最初に目的から
忍者の行動食について、考えています。
長距離走の役に立たないかな、という視点で。
行動食というくらいですから、持ち運びの容易さが、大切な要件です。
忍者になったつもりで、持ってゆく。
そう、野山をグングンと移動している気分です。
そうした状況で、持ちやすい形となると、「小さく丸めたもの」でしょうか。
タッパーもない時代に、入れ物につめるというのは不経済です。
丸めた、たべもの。
そして、いたみにくいもの。
必要に応じて、それをポイと口に入れる。
場合によっては、移動しながら。
すると、大きさも、小さめがいいな、と思います。
ピンポン玉以下くらい。
自分の口にあわせて。
そのためでしょうか。
一般に、忍者の行動食は「何とか丸」とか「何とか玉」という名が、しばしば使われます。
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栄養第一「兵糧丸」
「へいりょう」というのは、戦いのときの食糧、という意味です。
つまり、非日常時のたべものです。
忍者でいえば、密命をおびて長距離の移動時などのたべもの、がこれにあたります。
敵にかこまれて、籠城するときなんかも、ですね。
そこに求められるものは、第一に「行動」を支えるエネルギーの確保です。
行動を支えつづけるものとして、何がふさわしいか。
忍者のだした答えのひとつは、次のような種類です。
代表的な成分をのせておきます。
基本、すべて「コナ」にして、混ぜあわせてゆきます。
もち米
うるち米
氷砂糖(唾液を出させるはたらきももつ)
ハスのタネ(蓮肉:病気の回復や整腸作用ももつ)
山イモ(胃を守り、つなぎとしての働きもある)
シナモン(血行をよくし、痛みをひかせる)
はと麦(傷の回復をたかめ、免疫力もます)
朝鮮人参(滋養強壮作用が強い)
すりつぶしたこれらを、ねって、丸めて、乾燥させたものが「兵糧丸」です。
これを、自分のペースにあわせて、たべる。
これだけで、何日もいける、といわれていたそうです。
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空腹感に「飢渇丸」
「きかつ」というのは、飢えの苦しみということです。
ハラがへっては戦はできず。
いえ、走りつづけられず。
そう感じたことは、ありませんか。
登山界では、この状況を「シャリばて」なんていいますね。
修行をつんだ忍者だって「ハラがへっては」行動に支障がでるんです。
空腹感をいやすために求めるものは、「ゆるい血糖上昇」成分です。
急激な上昇は、かえって、疲れや眠けをまねいてしまいます。
甘いものをガバッとたべると、そうなりませんか。
そこで忍者は、考えた。
もち米
はと麦(脳へ栄養素を供給もする)
小麦
甘草の根っこ(現代も芍薬甘草湯に使われていますね)
山イモ
酒
炭水化物を酒でこねて、丸めて、乾燥させる感じです。
実や根など、みごとに炭水化物の集合体。
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ノドのかわきに「水渇丸」
「すいかつ」とは、ノドのかわきのことです。
日本では、水は比較的、手に入れやすいものです。
とはいっても、つねに万全ではありません。
携帯するにしても、限りがあります。
ノドがカラカラで動けない。
いわゆる、脱水ですね。
しかも行動中におこった、急な脱水です。
ですから、カラダ全体の絶対的な水分量が足りていない、ほどではない。
カラダの中の、水分の不均衡を是正してあげることで、一時しのぎにはなります。
そういう発想で、いいものは何か。
梅干し(水分を引っぱり出すし、疲れもいやす)
はと麦(唾液の分泌も促進させる)
氷砂糖(唾液を出させる)
生姜(胃をあたためて、消化液をふやす)
ハッカ(口のなかにサッパリ感をよぶ)
急性期の脱水は、細胞表面はカラカラ状態になっています。
でも、細胞内では、まだ塩水(水分)が残っています。
このアンバランスを補正することで、ノドの乾きをいやして、行動がつづけられる、という発想です。
なんとなく、かわいた口の中に、ジュワっと、うるおう感じがわきませんか。
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ミソ玉だって、秘伝の行動食
以上の行動食を、忍者は状況に応じてたべわけ、行動のおともにした。
というのが、伊賀系、甲賀系をはじめとする忍者軍団につたわる行動食のようです。
一方、真田系や武田軍団などでは、ミソの活用がメインだったようです。
ミソは、大豆、麹、塩からなります。
主成分は大豆というタンパク質の、保存食です。
ここに塩分と、麹菌かつくる糖質をミックスしたもの。
しかも、ミソは最初から「ネリネリ」していて、混ぜものも容易です。
ですから、ミソをベースに、上記忍者丸の成分などをねりこんでゆく。
東国の発想でしょうか。
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そして現代の「飛脚丸」へ
わたしは、忍者を本業にしていません(アタリマエか)
なので、忍者の行動食をそのまま再現する必要性は、感じていません。
つまり、何日もそれだけで行動できる食糧、というしばりは不要です。
一番の目的は、長距離マラソン(フルやウルトラ)時に利用できる行動食のレシピ作りです。
ハーフマラソン程度だったら、水だけあれば充分ですから。
そして、それを「飛脚玉」と命名しようではないか。
そのために、忍者の知恵を拝借したい。
後世のよいところです。
先人の工夫を学ばせていただき、「今の目的」にかなう工夫を加えてゆく。
これを「温故知新」というんでしょうか。
機は熟している。
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