痛みとクスリ(2)

ローカル線を止めたい

 

痛み現場で発生した痛み物質
これが「増幅」されて、電気信号に変えられると、末梢神経に入ってゆきます。
抹消神経は、ローカル線に相当します。

ローカル線は、じつは2本の線路が並走して走っています。
各駅と、快速みたいな。
一方が、ナトリウム線。
もう一方が、カルシウム線。

ナトリウム線を走る列車を止めようとする例が、痛み止めの局所注射。
リドカイン、が代表選手。
塗ったり、貼ったりしても使えます。

カルシウム線を走る列車を止めようとするのが、飲み薬。
リリカ(プレガバリン)、が代表選手。

カルシウムは、血管の緊張をたもつ働きもしています。
なので、リリカを飲むと、血管がひらくことがあります。
その結果の、メマイ、フラツキ。
これを利用して、降圧剤もありますから。

 



 

新幹線切符を売らせない

 

ローカル線で、新幹線駅までたどりつきました。
ここからは、新幹線切符を買わないと、入れません。

痛み止めの世界では、直接、切符購入をジャマする薬は、まだないようです。
脳の中の「総務の脳」からの指令をまちます。
そこから、「新幹線切符は売らないで」という指令をだしてもらいます。

その代表選手が、オピオイドです。
具体的には、モルヒネとか。

どのくらいの指令の強さで、新幹線の切符売りを制限できるのでしょうか。
薬の量が、多ければ多いほど、指令が強力になります。
モルヒネ5mgで、切符を強く売らなくすることがある。
ときには、何百mgも必要なこともある。
つまり、上限はありません。

ただし、オピオイドは麻薬なので、使い方の規制があります。
もう少し、お手軽に、使えるようにならないものか。

そうして登場してきたのが、トラムセット、ツートラムなど。
麻薬の手続きなしで、使えます。

ただし、いずれも「」に働きかけるクスリです。
そして「総務の脳」だけに作用するわけでもありません。
安易に使ってはどうかな、という思いも大事でしょう。

安易に使えるアメリカでは、この薬は結構な問題もおこしているようです。

いま、はやりのアセトアミノフェン(カロナール)も、この仲間です。
ただし、脳の総務より、体温脳のほうへ、より作用します。
つまり、解熱が得意。
そして、脳に作用するので、あまりに連用をつづけると、ポワーンとなる方もいるようです。

 



 

新幹線に乗ったら

 

痛みの信号が、新幹線に乗ったらどうでしょうか。
つまり、痛み刺激が、脊髄まで伝わったら、です。

新幹線は、きほん、止められません。
特殊な麻酔薬を、脊髄に注射しないかぎり。
一気に、脳内まで走ります。

あとは新幹線が、脳内に入ってからの問題となります。
脳内に入ったら、脳内での移動が必要となります。
脳内神経伝達物質が、その役割りをにないます。
これが、脳内の目的地までゆきます。

この移動を何とかできないか。
そこで使われるのが、てんかんの薬とか。
けいれんの薬とか。
ちょっと、オタク系になってゆきます。

 



 

最後は、総務の脳へ

 

痛みの信号の最終目的地は、ふたつありました。
地図の脳。
総務の脳。

中心は、総務課です。
痛みの「評価」「記憶」「指令」を担当する連合脳です。

評価課で、痛みの性質や危険度などの評価をします。
記憶課で、すぐに忘れていいか、記憶にとどめておくべきかの仕分けをします。
指令課で、ガマンしてのりこえるか、助けを求めるか等の行動をおこします。

マラソン途中の捻挫は、指令課が「もちっとガマンせい」という指令をだすことが多いようです。
それが、走っているあいだ、痛みを感じなくさせます。
つまり、新幹線切符の販売を、制限させる。

そして同時に、評価脳が、走っててもエエよ、という判断をくだす。

のちのち、いがいと大きな存在となるのが、記憶課の存在です。
「痛い」という記憶を、ずっとリアルに残そうとすることがあります。
もう、現場の事故はすっかりよくなっているのに、です。

キズはいえても、痛みはひかない。
こういうことも、しばしばあります。

記憶課へのアプローチは、容易ではありません。

 



 

クスリとリスク

 

クスリを逆から読めば、リスクです。
両者は、表裏一体の関係です。

いまや、痛み止めのクスリ市場は、大盛況です。
ツボにはまれば、よく効きます。
痛みはすっかりよくなりました、という恩恵もいただけます。
けっこうなことです。

でも一度、痛みの道をふり返ってみましょう。
現場の痛み事件」そのものをなおすクスリは、登場しませんでした。
あくまでも、痛みの道を「止める」だけです。

現場は、まだ、荒れたまま。

なのに、痛みがひいたからといって、モトの行動をとったら、どうでしょうか。
いわんや、また無理がきくなんて思いこんでしまったら。

ここを押さえておかないと、痛みのドロ沼にはまっちゃいます。

じつは、痛みの事故現場そのものの修復をお手伝いするクスリ系もあります。
漢方薬関係のはなしになってしまいますが。
西洋薬には、この手のものは、思い浮かびません。

もちろん、以上の手段をつかっても、痛みがひかない。
そういうこともあります。
そうそう、すべてが簡単にはおわらない。

でも、痛みの回路、痛みの道から考えてゆく。
この回路は、実に大きな広がりをもっています。

 



 

たーさん
行けども行けども 痛みの回路は 奥深し

 

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