では、浮いていました。
ところが、です。
走りはじめて、気がついたことがあります。
このキモノ、けっこうタケが長くて、足首まできています。
はじめて走ってみたのですが、足にからみつきます。
風がふこうものなら、なおさら。
なるほど、他のランナーが短パン、という気持ちがわかりました。
もう、手遅れですけど。
走りにくいのが、玉にキズって感じのスタートです。
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漆黒のなかで、スタートを待つワラジばきのおばぁ。完全に緊張感を欠いています。
真っ暗闇のスタート
午前5時。
総勢663名のランナーが一斉にスタート。
あきらかに、昨年より増えています。
ここの日の出は、午前7時10分頃とのことで、まだ真っ暗。
足もとを、ハンデライトで照らしながら、走りだします。
スタート時は暗いので、衣装が映えない(泣)
カラダが温まってきたころ、不意にステキな女性ランナーから声をかけられます。
「ライトがつかなくて、こまってるの。
うしろから、金魚のフンみたいに、ついていっていいですか」
お嬢さん、人選あやまってます。
あるいは、人生経験足りなすぎです。
このわたくしをペースメーカーにして、大丈夫ですか。
逆の立場だったら、こんな怪しいヒトに声はかけません。
スムースに走っているランナーなら、いっぱいいるじゃないですか。
それとも、暗闇で目立つからいいのかな。
「かまわないけど、遅いですよ」
「いえ、ちょうどいいペースです」
それから、なんと夜明けのライトがいらなくなるまで、キチンと着いてくださいました。
もう、ライトがなくても大丈夫みたいですね。
そういって、健闘を祈って、お互いのペースにもどってゆきました。
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知念岬にかかると、空が急に輝きはじめました。
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知念岬から仰ぎ見るニライカナイ橋。85キロを走った帰りは、あそこをくだって降りてきます。
ちびっ子の大活躍
前半は、ずっと海岸線沿いを走ります。
見えなくても、潮の香りが濃いです。
やがて15キロ地点の知念岬をまわると、空の色が劇的にひかりはじめます。
そうです、前半部のハイライトが、この夜明けの海岸通り。
やがて顔を出した太陽の光は、ココロを清めてくれる一瞬です。
そして続く百名ビーチは、美しすぎ。
うーん、まさに観光。
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ココロ洗われる日の出。思わず、手を合わせたくなります。
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日の出をバックに。何とも、釣り合いがとれてません。海からあわわれた入道か?
そして27キロを超えると、海に突き出した奥武島へ入って、1周します。
この島のエイドは、ちびっ子たちが大歓待。
「うわあ、おばぁだけど、おじぃだあ」
「キモーい、ゲラゲラ」
子どもは正直です。
しばし歓談。
たのしい時がながれます。
ゆったりすすむウルトラマラソンならではの、エイドシーンです。
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にぎわっていた奥武島のエイド。ちびっ子の声が響いています。
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沖縄ソバに、もずくスープ。おいしいよ。
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へんなおばぁ。そんなこと云わないでさあ。子どもは正直です。
奥武島からもどったところで、さきほどの金魚のフンさんに遭遇。
「脚がつっちゃって」
「芍薬甘草湯をもってますから、のんでみますか?」
「はい」
「もう少しで、おおきなエイドです。
力をもらえますよ」
手持ちの漢方薬を手渡して、無事をいのります。
完走、できたかな。
太陽サンサン
ゆるやかな、のぼりくだりをくり返してゆきます。
あいま、あいまに開けるオーシャンビュー。
この一帯は、次々と美らビーチがつづきます。
海ガメも、御用達の海岸だそうです。
そして、『あ、ここいいな』と思わせる場所には、オシャレな海カフェ。
ここでコーヒーを飲みながら、ボオッとするのもいいなあ。
やはり、観光スポットめぐりです。
と、ノー天気なばかりでもありません。
太陽がグングンと昇るにつれ、日かげもなく、ジリジリとやけてきます。
歩道をふさぐまでに実ったサトウキビ。
くわえて平和祈念公園を中心とした、鎮魂の地へとはいってゆきます。
たいへんな戦いのあった場所でもあります。
ひめゆりの塔も近く。
マラソン。
なんて平和な行為なんでしょうか。
こういうのが、つづけられるよう、努めてゆかねばなりませんね。
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日差しが強くなってきました。白い家々も輝いています。
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ゆるやかな、のぼり道。その向こうには、海が待っています。
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強い日差しで、植生も勢いがあります。もう、まぶしい。
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空から、海から、キラキラ。
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平和創造の森のトンネル。現在は、隣の海岸は、サーフィンのメッカになっています。
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キホン、日差しをさえぎるものはありません。
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平らなようで、アップダウンのつづく海岸通り。
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ランの途中で出会った、島おばぁ。のつもりになって、1枚。
中間点は、夏、夏、夏
松林のすき間から、輝く海をながめて走ってゆくと、中間点の糸満市役所前広場に近づきます。
むかう途中、『パーン』という音と歓声が聞こえてきました。
午前11時、50キロコースの部がスタートしたようです。
昨年は、その光景を見られたのに、今回は間にあいません。
やはり、キモノは走りにくい。
そういえば、オリンピックでも、キモノ姿で走っているランナーは見たことないなあ。
中間点50キロを、6時間3分34秒で通過。
ここ50キロ地点の大エイドでは、高校生が大活躍。
着くやいなや、ダーッと、ボクのドロップバックをもって駆け寄ってくださる。
「がんばってください」
「ありがと。
そのダッシュ力が欲しいなあ」
ふう、はじめて腰をおろして、ワラジのはきかえ。
第1回目大会では、一足のワラジで走りつづけて、90キロくらいで空中分解。
それ以降、中間点ではきかえています。
今回は、ワラジのすり減り方が尋常じゃありません。
ヘタリ様も、ちがう。
やはり、キモノで歩幅もより短くなりましたが、走り方自体も変わっています。
脚の疲れさえも、いつもとちがいます。
これが、後半戦に影を落としてゆきました。
見上げれば、太陽は頭上にきています。
高校生に聞いてみました。
「今日は、いつもより暑くないですか」
「まだまだ、これからですよ」
午後になるにつれ、暑さは本番になるという。
いやあ、聞かなきゃ、よかった。
ニヤリ、と笑う高校生。
「ガンバ!」
さあ、気合を入れなおして、ゆくぞお。
新しいワラジで気分一新、日差しの中に飛びこんでゆきました。
(後半戦につづく)
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もうすぐ、中間点、50キロになろうとするところ。
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中間点の糸満市役所をバックに。暑さで、アタマに変調をきたしはじめているおばぁ。
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高齢化 走ればニッポン まだまだよ
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