集まってくるもの
そこにあると、行きたくなるもの。
あるいは、つい寄ってみたくなるもの。
冬の日の、落ち葉たき。
(今はもう、童謡の世界の話でしょうか)
教室の、達磨ストーブ。
(ぼくの子供時代の教室の暖房は、石炭ストーブがひとつだけ)
ガマの油売り。
(縁日の、名物オジサン)
マラソンレース。
(はやく、こういう日が待ち遠しい)
そして、一匹のワンコ。
なぜ、犬は、ひとを引き寄せるのでしょうか。
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名は、コーシロー
まだ幼く、しかし自立もはじめた白い犬、シロ。
シロー、シローとよばれ、尻尾をふると、なでてもらえる。
ある日、知らない場所に連れてゆかれます。
「やっぱり、飼えなくて」
そんなコトバが聞こえたような気がして、気がつくと誰もいない。
シロは無我夢中で走り回ったあと、広い校庭に迷いこむ。
人の気配、そして、大好きだったパンの匂いにさそわれて。
そこは三重県内の、八陵(はちりょう)高校、通称ハチコー。
捨てられた犬が入りこんだのは、ハチコーと呼ばれる高校。
匂いのもとは、美術部の部室から。
そこでは美大をめざす無口なコーシローこと早瀬光司郎がデッサン修行中。
そこに入った迷い犬。
仲間が、光司郎とよぶと、なぜか犬が反応する。
「この犬、コーシローとよぶと、尻尾をふるんだぜ」
単なる迷い犬なのか、捨てられたのか。
とりあえず保護しながら、飼い主をさがしてみよう。
でも、何の反響もありません。
紆余曲折をへて、学校で飼おうということに。
そこで作られたのが『コーシローの世話をする会』
コーシローは、とくに美術部の優香になついてくる。
優香のいえは、おいしいパン屋さん。
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コーシローのまわりで
美術部の面々。
生徒会の役員たち。
そして用務員さん。
コーシローのまわりに、ひとが集まる。
おとなしいコーシローは、基本、校内はフリーの身にさせてもらえる。
リードをつけられるのは、特別なときだけ。
その年の年末から年始は、優香が家にひきとってくる。
そして年の変わり目。
優香は、ひとの光司郎とコーシローとおまいりに。
やがて高三を終えると、学校から離れてゆく。
優香は、東京の大学へ。
光司郎は、美大に入れず、地元の大学へ。
桜の咲く頃。
いつもの顔が、とつぜん消えてゆく。
そして、新しい顔がやってくる。
コーシローの世話をする会はつづくが、コーシローにも胸がつまる季節。
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12年
今年も、桜がさいて、見なれた顔が消えていった。
そしてまた、新しい顔。
そして新しい生活。
コーシローは、あいかわらず、ハチコーの中では自由だ。
しかし少しずつ歩くのがゆったりしてくる。
くつろぐ場所も、少しずつ移動してくる。
そんなある日、ハッとする気配を感じる。
突如、大きな力がみなぎってくる。
あの香り。
忘れてはいない。
あわいパンの香り。
不安なときに出会った、あの匂いだ。
優香が、来ている。
優香は、大学を卒業して英語の教師になった。
いくつかの高校をまわり、母校に赴任してきたのだった。
優香も、20台のおわりになっていた。
以降、コーシローは教室のうしろでくつろぐ。
だんだん動けなくなってきた体を持ち上げて、ゆっくりとやってくる。
もう大丈夫。
もう大丈夫。
そうして優香のもどったハチコーで、12年の命の幕が閉じてゆく。
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どこまでも
コーシローがいなくなっても、ハチコーには毎年、新しい顔がやってくる。
もうコーシローを知らない年代。
しかしコーシローと過ごした生徒には、ずっとコーシローが生きつづけているよう。
コーシローに最後に立ち会った優香は、その後、また他の高校へ移動。
その間に、結婚、そして別れ。
気がつくと、高校をでてから30年が過ぎようとしてくる。
その春から、ふたたびハチコーへともどってくる。
ちょうど母校は、創立100周年記念行事を立ち上げたところ。
なにか大きな記念行事を、という流れがおこる。
そこでスポットライトをあびたのが、早瀬光司郎。
今や海外で有名となった画家。
光司郎に、大きな絵を描いてもらおう。
光司郎が母校に寄贈したの絵画の題名は『犬がいた季節』
コーシローが、ふたたびキャンバスによみがえってくる。
行事の当日、光司郎が母校をおとずれる。
光司郎にも、苦しい時期があった。
久しぶりに出会う光司郎と優香。
絵の中には、犬のコーシローがいる。
そして2人は何を語りはじめるのか。
そして何が起きてゆくのか。
ツンと目頭が熱くなる出会い、とだけいっておきます。
寒い季節ですが、ほんわり暖かくなれます。
ああ、またワンコと暮らしたいな。
たまには、コタツにあたって読書もいいよ。
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いなくても 思い出つむぐ コーシロー
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