ツインズ
長いんです、名称が。
正式名称「上信国境ダムtoダム ハイランドラン」です。
主催者のもくろみは、どこにあるんでしょうか。
ちゃんとした姿を伝えるためですか。
たしかに、上州と信州の国境をこえた2つのダムの間を走ります。
標高が高いから、ハイランドです。
それとも、単に、ランニング界の寿限無を目ざしているんですか。
できれば、ひと息でいいきれる名称を希望します。
たとえば、「ツインズダムラン」とか。
そうすると、いろんな意見が出るかもしれません。
2つのダム路をつなぐだけなら、どこだってできるよ。
ところが、わたくしは意味もなく「ツインズ」とはいいません。
ゴール地点の長野県南相木村の「南相木ダム」。
スタート地点の群馬県上野村の「上野ダム」。
名前のつけ方は、なんとも直球すぎますけど。
じつは、この両ダムは、地下を水路で結ばれているんです。
信濃川水系南相木川にもうけられた南相木ダムは「上池」。
利根川水系神流川にもうけられた上野ダムは「下池」。
両者には、653メートルの落差(標高差)があります。
ここに、巨大な地下水路をつくる。
そして上池から下池へと、水を流す。
水路のほぼ中間点の地下500メートルに水力発電所ができています。
すでに稼働していますが、すべてが完全に稼働をはじめると最大出力282万kwという日本最大級の水力発電施設になるのだとか。
ですから、単に距離が近い関係、じゃないんですね。
そんな素敵な関係の間を走るんです。
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上野村の上野ダム、おっきいです。
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ダムの上は、悠々な広さと長さで、ダッシュの練習もできそうです。
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水をたくわえていますが、4日前の大雨で、にごっていました。
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下を見ると、クラクラしますが、虹もかかってきれいです。
第一回大会
初回です。
ここに、大会の意気込みや趣旨があらわれてきます。
まずは開会のセレモニー。
ごあいさつは、地元上野村の村長さん。
つづきまして、ゴール地点の南相木村の村長さん。
両村あげてのバックアップと知ります。
そうしているうちに午前10時。
スタートの時間となってきました。
秒読みからはじまり、いざスタート、の号砲がでない。
どうやら空砲のようでした、さすが第一回。
うーん、と思っていたら、やおらバーン。
ランナーの列が動きはじめました。
わたくしは、相変わらずの最後尾です。
とはいえ、総勢は180名ほどといいますから、こじんまりとした集団です。
すぐにスタートラインを超えました。
ここから、約23キロの道のり。
累積標高1,057m。
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さあさあ、いよいよ出発をまつ状況となりました。
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いよいよスタート、晴天です。
まずはライトから
ランナーの多くは、スタート前から、ライトを装着しています。
スタートして、最初に出迎えるのが、トンネル連合だからです。
通行量は決して多くはないトンネル。
なので、照明設備はあったり、なかったり。
あっても、申し訳程度の灯りです。
発電所のお膝元であっても、質素です。
ということで、ライトは必須と書かれていました。
そもそも、歩く人を想定されているのでしょうか。
長いトンネル、短いトンネルと、4本をくぐり抜けました。
すると、渓流沿いに出てゆきます。
水流は、4日前の豪雨をのこして、にごっています。
そうです、レース4日前に、モーレツな雨にみまわれたそうです。
そのため、コースの一部も崩落。
緊急突貫工事のおかげで、とりあえずの通行は確保していただいたそうです。
主催者側の、涙ぐましい努力のあとを、走らせていただいています。
うれしいです。
この熱意に応える走りをみせよう。
というココロザシとは裏腹に、ペースはあがりません。
コースのほとんどが、のぼりですから。
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いきなりのトンネルに突入、というところから始まります、待ってくれえ。
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このトンネルは、明るいトンネル、ほかに暗いトンネルも。
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トンネルを出ると、次のトンネルへ、というのが4つ続きます。
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さあ、山道のはじまり、まだ緑が濃いです。
一歩一歩
きりたった道を、右に左にまわりながら、のぼり続けます。
両側の斜面の角度が、きわだっています。
なので、大小の岩が、道路上にもゴロゴロ落ちています。
すごいところに、道をつくったものです。
しかも、そんなコース上に、3カ所もエイドを設けていただいています。
最初のエイドは、4,5キロ地点。
ペットボトルの水だけですが、その気持ちがうれしいです。
しかも、地元上野村の水じゃありませんか。
この先、道がふたつわかれます。
まっすぐに進むと「御巣鷹の尾根」へと書かれています。
レースは、そこに入らず、右に折れてのぼりはじめます。
つづら折れの道の連続。
やがて、北面に視界がひらけてきました。
見下ろすと、遠くに、スタート地点の上野ダムの姿が。
クネクネと、ここまできたのだな。
のぼりは苦しいけれど、ときどき高度をたしかめる。
その変化は、充実感も、たのしめます。
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なにやら意味深な「中止の滝」の案内図、これは見にゆかねば。
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中止の滝、レースは中止しません。
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コース上のエイド。
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提供されるのは、地元の上野村の源流水でした、沢水でもよかね?
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そうか、ここから、あの現場へと続くのですね。
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こんなところに、立派な道をつくられて。
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ただただ、緑の中をゆく爽快感。
ツメあと
左に切りたった斜面と、水量の多い沢の音。
右におおきくカーブする道路。
そこが、パカっと割れていました。
道の半分が、完全に崩落しています。
ガードレールだけが、宙に浮いて、つながっています。
ここ、ヤバいよね。
4日前の大雨のツメあとのようです。
残された部分だけで、とりあえずの通行路の確保。
そのための突貫工事。
そう聞いています。
にしても、足もとが、スッパリと切りとられています。
わたくし、高所恐怖症。
とくに切りたった斜面というシュツエーションに弱い。
なのに、つい、のぞきこんでしまう怖いもの見たさ。
ここ、ホントに大丈夫なの?
下からの支えを失って、ズリっと落ちないか。
恐る恐る通過して、再スタート。
のぼり道を、歩いたり、歩いたり。
ときおりあえらわれるくだりは、その挽回に、一気にかけおりる。
というような体力もなく、ゆるりとくだる。
少しずつ、前にすすみます。
(つづく)
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こりゃあ、大規模な崩落現場ですよ。
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こわい、だけど見たい、でもこわい。
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下へ崩れるだけじゃなく、上から攻撃されるところも。
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上州と信州を境する山なみが、だんだんと近づいてきました。
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御巣鷹の 山に向かいて 走りだす
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