腹式呼吸
肺でおこなう呼吸は、文字通り、はいて、すって。
わたしたちの地球上での生命活動は、「はく」ことからはじまります。
オンぎゃー。
そう、うぶ声です。
そしてやがて、「すった」息をはき出せなくなって、最後をむかえます。
無
息を「引きとる」。
このはいて、すっての呼吸方法は、生物の進化過程におうじて少しずつ変化してゆきました。
口にためた空気を肺に送りこむ(咽頭呼吸)→胸腔をひろげてすいこむ(胸式呼吸)→横隔膜をひろげてすいこむ(腹式呼吸)。
つまり、立った姿勢でみると、呼吸運動の主役は、上から下へと移ってきました。
上から下へゆくにつれ、「大きな筋肉」で、「余裕」をもった呼吸ができるようになりました。
横隔膜を主に活用する動きは、オナカの動きと直結しています。
そのため、横隔膜呼吸を、「腹式呼吸」とよんでいます。
腹式呼吸は、オナカをひろげて息をすい、オナカをすぼめて息をはく、と説明されます。
オナカの出し入れ。
かつぐ呼吸、のせる呼吸
飛脚棒を肩にかついで、走ってみたときの呼吸。
あるいは、肩に天秤棒をかついで、前後に荷物をつるして歩くときの呼吸。
あるいは、アタマにちょっと大きな荷をのせて歩くときの呼吸。
飛脚棒をかついで走るのは、ごぞんじ飛脚です。
天秤棒をかついで荷を運ぶ姿は、江戸時代の定番の光景。
行商の人、そば屋さん、魚屋さん、八百屋さん、金魚売り、甘酒屋さん。
アタマに荷をのせて運ぶものは、カメとか、食べ物とか。
今でも、東南アジアでは、天秤棒かつぎは現役の運び手です。
アフリカでは、大きな荷をアタマにのせて女性が優雅に歩いています。
どれでもけっこうです。
可能なら、ぜひチャレンジしていただきたい行為です。
最初は、ぎこちないかもしれません。
でも、続けてみればなれてきます。
なれると、不思議と気持ちよくなってきます。
なれたところで、その感覚の変化に着目していただきたいのです。
わたしは、偶然に気がつきました。
オナカの感覚が変わってきている。
具体的には、腹圧がかかっている。
そして、腹式呼吸とは、ちょっとちがってきている。
腹圧の呼吸とは
カンタンにいうと、オナカが「プーとふくらむ」感覚です。
お腹が緊張している。
そういう緊張呼吸。
息をすうときは、オナカがプーとふくれている。
息をはくときも、オナカがプーとふくれている。
ふつうの腹式呼吸は、息をはくときは、オナカをへこませます。
ところが、かついだり、のせたりしていると、息をはくときもオナカはへこまない。
へこむと、調子がおかしくなる。
ここが、ふつうの腹式呼吸とちがうところです。
つねにオナカに緊張がかかっている感じの呼吸。
つねにオナカをふくらました感じの呼吸。
カッコよくいっちゃうと、つねに肺とオナカがダイレクトに結びついた感覚です。
苦しいとき、呼吸が楽に感じられるようになります、多分。
慢性呼吸不全で在宅酸素療法中の方にも、ウケます。
呼吸が楽に感じられたら、歌を口ずさんでください。
「あの、素晴らしい肺をもう一度 ♫ 」
はい、北山修さん、勝手に歌詞を変えちゃってごめんなさい。
ふるい話で、通じませんか。
すうとき、オナカをふくらませている。
はくときも、オナカをふくらませつづけている。
常時、腹圧がかかっているので、腹式呼吸に対して、「腹圧呼吸」といっていいんでしょうか。
ただ、これだとちょっとインパクト弱そうなので、わたしは「腹出し呼吸」と名付けてみました。
はい、センス悪くて、すみません。
腹を出す感覚のまま、息をすい、はく。
はくときも、腹を出す。
へこませない。
オナカの中は、つねに腹圧で充満しているイメージです。
妊婦さん風の、オナカ。
腹出し呼吸の、走り感覚
オナカをつねにプーとはり出す要領で、かるく走ってみてください。
すうときも、オナカを出す。
はくときも、オナカを出す。
肩に飛脚棒はかついでも、かつがなくても結構です。
そんなに厳密さは求めていません。
いつもとちがう走りの感覚が味わえるでしょうか。
わたしは、新感覚を味わえました。
何がちがってきたでしょうか。
ひとつは、背すじがのびる感じです。
オナカが前に出ますから、上体はまっすぐ上むきになります。
よくいわれる、走るときは前傾姿勢、はとりにくくなります。
気持ちのよさは、いかがですか?
もうひとつは、オシリから前にすすむ感じです。
オナカが出ると、その下のオシリのホッペあたりが前進の駆動力になってきます。
オシリから、前に出る感覚です。
つき出したオナカが引っぱられる感じ、といってもいいかもしれません。
そのかわりに、アシは前に出しにくくなります。
アシはオシリの動きについてくる感じ。
支える役目。
縁の下の力持ちならぬ、オシリの下の支柱。
あまりイロイロならべると、感覚が散漫になってしまいます。
まず、この「姿勢感覚」と「前進感覚」の変化が味わえる。
オナカの感覚が、走りをかえる
どっちがいい、という話ではありません。
くれぐれも、誤解なさらないでください。
いろんなものを試してみる。
感覚のちがいに目をむけてみる。
決めてゆくのは、ご「自身」です。
わたしは、飛脚棒をかついで走ってみて、ホントは草かきをしょって走ってみて、そんな感覚を覚えたのです。
「シャボン玉」をふくときのような呼吸感覚で、走りが楽になっていったように感じています。
ああ、もしかしたら、飛脚はこの感覚をうむために飛脚棒をかついでいたのかもしれない。
そうとまで思うようになっています。
大胆な、仮説です。
そして、いつも通り、支持者はおりません(苦笑)。
でも、そんな妄想をもってみていると、アフリカ系のトップランナーたちも、けっこうハラ出して走っていませんか?
とくに女性ランナーたち。
やっぱり、妄想でしょうか。
腹出し呼吸、というのは、ちょっとお下品なイメージのためか、まだぜんぜん知られていません。
一方で、腹圧呼吸というのは、いくつかの分野ではもう使われているようです。
基本、同じようなこと、としておきます。
お腹につねにプーと圧力がかかる呼吸です。
すうときも、はくときも。
実は、とってもなインパクトを秘めているんです。
以下、次号の予定。
あら不思議 腹出し呼吸が 変えてゆく
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