痛みとクスリ(1)

最初は、ソボク

 

痛みをとりたい。
痛みをもったら、スナオに思う気持ちです。

その歴史は、古い。
人類が、この地球上にくらしはじめて以降、でしょう。

太古の時代、痛みには、どう向きあっていたのでしょうか。
たぶん、ひじょうにソボクな対応だったのではないでしょうか。
痛くなったら、無理をしない、とか。

いまも、野生動物の多くは、この方法にのっとっているようです。
人間は、もはや「野生」を失っています。
野生を失って、何を獲得したのでしょうか。
野蛮」でないことを、祈るばかりですが。

ときに、偶然が助けてくれることがあります。
「何か」をすると、痛みがへってゆく。
「何か」をすると、痛みがはやくひく。

個人的な経験が、つみ重なって、たくわえられてゆきます。
人間は、そのための「コトバ」をもったからです。

 



 

 

柳の木から

 

柳の枝をかじっていると、痛みがひいてくる。
「そんなわけ、ないだろ」
「いや、ためしてごらん」
「あれ、本当かも」

柳の枝、樹皮、葉っぱ。
何でも、カジカジしていると、痛みが引いてゆくみたいな。

ここには、何か、特別な成分があるのにちがいない。

日本でも、古くから、経験的に知られていました。
その結果、柳の粉を利用したり。
そのまま、柳ようじとしてみたり。

西洋では、化学的に、柳の鎮痛成分を抽出できないか、知恵をしぼりあいました。
しまいには、合成できないものか。
そして登場するのは、ドイツのホフマン先生
バイエル社の研究員でした。
ときに1897年。

ついに、痛み止めの薬をつくりあげます。
バイエル社は、「アスピリン」という名で世にだします。

これは、100年以上たった今も、現役で活躍しています。
痛みどめだけじゃなく、心臓の薬としても。

 



 

痛くなったら、すぐセデ□

 

痛みの経験はないよ、という方は、マレでしょう。
とくにランナーは、いたるところに痛みの経験があります。
レースのあとでも、筋肉痛という痛みあり。

ただし、ランナーの場合、痛みが快感、という方もいて、変態度は高そうです。

ふつう、痛みは、はやくなおしたい。
お手軽な手段として、薬の服用、というのがあります。

いい痛み止めを開発できれば、みんなに手にとってもらえる。
痛み止め市場は、とっても盛況です。
これからの高齢化社会をかんがみ、当面、需要がへることはないでしょう。

ということで、ドラッグストアの痛み止めコーナーへいってみます。
うわ。
あまりの品数に、どれを選んだらいいのか、かたまってしまいそうです。

こういうとき、マイ痛み止め銘柄をもっていると安心です。
痛いときには、コレがいちばん効くんだよね。
痛み止めは、信じれば信じるほど、効果がましてきます。

一方、効果のないときもあります。
痛み止めは、痛みの万能薬、とはゆかないようです。

どうして、今回は、いつもの痛み止めが効かないのだろう。
こんなときは、「痛みの回路」に、目を向けるのもいいのかもしれない。

 



 

痛みの道のおさらい

 

現場でおこった、痛み事件。
この情報が、脳の担当部署に伝わることで、痛みとして認められます。

その道すじを「6つの行程」にわけてみたらどうでしようか。
前回、あやしげな提案をさせていただきました。

(1)痛みの現場
痛み物質の発生から、電気信号への転換まで

(2)在来線
末梢神経

(3)乗り換え
末梢神経伝達物質へ

(4)新幹線
脊髄神経

(5)脳内での乗り換え
中枢神経伝達物質へ

(6)地図の脳(場所の判明)
総務の脳(評価、記憶、指令)

 



 

現場の火消し、ロキソニン

 

痛みの発生現場では、さまざまな「痛み物質」が発生します。
さまざま、というのが、ミソです。
さまざまさが、痛みのバリエーションを産んでくれるのですから。
ズキズキ、ガンガン、シンミリ。

すると、痛み物質を「増幅」する物質が、出現してきます。
ひとつひとつの痛み物質は、なにせ、微量ですから。
増幅作用で、痛み物質は、グーンと成長してゆきます。

成長した痛み物質は、電気信号に変えられます。
電気に変身した痛み信号は、末梢神経に入ってゆきます。
末梢神経は、在来線のイメージです。

ここの痛みの発生現場。
もしも、痛み物質の「増幅物質」を作らせなくできたら。

そうです、信号化を阻止できるかもしれない。
すると、末梢神経に入ってゆけない。
結果、痛みと認識されなくなる。

さまざまな痛み物質に対して、増幅物質はシンプルなので、手がだしやすいのですね。
そうして、作りだされた代表作。
それが「ロキソニン」です。

セレコックス、ボルタレン、などもお仲間です。

ステロイド剤も、同じ働きをもっています。
ただし、ステロイド剤は、ほかにも多彩な仕事をしますので、単純にとらえられません。
なにせ、ホルモンですから。

 



 

事件は、現場で起こっている

 

痛みは、事件です。
そして、事件はいつだって、現場で起こっています。
会議室、ではありません。

ですから、現場をおさえる。
刑事としての、チョー基本です。
いえ、刑事事件ではありませんけど。

まず、現場での対応ができること。
痛み対策の、第一歩です。

痛み対策は、ロキソニンに始まり、ロキソニンに帰ってくる。
わたくしの、迷言です。

とはいえ、ロキソニンで、すべての事件が解決できることはありません。
そんなに底の浅い世界じゃありません。
むしろ、ここから始まる。
(つづく)

 



 

たーさん
痛み事件は 現場から はじまる

 

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