ふたつの呼吸法のちがい
腹式呼吸は、オナカをふくらませて息をすい、オナカをへこませて息をはく呼吸法です。
わたしたちが無意識におこなっている、ふつうの呼吸です。
腹出し呼吸は、オナカをふくらませて息をすい、オナカをふくらませたまま息をはく呼吸法です。
息をはくときは、意識をむけていないと、最初はできないかもしれない呼吸法です。
共通するのは、どちらも横隔膜を主体につかう呼吸法で、呼吸の効率がたかいものです。
ちがいは、息をはくときの腹壁の緊張です。
自然にへこむか、緊張をたもったままはり出すか。
小さなことですが、これがカラダには小さくはない変化をうみ出してくる気がします。
その理由を考えてみます。
寝ての呼吸は、腹式呼吸
寝っころがっての、ふつうの呼吸。
意識しなければ、みな腹式呼吸になっています。
オナカのフクラミとヘコミをともなう呼吸です。
寝っころがって、腹出し呼吸。
つまり、息をはくときもオナカをひろげる。
これは、ちょっと無理があります。
いかにも不自然です。
ふつうに呼吸をします。
それで十分です。
立つと、ちょっと感覚が変わっってくる
立って、ふつうに呼吸をしてみます。
このときも、意識しなければ、腹式呼吸です。
オナカに着目してみれば、すってふくらみ、はいてへこむ。
で、ここで少し意識を加えてみましょう。
すってオナカをふくらませ、そのオナカのふくらみを保つ要領で息をはいてみる。
これは意識しなければ、できませんし、続きません。
でも、寝ころがっているときよりは、容易になってきているかもしれません。
なぜ、だと思いますか?
それは、立つとオナカに緊張が加わるからですね。
だって、オナカに緊張がかかっていなければ、立っていられないからです。
立つを支えるシクミ
ひとが2本足で立てるのは、なぜでしょうか?
ドー体がシャキッと柱のように立つからです。
では、ドー体は、どんな構造になっているでしょうか?
簡単にいうと、中心の「骨組み」と、それをかこむ「筋肉群」です。
中心に、かたくで頑丈な骨。
それを支える筋肉という補強材。
えっ、骨は中心にあるの?
背中じゃないの?
背骨っていうくらいですからね。
いえ、背中でさわれる骨は、突起であって、骨の芯ではありません。
その内側にある丸い椎体が、骨の芯になります。
もっとカラダの中心よりに入っています。
椎体がダルマ崩しのように積みかさなって、ドー体の中心をつくります。
椎体の構造を支えるものが、ぐるっとまわる筋肉群です。
筋肉群は、椎体に「直接」つながる筋群が主体をしめますが、椎体から「離れた」腹筋群もくわわって支える役目をはたします。
木の柱と、人間のドー体のちがいは、動くか動かないか、にあります。
木の柱は、動きません、どっしり。
ドー体の柱は、前方を中心に、かたむけるアソビをつくっています。
そうでなければ、動けませんから。
アソビを生む主役が、オナカの筋群です。
オナカの緊張を忘れた現代人
わたしたちが、立つこと。
さらに、立って活動すること。
このときのカラダを支える重要部署が「腹筋群」です。
腹筋群がいい緊張を保てるから、わたしたちは2本足で立って、活動ができるんです。
じつは、すわる姿勢だって、同様です。
身体活動というのは、オナカの緊張がシャキッとすることで、できるものです。
腹力があっての、2本足。
腹力あっての活動。
そこで、江戸のひとは、腹力を「キモ」といって大事にしました。
キモがすわる、ことが一人前のあかし。
ところが、身体活動をへらすほうこうにすすむ現代社会では、キモ、つまりオナカの緊張が着目されることなどへる一方です。
結果、ドー体をシャキッと保てない。
保てなくなったドー体は、前方にずれはじめてゆきます。
ずれてきたよ、とカラダは声をあげてきます。
具体的には「痛いよ」という声です。
これを、腰痛といいます。
椎体を中心としたドー体のヒズミ。
走りも活動
ランニングは、立っておこないます、ふつうは。
そして走りは、立っているときよりも、活動性があがっています。
高い活動性を要する行為のひとつです。
ならば、オナカの緊張は、しっかり保ちたい。
そうしなければ、カラダを保っておくわけにはゆかない。
そうしなければ、活動は続かない。
いわんやランニング。
それでは、オナカの緊張を高める方法は、具体的にはどうしたらよいでしょうか。
腹筋運動ですか。
体幹トレーニングですか。
いわゆる、筋トレ。
ところで、走っている最中に、オナカが「すって緊張」「はいて脱力」だったらどうなんでしょうか?
腹式呼吸です。
効率は、どうなんでしょうか。
ドー体の安定性は、どうなんでしょうか。
活動中は、オナカの緊張は維持できた方が安定感がましませんか。
そのひとつの方策としての、腹出し呼吸です。
オナカに緊張を保つ方策のひとつです。
そしてこれには、筋トレいりません(笑)。
オナカに意識をむけるだけです。
それだけで、ドー体に緊張のスイッチが入るんですね。
走る場面だけではありません。
オナカの緊張が保てるようになると、腰痛も引きはじめます。
長時間のデスクワーク時は、腰にきます。
ときどき腹出し呼吸法を意識すると、楽になります。
ドー体に、スイッチが入るんですね。
走りのときだけじゃないんです、しつこいですが。
活動時、ときには意識したい呼吸法だと思いませんか。
もう少し、考えてゆきます。
立てば腹圧 眠れば 腹式
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