ミッションは関門
もともと、計算は苦手です。
ソロバンを学んだことはありますが、7級で終わりました。
2ケタのたし算、ひき算レベルです。
履歴書に特技としてのせるには、気がひけます。
ところが、ボクにとって、関門計算は必修科目です。
関門の計算なくして、通過なし。
というのも、ウルトラマラソンには、関門が欠かせません。
レース運営上も、仕方のないことです。
そして、この関門のもうけ方で、レースの特徴がわかれます。
たとえば、100キロを14時間制限のレースを例にとってみます。
これだと、キロ8分ちょっとを走りつづけられれば、時間内ゴールが可能です。
途中関門を、この8分ちょいで均等に分けるレースがあります。
前半をきびしくして、最初にふるいにかけようとするレースもあります(富士五湖など)。
北オホーツク100kmマラソンは、後半にちょいと注意が必要です。
沿道の声援、感謝いたします。夏の雪ダルマみたい。
北オホーツクの計算事情
いえね、走るのがはやいランナーには、まったくエンのない話です。
北オホーツクでは、中間点50キロを7時間で切ります。
まったくの均等割です。
だからといって、ここを7時間できたら、後半キビシイのは当然です。
前半と、後半を、同じペースでゆけるわけないじゃありませんか。
そして、以後10キロごとに、関門を設けています。
50から60までの10キロは、1時間半もらえます。
最初は、あまい設定(キロ9分です)。
ところが、60から70キロまでの10キロは、いきなり1時間5分です。
あっと驚くタメゴロー(ふるくてスミません)。
突如として、キロ6分半のペース要求です。
70から80キロまでの10キロは、1時間15分。
キロ7分半。
ここも、きつめな要求です。
80をすぎると、1時間40分、1時間30分と伸びてくれます。
つまり、「均等割」じゃない、という点です。
ですので、キモは、80キロ地点です。
ボクの前に、誰もいない、誰もいない、誰もいない。だからって、1位じゃありませんよ(笑)。
60、70は、自分で関門設定
60キロ地点を、関門時間ギリギリ通過となると、次はかなり絶望的です。
なぜなら、いきなりキロ2分半のペースアップが必要だからです。
60キロを走って、そんなシフトチェンジできますか。
60キロ地点を、甘くみるんじゃねーよ、ということです。
同様に、70キロ地点ギリギリもきつい。
ですので、北オホーツクの場合は、80キロ地点に標準をあわせて、60、70は自己修正が必要です。
つまり、60キロ地点は、関門時間まで40分の余裕はほしい。
70キロ地点は、20分の余裕はほしい。
でないと、後半のモーレツなスピードアップがない場合、80キロには届かない。
うーん、底辺者の発想ですねえ。
多分に、脱水症と熱中症っぽくなりつつあるアタマとカラダをかかえて、そこだけは押さえつつ、ヨロヨロとすすみます。
太陽が、暑い、先が見通せない。そして北海道は広い。
80キロ関門は、ドラマだ
80キロ関門は、もうすぐ。
いえ、関門は見えません。
のぼり、くだりの丘陵地帯。
カーブも加わり、両側の木立のなかで、先が見わたせないないのです。
関門の存在は、大声でアドバイスをくださる沿道の方の情報です。
「あと500で関門だあ」
「走りつづけろお、もう時間がないぞお」
大声が、木々にこだまします。
ありがたい、本当にありがたい。
力の入らないカラダを引きずって、ようやく関門の時計が目に入ってきました。
「はやく、はやく」
声が、引きよせてくれます。
もう無我夢中で、時計脇を走りぬけます。
あと、1分。
いやはや、いやはや。
ぼくのあとに、あと2人のランナーが、雪崩れ込んできました。
お互いにガッツであげる歓声。
「関門閉鎖です」
そう宣言されたほんの数秒後に、大きな足音。
しかし、時間は非常です。
そのランナー、歩道の上で大の字になって倒れると、そのままです。
大きな叫び声がひびく。
ひと気のない山道に、人生劇場が展開しています。
すみません、努力の跡を撮らせていただいちゃいました。最後のツッコミ、感動しました。
80キロ先にみたもの
80キロ関門で、ゆったりできる余裕はありません。
はやばやとスタートして訪れた、次のエイド。
うわあ、オニギリ。
タワラ状に、キレイに並べられた銀シャリ。
このレースで、初めて見たお米。
歓声で手を出そうとしたら「塩をかけますか?」
たっぷりと塩をふりかけてもらった塩むすびのおいしさ。
口の中に広がる甘しょっぱさ。
オナカにしみ入ります。
「ああ、おいしい」
顔が自然にほころんできます。
おいしさに我を忘れて、写真もとり忘れてしまいました。
気分的には、100個でも食べたい。
そのくらい、たくさん並んでいます。
えっ、って思いませんか。
このエイド、あと通過するランナーは、数人です。
そう、もう、ボクはもう、ほとんど最後尾ランナー。
そろそろ撤収の準備に入るわけです。
大量の在庫です。
おいしそう、でもここまで引っ張られると、さすがにオナカも疲れています。
こうなる前に、余裕をもっていただきたかった。
ぼくも、おいしかったけれど、1個しか食べられませんでした。
ポパイでしたら、ホウレンソウを食べると、人が変わったように変身。
ところが、こちらは単なる中高年ヨレヨレランナー。
目的のお米を食べられたからといって、いきなりシャキーンとはなりません。
それでも、小さな元気はいただけました。
さあ、残りは、ハーフを切ってきました。
(つづく)
残り物でも、福がある。食べ残しでも、おいしい。もう、あとは来ないしイッパイいただいちゃいます。
関門は 自分の時間を 作ってね
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