なつかしき貨物列車
家のちかくの田んぼの中を、1本の線路が通っています。
むかしは、そこを、長い長い貨物列車が走っていました。
上野駅と、金沢駅をむすんだ信越本線。
北陸新幹線が通るまでは、たくさんの列車がみられました。
昼間は特急列車、夜には夜行列車。
物質の流通の主役が、まだトラックに移行する前の時代です。
(いまは寸断されて、ひとつのローカル線です)。
貨物列車を引っぱるのは、電気機関車。
ときには、2つが連結していたような記憶もあります。
それが、何十両もの貨物列車を引っぱる。
50両じゃきかないことも、しばしば。
おお、今度の貨物列車は長い。
気がつくと、遊びの手をやすめて、列車の数をかぞえる。
ガタン、ガタン。
貨物列車のかなでる音は、ことのほか多彩です。
格好よかったなあ。
連結器
貨車は、一両一両が、連結器でつながれています。
50両の列車でしたら、連結器がつなげる数は、49こ。
ゆるやかなカーブにさしかかっても、列車自体は曲がれません。
連結器でおれ曲がりつつ、ゆるやかな弧をえがく。
近くから見上げると、一両ごとに連結器が方向をかえてゆく。
ガシャ。
ガシャ。
その力強さに、ますます興奮したものです。
もちろん、客車だって、連結器でつながれています。
電気機関車に引かれる客車の連結器部分は、なかなか迫力がありました。
すきまから、下の線路の石が見える。
風も、吹きこんでくる。
いまの電車は、連結器部分の密閉性が高まっていて、そういう緊張感を感じることもなくなりました。
新幹線にもなると、まるで全体がひとつの「つつ」のようです。
でも、やはり連結器でつながれているのですね。
ひとも列車だ
人体には、200個ほどの骨があるといわれています。
いわれている。
そう、自分で数えたことはありません。
ずいぶんと、手をぬいた表現で、すみません。
で、この人骨。
かなり、ジョーブです。
そうそう簡単には、グニャリ、とは曲がりません。
骨を骨でたたくと、コツコツと音がする。
だから、骨(コツ)というのだ。
ムカシ、解剖の講師が、冷えたジョークをいっていました。
この200個の骨。
じつは、すべてが、つながっています。
孤高の骨、一匹狼の骨、はありません、原則ですが。
つながっている。
何によって、つながっているのでしょうか。
そうです、連結器です。
人間の場合、「関節」とか、言い方は少しちがいますが。
長い、長い、列車
人体は、「200個の骨」が連結器でつながれた列車。
聞いたことはありませんか?
ないかもしれません。
わたしの、たわごとです(スミマセん)。
でも、人体は、つながれている。
こういう発想は、昔からありました。
洋の東西をとわずに、ありました。
東洋系では、「経絡思想」が、ひとつの代表です。
西洋系では、トーマス・メイヤー先生の『アナトミー・トレイン』が有名です。
すてきな本がでていて、いまは第三版です。
たいへんに勉強になります。
はい、今回の当ブログの題名は、この『アナトミー・トレイン』を拝借、改変させていただいています。
アナトミー・トレインは、人体を列車に見立てる、というすばらしい発想です。
ここでの主役は、筋肉と腱のつながりです。
筋肉に、まず着目。
それも、筋肉のつながりに着目。
まこと、西洋的な発想、といえるのかもしれません。
ギリシャ時代からの伝統。
ここでは、骨から
西洋的発想が、筋肉からはじまるなら、東洋では、骨だ。
そういう対抗意識をもっているわけではありません。
昔みた、力強い、貨物列車のつながり。
そのイメージを育てたわたくしに見えるのは、人体も骨のつながった列車のイメージなんです。
人体は、200個の骨が連結された生きもの。
その動きは、連結器から。
もちろん、走るときも例外ではありません。
走るなら、主役は、足の骨だろ。
下半身の骨の活躍だろ。
たしかにそうですが、列車は、すべてがつながっています。
先頭だけが、動いてゆくわけではありません。
貨物列車が動きだしとき、まずは汽笛がなり響きます。
そして、ゆっくりと先頭の電気機関車がすべり出す。
すると次々と連結器に力が伝わり、ガシャガシャと貨物列車がうごき始める。
最後に、車掌さんの乗る車両まで。
人間だって、同じこと。
足の、あるいは、下半身の骨だけで、走るわけではありません。
手の指の動きやかたちまでも一緒になっての、動作です。
だって、すべてがつながっているわけですから。
この全体の動きがスムースになれば、筋力に「全依存」しなくても走れるはず。
このとき、連結器に無理な力がかかれば、関節を痛めてしまう。
連結器に無理な力をくわえていれば、筋肉も痛めてしまう。
どのように、人体の列車を動かしてゆくか。
ボーン・トレイン。
目指すは、筋肉に負担の少ない走り方。
あらあら、筋力の「手ヌキ」ということです。
骨と骨 つながりようは 列車なり
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