忘れられたもの
記憶は、消えてゆく運命にあります。
時間と逆行していますから。
時間がすすむほど、記憶との距離が離れてゆく。
マラソンのトップランナーと、しんがりの関係みたいなものでしょうか。
やがて最後尾から関門で収容され、レースから消えてゆく。
いえ、そういう不吉な話題ではありません。
使わないモノも、記憶と同じ運命にあります。
これが、今回の主題。
使わなければ、少しずつ朽ちてゆく。
あるいは、捨てられてゆく。
記憶だけでなく、モノだって同じ運命にあります。
人体の中にも、そういった運命にある臓器が指摘されています。
たとえば、モーチョー(虫垂)。
たとえば、足のユビ。
モーチョーは不要か
モーチョーみたいなヤツ。
かつて、こんな比喩もありました。
いなくても、かまわないやつ。
医学的にも認められていなかったのか、ひと昔前までは、モーチョー切除術は大繁盛でした。
オナカの右下が痛い。
そうか、モーチョーが悪いのだろう。
早速、切っておこう。
だって、なくても、かまわないじゃん。
若手外科医の最初の手術がモーチョー切除術、という時代が長くありました。
しかし、時代はかわりました。
モーチョーは、大切な免疫臓器。
いまや免疫の中枢が、腸管にやどっていることが、わかっています。
だって、いちばんイロンなモノが、入ってくる場所ですし。
ここがビンカンでなくては、生きてはゆけない。
ここがビンカンでなくては、何でも食えるか。
じつは、モーチョー様さまだったのです。
ごめん、冷たくして。
あなたは、えらかった。
大切にするからね。
足のユビは不要か
よくみたら、足のユビって、モーチョーに似ていませんか。
それも、10本もあります。
本家モーチョーは、1本ですけど。
不要なモノが、こんなに集まってしまって。
どうしようもない野球チームをたばねる監督さんのため息のようです。
やれやれ。
君らも、モーチョーと同じ存在か。
そういった扱いされていませんでしたか。
それでは、やはり大事なものじゃないのか。
簡単にチョン切ったり、なくしてもかまわない存在ではないのです。
といっても、まだ、一人ひとりが大事にされているとは、言いがたい現実があります。
たとえば、くつ下。
たとえば、シューズ。
右の足の指5本は、つねに共同生活。
左の足の指5本も、共同生活。
個性が大切にされている、わけではありません。
たとえば、手のユビは、1本1本が大切に扱われています。
一人ひとり、名前もついています。
親指、人差し指、中指、薬指、小指。
足には、そんな名前はついていません。
せいぜいが、1番から5番まで、番号で区別されている現状。
囚人か、捕虜扱いか。
張力の切り札
待った、とここで、声を大にしていいたいんです。
足のユビ、忘れないでね。
カラダには、バランスのとれた張力が必要。
こんな話を、のべさせていただきました。
張力が、人間のカラダを支える主要な力。
張力が、人間の動きをうむ主要な力。
張力の低下が、姿勢をくずし、動きを止める。
本当ですか?
ならば、ここで一度、張力を思いっきり感じてみましょう。
その切り札が、じつは「足のユビ」なんじゃないかと。
まず、ハダシか、靴下になっていただきます。
そして、ツマ先立ちしてください。
できますか?
そして、そのまま歩いてみましょう。
どのくらい、歩いてみましょうか。
最初は、10メートルくらいでいいでしょうか。
部屋が狭かったら、回るなり、Uターンするなりの工夫を添えて。
カラダの感覚が、ぐっと変わりませんか?
ツマ先歩きで、カラダがかわる
弓は、そのハシとハシを弦でハリをつくって、使われます。
弓の真ん中に、弦をはっても、仕方ありません。
ツマ先は、弓でいうところの、弦をはる場所だったんですね。
張力の勘所。
(わたくしの、勝手な説)
ですから、カラダにピンと張力をはってくらしていた時代。
そのころは、足のユビは大活躍していたんじゃないでしょうか。
また、そうしなければ、ピンとなれない。
たとえば、です。
腰が、ことあるごとに、しんしんと痛みを訴えている。
ひざが、ふんばると痛い。
呼吸が浅くなっているような気がする。
どうも、さいきん猫背気味になっている。
そう感じたら、ツマ先で立ってみます。
姿勢が、ちょっと変化しませんでしょうか。
カラダの感覚が、ちょっと変化しませんか。
そのまま、すこしツマ先歩きをしてみる。
いえ、たぶん、きびしいかも。
だって、カラダがゆるんでいたから起こっている症状だったかもしれませんから。
それは、アシ指くんの存在を忘れていたから。
カラダを、ツマ先でささえるのって、いがいと大変です。
おお、今まで存在を忘れていてゴメン。
足のユビくんたちは、カラダのハリをうむカナメだったのですね。
しかも、ツマ先立ちになると、10本のユビのどれもが貴重だとわかる。
10本が協力しないと、うまく立てないし歩けない。
そういえば、ゲタやゾウリは、アシ指くんたちの刺激を生んでいました。
しゃがみ仕事は、そのまま、ツマ先でカラダをささえるしぐさでした。
お江戸生活は、アシ指くん大活躍の時代だったんですね。
だもの、張力が生まれるわけです。
疲れたな。
そうしたら、まずクツをぬいて、ツマ先立ち。
できれば、そのまま、ツマ先歩き。
一度、どうですか?
ツマ先を 活用すれば ハリがでる
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