ランニング腹痛と、カミナリ様

カミナリ様の襲来

カミナリ様の好物は、何でしょう？

はい、おヘソです。

カミナリ様がゴロゴロと近づいてきたら、急いでおヘソをかくしなさい。
むかしからの、言い伝えです。

この教えは、案外と広く行きわたっています。
おかげで、このワタクシも、カミナリ様におヘソをとられちゃったというひとを、診たことはありません。

もちろん、寓話です。
でも、いっている意味は深い。

カミナリ様がやってくるのは、夏の積乱雲にのってです。
（日本海地方は、冬に横に走るカミナリ様が多いのですが、それはそれとして）。
積乱雲が通ると、急に冷気が一帯をおおいます。
ときに、雨でなく、ヒョウとなるときもあるくらいですから。

つまりカミナリ様のあとにくるのは、気温低下です。
そこを、バカズラして、薄着でオナカを出していたら、どうなるでしょうか。

おヘソはとられなくても、オナカが痛みはじめます。
そう、オナカは、冷えに弱い。
カミナリ様の去ったあと、おヘソをとられた子は知りませんが、腹痛の子はいまだにいます。

だから、カミナリ様が近づいたら、オナカをしまえ。

それを「カミナリ様がおヘソをとりにきたぞ」で一発で知らしめる。
うーん、座布団10枚級の、すご技です。

オナカは、血流をほしがる

胃腸は、長いうえに、仕事量もハンパではありません。
とくに、食べものが入ってくると、消化・吸収にせっせととりくみます。
このとき必要なのが、豊富な血流。

新鮮な豊富な血液で、消化にはげみます。
そして、吸収した栄養分を、豊富な血流にのせて運びます。

ですから、このとき、血流が足りなくなったら、どうでしょうか。
それは、心臓と似ています。
心臓は、自身への血流がたりないと、狭心痛といって、胸がしめつけられる痛みを発します。

２つがそろうと、アウト

胃腸に、たくさんの食べものが入っている。
すると、胃腸は、セッセと仕事をします。
そのために、たくさんの血流を必要としています。

ですから、食べたら食休み。
妊婦さんがオナカをスリスリするように、オナカをいたわってあげたい。
本能も、それを要求しているはずです。
これは、すべての動物にそなわった行為。

ところが、ランニングするひとは、しばしばこの本能にさからってしまいます。
とくに、レースなどのとき。
まず、走る前に、しっかりと食べる。
走っている最中にも、食べる。

胃腸さん、こまっていませんか。
本当はもっと血流がほしいのに、筋肉の方へ血液はどんどん回されてしまう。
それでも、けなげにガンバル。
オナカには、「おしん」が住んでいる（古いかな）。

で、ここに「冷え」が加わったら、どうでしょうか。
ただでさえ少ないオナカへの血流が、血管の収縮で、さらに先細る。
いよいよ、オナカはネをあげてしまいます。

痛いよ、痛いよ。
非常手段として、もう働けないので、オナカを空っぽにしたがります。
それが、はき気であり、嘔吐です。

オナカの狭心症かも

冷えるだけで、オナカの血管は収縮して、血流は低下します。

そこに、走っているという状況（血流は、筋肉へまわされる）。
そこに、食べものが入ってくるという状況（オナカの仕事量の増加）。

これで、オナカへの血流は大丈夫でしょうか。
足りなくなりませんか。

足りなくなったら、ギブアップです。
いタタタタ。
オエオエオエ、ゲー。
これが、オナカの狭心症です。

こうになってしまって、コース脇にしゃがみ込んでしまったランナー、みたことありませんか。
こういう方に、わけを話して、オナカを触らせていただくことがあります。
（もちろん、救護の一環です）。
まず、例外なく、冷たい、ヒエヒエ。

ここで熱かったら、別の病態です。
（熱中症とか、インフルエンザとか）。

走っていて、オナカが冷えてきたら、要注意です。
ところが、走っている最中は、案外に冷えに気がつきません。
夢中だからでしょうか。

ですから、ときにはオナカに手を当ててみる。
文字通りの、手当です。
あれ、オナカが冷たくなっているぞ。
黄色信号が点滅していますよ。
これ以上、オナカが冷えないような行動をはじめたい。

オナカの痛みは、怖すぎる

腹痛。
聞くだけで、ゾッとします。

一体、何が起こっているのか。
想定すべき状況に、キリがないからです。

胃腸が、さけたり、ねじれていたら、大騒ぎです。
そして、ことは胃腸にとどまりません。

胃腸につながる血管がつまったら、胃腸がくさり始めます。
大動脈が裂けはじめたら、生命の秒読みがスタートです。
オナカと思っていたら、心臓や肺などのトラブルというのもあります。
腎臓や尿管にトラブル発生かもしれません。
卵巣や精巣などの生殖器官の問題が発生だってありえます。

どれも頻度は高くはありませんが、見逃すと命にかかわるオンパレードです。
腹痛は、こわい。
原因がありすぎなんです。

でも、あえて、いわせていただきます。
ランナーが走っておこる腹痛の１番の原因。
それは「冷え」です。

まあ、正確にはコレだけでなく、冷えがターゲットとなって、胃腸内の変化が始まってゆく、というわけですけど。
そこは、オタク的な話になっちゃいますので、省略させていただきます。

オナカが痛くて、走れますか？
（つづく）