上を向いて
永六輔さん作詞、坂本九さん歌唱の名曲。
『上を向いて歩こう』
世の中は、ますますコンメイさを深めています。
舗装された道も、ビミョーな凹凸がつくられています。
足もとに気をつけてゆかないと、あぶないよ。
ちょっとした油断や不注意で、足をとられかねません。
足もとのワラジが、バラバラ化してきました。
1歩1歩を、できるだけバラさないようにすすむ。
なんて考えていると、どうしても視線は足もとにいってしまいます。
でも、こんなときだからこそ、上を向くのを忘れたくない。
足もとしか見ないのだったら、どこを走っても同じですし。
せっかく、信州まで来ているんだから。
しかも、新しいコースです。
まったく見ず知らずの、まっさらなコース上にいます。
見上げれば、空は黒い雲におおわれています。
だからといって、景色がすべて隠されているわけでもありません。
こんなときこそ、上を向こう。
何を心配しているんだ、カラダが動かなくなっているわけじゃないんだし。
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こういうときこそ、上をむいて歩こう、いや走りたい。
決心
上を向いて、息をすう。
これで、マヨイがふっ切れました。
バラけたワラジに、ふり回されなくってもいいじゃないか。
もう、サッパリしよう。
両足のワラジをぬぎました。
問題は、シューズにつけるタイプの計測チップです。
ハダシだと、あしにつきません。
次の救護所でハサミを貸してもらって、ワラジのヒモだけちょん切ろう。
そのヒモを足くびにまいて、計測チップをつければいいや。
それまでは、手にもってゆこう。
ぬいだワラジをフトコロに押しこんで、気分一新の再スタート。
ちょうど32キロ地点。
あと10キロだ。
大ジョーブ、いける、いけるって。
ところが、思わぬ松本事情があらわれてきました。
アスファルトが、穴ボコ状。
ガリガリ状ともいいます。
劣化というより、冬のスリップ対策なのかもしれません。
この上は、ハダシで走ろうとすると痛い。
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32キロまでつきあってくれたワラジちゃん、ありがとう。
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こういう路面が、いがいとアンヨに突き刺さります。
足ウラのクンレン
足ウラは、きたえられるものでしょうか。
わたくしの場合は、「無理」といわせていただきます。
足のウラと、手のヒラは、同じような感触です。
柔らかいから、感覚が生きる。
柔らかいから、クッション性がだせる。
ですから、きたえるという発想自体が、本来の目的を失わせてしまうことでもありますし。
ところが、ボコボコ、ザラザラのアスファルト面は、そういう性質をまったく考慮されていません。
つまり、ハダシで走る、という前提はゼロ。
わたしには、とても走れません、痛くて。
ぬき足さし足で、歩くのよりもおそくすすむ。
コースわきが草地とか、芝生のようなところがあります。
そういうところでは、ニヤリ、アスファルト面からぬけ出します。
残念ながら、そういう土の面が、なかなか見つからないことです。
土とアスファルト。
ぜんぜん違う性質です。
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広い、広い公園にわけ入ってきました。
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こういうコースは、ありがたいです。土がある。
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草むらの上を走るぶんには、快適ソノモノです。
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信州らしい応援、ありがとうございます、といえる余裕。
翼よ
ジェット機の離発着の音が、耳に入るようになりました。
信州松本空港が近づいてきている証拠です。
コースは、後半戦。
中型ジェット機が、おりたってきたようです。
おおきな翼をひろげています。
グンマーにいると、海も見られませんが、空港もありません。
飛行機も、じつにめずらしい。
見られるのは、晴れた日の飛行機雲くらいですから。
そういえば『翼をください』という名曲があったなあ。
わたしの願いがかなうなら、翼がほしい。
うーん、いまの心境にピッタリです。
空を飛んですすみたい。
いやいや。
ハダシになって、ハキモノの心配はなくなりました。
もうあとは、信州の初コースをたのしむだけです。
アスファルトをよけて、つまりコースからはずれる。
土の路面をさがしての道。
パラパラと、沿道には、声援をくださる方が立っています。
ときには、そういう方のうしろ側をいったり。
スピードがでないぶん、もう余裕です。
そういう沿道の方と、立ち話もしたり。
そう、ウルトラマラソンよりも、ゆっくり。
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ジェット機を間近にみて、ルンルン気分。
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風の中の応援に、感謝の連続です。
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サクサク、サクサク、こういうところも気持ちがいい。
さむい、あたたかい
雨つぶが、ポツリ、ポツリ。
やがて、ポツポツ。
ふつう雨が落ちはじめると、風はやんでゆくものです。
ところが、風はいっこうにやむ気配をみせません。
雨の威力。
風の威力。
すばらしい、天からのおもてなしです。
うん、こういうところを走って、人間、強くなれるんです。
ゴールラインが、見えてきました。
最後の数百メートルは、路面のギザギザがなくなりました。
しかも、雨をすって、ツルツル。
ハダシが、気持ちいい。
ということで、ニコニコゴール。
タイムは、5時間21分33秒。
うーん、立派です。
次につなげられる(苦笑)。
というのも、後半戦32キロ以降は、ほとんど走れていません。
なので、疲労感さえも、出てこない。
ゴールをこえて、いよいよ雨脚は強まってきました。
空気も、雨も、冷たくなっています。
そのなかで、にこにこと誘導されているスタッフさん。
カッパもかぶらずに。
ありがとう。
風邪をひかないでね。
寒くはなりましたが、あたたかいヒトのココロに触れて、ホッコリした大会となりました。
次回は、ゴム底のワラーチの方がいいかな。
こりずに、工夫をつづけてゆきます。
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いよいよゴールが視界に入ってきました。
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最後の路面は、雨も混じってツルツルとしていて、気持ちよかったです。
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うーん、記録はともかくね、ゴールできました。この体験、次にいかします。
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雨脚が強まってきましたが、巨大ドームの中で、着替えることができました。
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