タフにはなれない
タフでなければ、生きてゆけない。
優しくなければ、生きてゆく資格がない。
レイモンド・チャンドラーが、名探偵フィリップ・マーローに語らせた名文句。
シブい。
一度でいいから、こんなコトバをはいてみたい。
タフでなければ、ゴールまでゆけない。
優しくなければ、走ってゆく資格がない。
グンマーマラソンの中間地点周辺。
袋小路か、と思わせるせまい路地がつづきます。
先も見えず、視界に入るランナーもへります。
そして、半分を走ったという安心感と、まだ半分あるんかいという重さ。
ここまで、ツッコミペースできたわが身は、いよいよ馬脚をあらわします。
って、馬の足が出てきて欲しいよ。
かわって、実力がでてきました。
タフさはない。
ま、これは仕方がありません、根性もありませんし。
優しさはある。
自分への優しさ。
無理しなくても、いいよ。
自分には、ムチ打たんのか。
おー、いよいよペースが落ちはじめます。
遠くにのぼりが見えるだけで、半分、腰くだけ。
それでも、30までは
人生の節目、というのはどんなときなんでしょうか。
マラソンでは、しばしば30キロ地点が、分岐点として語られます。
グンマーマラソンコースは、30キロまではやさしい。
おだやかな、くだり基調。
からっ風の地にあって、風はおい風。
そっと、走りを後押ししてくれます。
まさに、人生の縮図。
若いうちは、全力でぶつかるのがいいさ。
決して、世間は見捨てないよ。
ここは元旦のニューイヤー駅伝にかぶるコースです。
駅伝選手の2分の1ですか、3分の1ですかのペースであっても、気持ちはまだ切れない。
というような気持ちで、走りつづける。
ま正面から、日差しがまぶしい。
ニューイヤー駅伝コースを、ちんたら走る。
30からの人生航路
30キロをこえてくると、景色がいっぺんしてきます。
いえ、連続していますが、そう感じてしまいます。
長くつながる直線道路。
広くなった道幅。
だらだら、のぼり道。
向かい風。
進むのが、しんどい。
スピード感が、いちだんと落ちてゆきます。
疲労も、加わってきています。
マラソンは30から、というのは、よくいったものです。
人生も、30からです。
すると、わが年代はいかに。
立派なマラソンゴール後世代じゃありませんか。
すると、もうゲームオーバーということですか。
いやいや、そのためにウルトラマラソンというのがある。
42からの先が勝負じゃ。
30を超えてからが、勝負じゃい。
エイドの文句。好きで止まっているわけじゃないんですよ。
予感
この日は、いつも以上のポカポカ陽気。
いくら文化の日が晴れの特異日といっても、暑さまで感じます。
久しぶりに、肌のジリジリ感を味わっています。
秋じゃない。
くわえて、エイドの簡素化。
エイドの数がへり、テーブルの上におかれたカップの水の量も少なめ。
これは、脱水に気をつけなきゃね。
フラフラ走行(わたしは、もとからフラフラですが)。
足のツレ(筋肉けいれん)。
要注意。
という予感が、的中してしまったのでしょうか。
コース上、コースわき、顔をしかめて立ち往生するランナーが増えてきました。
すでに救護ビブスをつけた方に囲まれているランナーはスルー。
ひとりで「うー」っと声をあげているランナーには、ちょいと声をかけさせていただきます。
「大丈夫ですか?」
「ひどいようなら、救護の方をよびましょうか?」
さいわい、大事にいたるほどではない様子。
念のために持参していた漢方の芍薬甘草湯は3包。
これは、みんな配っちゃいました。
わたくしですか。
わたくしは、力が尽きる前から、棒走りになっているだけ。
ペースが落ちているおかげか、ツレはありません。
いいんだか、よくないんだか。
しかも道中、「飛脚玉」をペロペロしていましたし。
これは、いいんではないかい(自己満足)。
最後の大作戦は未遂
35キロをこえると、利根川沿いの散歩道に入ります。
ふつう、川沿いの道は、タイラなのが仁義ですね。
流れは、タイラなんですから。
ところが、ここは、のぼってくだって、というデコボコをあえて作るのが趣味かいとツッコミたくなる起伏道。
利根の流れを楽しむ余裕はありません。
川向こうには、東京都庁につぐ東日本第2位の高さをほこる県庁の姿。
庁舎が立派な土地に良政なし、という格言が生きているのかどうか。
中央大橋をわたって川向こうに出れば、県庁前へ。
そこで最後のUターンをすれば、あとはゴールに向かって川沿いをのぼるだけ。
約2キロ半。
じつは、ここで計画を立てていました。
最後の数キロ。
休める場所でワラジをぬごう。
あとは、ゴールまでハダシで駆け抜けよう。
わたくしの場合、ハダシがいちばん走りやすいという考えなんです。
もちろん、何年も普通のランニングシューズで走ったことがありません。
持っていませんから。
ですから、厚底シューズなんて、手にしたこともない。
非常にかたよった世界人です。
ワラジ、ワラーチ、地下タビ、ハダシからの4択なもので。
ただし、アスファルトの上を、ずうっとハダシでは足裏がすれてしまいます。
いがいと、繊細?
なので、最後の切り札的発想。
ところが、もはやワラジを脱ぐのさえ億劫です。
ワラジのまま、トボトボと走りつづけます。
強くなったからっ風が、真正面から、ぶつかってきます。
ゴール地点、4時間19分37秒(ネット)。
えへへ、という結果となりました。
まあ、こういうレースもある。
って、こういうレースばかりになってきましたなあ。
川ぞいの道へ、つき進む。
散歩には、たのしい道です。
利根川の向こうには、グンマー県庁。あそこで39キロ半。
わが同士は、みなさん、最後の力をふりしぼっています。
最後のUターン。あと2キロ半。
風に向かって走ろう、がグンマーの合言葉。
ここまで、きました。
いよいよ、ゴールが。
結局、最後までワラジとなりました。
ゴール地点でまつ車。
ゴールのにぎわいが、もどってきました。
マラソンに 運はないよ 実力通り
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