痛みよ、飛んでゆけ

痛いもの

 

小さいとき、こんな呪文を聞きませんでしたか?
痛いの、痛いの、飛んでゆけ

すると、なんとなく痛みが飛んでいってくれたような。
のどかな、そんな時代もありました。
いきなり、ロキソニンの出番じゃありません。

ところで、「痛み」って、何者なんでしょうか。
痛み自体は、とてもメジャーな存在です。

小さいころから、みんな、ちゃんと知っています。
痛い思いをすれば、「痛い」って反応します。

しかも、どなたも経験者です。
今まで、痛みの経験をもったことはないよ。
そんな方は、まず、いらっしゃらないでしょう。

そのなかでも、ランナーは、痛みの経験が多いかもしれません。
走る、というフツーの方があまりしないことをする関係上。

学問的には、一応の定義もあります。
組織の損傷による、不快な感覚や感情
なんて、ちょっと味も情緒も感じにくい表現ですが。

これによると、スタートは「組織の損傷」です。

具体的には、どんなのがあるでしょうか。
捻挫。
すり傷。
筋肉痛。
やけど。
日やけ。
骨折。

いろいろあれど、いちおう「組織の損傷」がありそうです。

恋の病。
これでも、ハートが痛みますが、この場合は「組織」には損傷はなさそうです。
いちおう、今回ははぶかせていただきます。

とんと、ご縁もありませんし。

 



 

痛みの原因

 

では、痛みの原因は、何でしょうか。
非常に、あっさりと表現したいと思います。

痛みの原因は、「痛み物質」によるということです。
痛み物質ができると、痛くなる。
非常に、即物的な表現となります。

ゼンゼン、学術的ではありません。
学術的ではないわたくしの、限界です。

痛み物質は、大きく2つにわかれます。

損傷部位から、直接に出てくる、「痛み物質」そのもの。
そして、その痛み物質を察知して、感度をあげようとする「感度増強物質」。
ふつうは、この2つをあわせて、広義の「痛み物質」とします。

痛みとは、「組織の損傷」ではじまる。
損傷部位では、「痛み物質」が産生される。

とりあえず、ここからスタートしたいと思います。

 



 

なぜ、痛ませるのか

 

カラダは、おもしろい反応機序をもっていますね。

痛み物質を、内在している。
イザとなると、その物質で、痛み感覚をおこさせる。

痛みというのは、不快なものです。
ま、ほとんど場合ね。
ですから、痛みの定義にも「不快」と表現されるわけです。

なぜ、カラダは、そんな不快な反応を、おこさせるんでしょうか。

たぶん、大切な目的があるのでしょう。
それが、「安静指示」です。

痛みを感じたとき、ふつうは、痛くない工夫を考えます。
だって、痛みは、不快ですから。

一番、普遍的でもある、痛くない工夫。
それは「安静」です。
静かに、する。
無理を、しない。
その方が、痛みが少なくなる気がするからです。
そして、実際に、痛みはだいたい減ります。

これは、理にかなった行動です。
痛い場所は、たぶん、カラダの損傷がおこっているわけですから。
損傷の修復に大切なものは、「安静」です。

カラダのしくみって、本当に、よくできていますね。
神さまの設計図には、ぬかりはありません。

 



 

痛みの変化

 

痛みは、ふつう、変化してゆきます。
痛みが、だんだんと消えてゆく。
そう、痛いの痛いの、飛んでゆけ、となってゆく場合。

もうひとつは、反対に、痛みが増えてゆく。

この2通りしかありません。
ずっと同じに固定されている。
こういうことは、ありません。
あったら、それは「ふつうの痛みの機序」ではない、ということです。
ちがう要因が、からんでいるよ、とみるべきです。

なぜでしょうか。
それは、「痛み物質」が、組織の損傷に応じて出てくるからです。

一般には、損傷が大きいと、いっぱい出る。
損傷が小さければ、少ししか出ない。

そして、損傷部位は、刻々と変化してゆく存在です。

なので、つねに一定の痛み物質放出は、ありえないからです。

 



 

変化の原因

 

なぜ、変化を、しつづけるのでしょうか。
それは、生き物の宿命、ともいえることです。

わたしたちのカラダは、つねに、分子レベルで、入れかわっています。
古いものが去り、新しい物質におきかわる。

はやい部分では、数日で、すっかり入れかわってしまいます。
たとえば、腸上皮など。
おそい部分でも、数ヶ月から年余で、すっかり入れかわります。
だから、カラダは、常温でも腐ってゆかないのですね。

それが、生きているアカシです。

損傷部位も、例外ではありません。
ただ、特徴があります。

一般に、入れかわりのピッチが最速に優先される、ということです。
24時間、休みなしの、集中入れかえに入ります。

もちろん、入れかえ中であっても、痛み物質は放出されつづけています。
そして、入れかえが完了したあかつきには。
そう、新しい組織になっています。
同時に、痛み物質の放出は、止まります。

すると、痛くない。

痛いのは、どこにいっちゃったのでしょうか。
それこそ、飛んでいってくれたのでしょうか。
ハッキリしていることは、もう大丈夫だということ。

典型的な痛みの変化は、以上のようです。
ところが、すべてがこうなるわけではありません。

痛みの世界は、広い、そして深い。
すこし、深みに入ってみましょうか。
(つづく)

 



 

たーさん
飛んでゆく 痛みだけなら 苦労なし

 

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