ありがとう。
16年前の夏
ワンコが、わが家にやってきたのは、16年前の夏のはじまり。
理由は、簡単です。
子どもが、「犬をかいたい」
はい、でもやがて、子どもは出てゆく。
はるなの山のふもとで犬をかっている家で、子犬のもらい手をさがしているよ。
そういう流れで、5月生まれの雑種のワンコ、オスがわが家にやってきました。
生後2ヶ月ちょっと。
野生児っぽい風貌。
1日目は、玄関でキャンキャンないていましたが、すぐに慣れました。
足が太いから、大きくなるよ。
さっそく、大きな犬小屋も作ってみました。
朝と晩の散歩がはじまります。
必然的に、親の日課となってゆきました。
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生家の様子。大家族だったようです。
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わが家で、スクスクと育ってゆきます。
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お得意のポーズ。リラックスしなくっちゃ。
野生の濃縮
グングン育つ。
いちばん元気な時代は、体重は23キロほど。
めちゃ力もつよく、散歩では犬ぞりに使えないか、なんて考えるほど。
田舎なので、犬にとっては好都合。
田んぼ道、あぜ道、山道、バリエーションは豊富です。
暑い夏は、田んぼの用水路や小川の中に自分からバシャバシャ。
水もゴクゴク。
もう、自然にまかせます。
ついでに、水をザンブラとかけてやって、行水もしちゃえ。
山の細道も、のぼり下りの区別なく、全力疾走。
猟犬やれるんじゃないの。
しばしば、たんぼ道では、ぼくと全力疾走。
瞬発力も、まじで強力。
野生の力には、勝てません。
はい、ぼくの方が負けています。
歩幅は小さいのに、ピッチのすばしっこさ。
犬版、飛脚走りそのものでしょうか。
そうか、ぼくの走りの師匠。
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記録的な大雪となった日の田んぼ道。もうわがもの顔で駆け回る。
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ワンコにとっては、田舎は天国。
しかし、犬の一生は濃縮されています。
やがて、歩く速さも、歩く距離もだんだんと減ってゆく。
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お得意のポーズ。とことん、くつろいでいます。
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どっちが、オモチャか。
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だれからも、かわいがられる。
8ヶ月前のある日
昨年の11月。
いよいよ、自分で歩くことがむつかしくなってきました。
オナカを支えて立たせると、なんとか4本足。
でも、そこまでで、カラダを前にもってゆけません。
オナカを吊り下げるように支えて、ヨロヨロと庭先の散歩。
オシッコも出す力が萎えてきました。
尿閉です。
このままだと、腎不全。
人間なら、クダを入れないとね、なんて発想になる状況です。
オナカを支えていると、膀胱のふくらみに気がつきました。
そこをしぼるように押すと、シャー。
以後、毎日、乳しぼりならぬ、膀胱しぼり。
ウンチもしゃがんで自由に出す力がなくなってゆきます。
といって、犬用のオムツって、いがいに体にあわない。
そして、高価。
で、人間用のアテントのSサイズ。
シッポの部分ををうまく切ると、あれあれジャストフィット。
夜の定番となりました。
介護の主役は、排泄じゃないでしょうか。
そして、朝と晩には、チンしたホットタオルで、からだをゴシゴシ。
うっとりする表情に、こちらも癒されます。
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歩けなくなっても、庭の雰囲気は大好きです。
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だんだんと、頭をあげることも、大変になってゆきました。
そして、その日
徐々に、伏せて寝がえりもできなくなります。
からだを整えて、首を支えると、なんとかスープはピシャピシャすすります。
食欲だけは、つづきました。
それでも、みるみる肋骨が浮きでるようになってゆきます。
体重は、3分の2くらいになったでしょうか。
持ち上げたときの重さが、日に日に軽くなってゆきます。
それでも、寒い冬をこしました。
桜の木の下で、花びらもあびました。
新緑の季節も、すごしてきました。
そして夏。
今年は、ワンコにとっては、運が良かった。
7月になっても、太陽がぎらつかず、比較的すごしやすい。
それでも、日1日と弱ってゆくのがわかります。
いよいよスープを飲む力もなくなって2日目。
正午を少しすぎた時間。
小さな声で、キャンとないて、そのまま息を引きとりました。
あんなに動いていたからだが、まったく動かなくなりました。
静かに天国へ。
生まれてから16年と3ヶ月の時間。
わが家にやってきて、ちょうど16年目。
大切な、大切な家族でした。
せめて、花いっぱいにして送ってあげよう。
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ついに、目をひらかなくなりました。
1冊の本
『いぬは てんごくで…』という絵本があります。
シンシア・ライラント作、中村妙子訳、偕成社。
どうして手に入れたのか。
やがてくる、この日が頭にあったのかもしれません。
それとも、この日を否定したかったからかも。
この本によると、天国にいった犬は、みな自分の家をあたえられます。
思いきり、かけめぐって、遊ぶこともできます。
そして、ときどき地球に連れていってもらえます。
飼い主をたずねて、誰にも見られずに、なつかしい庭を嗅ぎまわることができます。
玄関のポーチにすわって、郵便屋さんをまつこともできます。
そして、何も変わりがないことに安心すると、また天国にかえってゆく。
そして、なつかしい友だちが天国にくるときは、入り口で迎えてくれます。
そうかそうか。
自分の番のときも、そうしてくれているのかな。
ちょっと勇気をもられる本です。
ただし、ふつうには読みすすめられません。
ジュワッて、あつくなってしまいます。
本当にありがとう。
まったく個人的な、お話でした。
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見上げれば ワンコは天を かけめぐり
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