新装開店
漆黒の空間。
見あげれば、満天の星空。
関東地方が梅雨に入って3日目、ここ岩手の空に雨の気配はありません。
ああ、銀河だ。
岩手といえば、宮沢賢治。
賢治といえば、銀河鉄道の夜。
アカ抜けない連想ですが、この深い闇は、宇宙に想いをはせてしまう力をもっています。
その中にあって、大地から宇宙に光をはなつ一点があります。
その光を目ざして、次々に、ひとが吸いこまれてゆきます。
北上総合運動場陸上競技場。
本日のウルトラマラソン会場、そしてスタート・ゴール地点。
2年ぶりの大会開催です。
これまでは、北上を出ると、北へ北へと向かい、なめとこ街道の峠をのり超えて、雫石までむかう一直線コースでした。
ところが、途中の山道の大規模崩落により、昨年度の大会は中止。
今年になっても、コースは開通できず、大会開催が危惧されていました。
それを大会開催者のご尽力により、新コースをつくっていただいての本日。
今回は、南へ時計回りにぐるっと周回する新コース100キロ。
みなが、同様に初のコースです。
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陸上競技場内は、準備するランナーの熱気ムンムン
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/06/P1030876-1024x768.jpg)
今回も、ワラジにたくします
夜明け前、夜明け後
東の空が刻々と茜色にそまり、みるみる光をあつめる午前4時。
スタートの号砲が響きました。
それにしても、寒い。
地元に方にうかがうと、先日までは30℃超えの暑い日だったのに、とのこと。
まずはトラックを1周すると、広大な運動公園内へと出てゆきます。
そこで太陽が顔を出してきました。
神々しいご来光。
さあ、これから南に進路をとり、金ケ崎町、奥州市へと向かいます。
向かいます。
進みます。
ところが、あまり進んだ感がありません。
景色が、単調なためなのか。
島崎藤村の『夜明け前』の冒頭表現をお借りすると、
コース前半部は、「岩手路は、すべて畑の中である」
コース後半部は、「岩手路は、すべて山の中である。一筋の街道は、この深い森林地帯を貫いていた」
(個人的感想)。
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明るくなった東の空をながめつつ、いよいよスタート
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/06/P1030880-1024x768.jpg)
すぐに、まぶしい日差しにつつまれてゆきます。ばらけるのも早い
見通し良好
見通しがいい、といっても、コースの見通しのことです。
ワタクシの走りの見通しは、それこそ、先が読めません。
コースが平坦。
岩手の内陸って、こんなに平らだったの?
まっすぐに伸びるコース。
どーんと、先を走るランナーまで、よく視界に入ってきます。
初コースということで、1番の関心は、コースの高低差です。
距離は100キロと決まっているので、気になりません。
大会名簿にのっていたコースMAPを参照。
それによると、35キロ地点からのぼり始めて、55キロ地点でほぼ最高地点。
あとは、多少のデコボコはあっても、くだってゴール。
朝日を受けながら、平地を楽なペースで走りぬけます。
エイドでは、ほぼ立ち止まって、オシャベリを楽しみます。
35キロ地点エイドでの、オバちゃんの最後のコトバ。
「さあ、これから山のぼりよ、ウフフフフ」
たしかに「フ」が4つもつながって、オバちゃん、うれしそう。
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岩手のおいしい銀シャリとお水でたいた、シャリ玉。うまい!
コースMAP通りだ。
これから、20キロつづくのぼりの始まりだ。
気を引きしめて、一歩一歩、標高をかせごう。
でも、ちょっとちがう。
しばらくゆくと、のぼりが消えます。
消えるどころか、くだり始めます。
そのあとは、ほぼ平ら、集落も現れてきます。
ええっ?
ここが最大の難所か?
思わず笑みがこぼれます。
ムフフフフ。
いかん、さっきのオバちゃんの笑いが伝染している。
しかし、内心思いました。
ラッキー、新コース、超ゆるい。
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坂道だって、緑の中
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長くはつづかないのぼり坂、ムフフフフ
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キホン、たいら、たいた、たいら。そしていい天気
暑い日差し
コースが西向きになってきたようです。
日差しが、正面から、左手に強くなってきました。
朝は寒かったのに、一転、夏の陽気です。
暑い。
エイドでは、大バケツに水が満たされ、ヒシャクが投げこまれています。
頭からどうぞ、のかぶり水コーナー。
今回は、どこも水道から水をひいている様子。
とにかく、冷たい。
血気盛んなランナーは、そんなこと気にもせず、頭から冷水をザブー。
おーし、と気合を入れてゆきます。
わたしのような年寄りに、そんなマネはできません。
手をヒシャクの水で洗い、残りで、口周りをそそぐ。
神社のお参りか。
迫力が、ありません。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/06/P1030891-1024x768.jpg)
水をかけるジイちゃんたち、うれしそう。お墓まいりみたい
はるか前方に、残雪をいただく山脈が近づいてきました。
屏風のように、立ちはだかっています。
なんて名前なんだろう。
畑のわきで応援してくださっていた農家風の4人にうかがってみました。
「あの雪の残っている山は、なんですか?」
「ありゃあ、奥羽山脈だ」
「じゃあ、そこを超えると山形ですか?」
「いやあ、アギダだあ」
いろいろと教えてもらいながら、先へと進みます。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/06/P1030894-1024x768.jpg)
あとは、奥羽山脈にむかって走るのみ
皮算用で、レストステーション
ウルトラマラソンでは、途中に自分の荷物をおいておける場所が提供されます。
今回の新コースでは、それが60キロ地点に設けられました。
これは、心理的にもありがたいことです。
エイドの中で、唯一、腰を下ろしてホッとするレストステーション。
わたしは、水でぬらしたタオルを入れておきます。
顔やウデ、日に焼けたところをふいてサッパリ。
そして、後半戦へと突入してゆきます。
このとき、あとは、もうフルマラソン1本だ、というのは気合の入り方がちがいます。
ちょうどの中間点50キロだと、まだ50キロある、という心理的圧迫感。
けっこう、ちがいます。
そんなレストステーションを目指します。
すると、奥羽山脈の手前に、おおきなダムがみえてきました。
いや、本当におおきい。
後で調べたら、肝沢ダムといって、北上水系の中でも特別におおきいらしい。
堤高が132メートルだといいます。
しかも壁面が一面のコンクリート造りではありません。
石を積み上げた文様。
ちょっと異様な雰囲気。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2019/06/P1030899-1024x768.jpg)
肝沢ダムが間近になり、レストステーションもすぐ
そのダムの高さが際だってきたころ、はなやかな応援隊に遭遇。
写真とっていいですか?
「え、写真とってくれるの?やだあ、また有名になっちゃう」
残念です、このブログにのせるだけですから、世間に広まることはありません(泣)。
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おちゃめな美女軍団。さあ中間点だ
さあ、レストステーションのある広場に到着。
思った以上に、余裕じゃないか。
もしかして、岩手銀河、初の12時間台がだせるかもしれない。
ムフフフフ。
(後半戦につづく)
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2018/11/76f3e759415ad1690bfae003ac05144c-e1542443258483.jpg)
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