さあ、のぼろう
岩手銀河100kmマラソンコース。
大雑把にいうと、単純です。
だんだん、のぼってゆく。
中央少しいって(57キロ地点)最高峰に到着。
そのあとは、ゆるくくだる。
最後の20キロが、まさかの山中できつくなりますが、それはそれとして。
その中心部ののぼりおり。
ここが、なめとこ街道とよばれている地点です。
もりろん、宮沢賢治の作品から拝借した地名です。
だんだんと、傾斜がでてきます。
人家も、なくなってきたした。
緑が、深まってゆきます。
さあ、ハラをすえて、天にむかって進むぞ。
さいわい、天は、味方をしてくれました。
あれだけひどかった雨があがりました。
すると、一転、雲ひとつない晴天。
なんなの、この身のかわりの速さは。
うれしい。
そう思ったのも、つかの間でした。
うわあ、暑い。
北にむかうわが身の後面から、ジリジリと照りつける太陽光線。
こりゃ、ウインドブレーカーなんか、着ていられません。
「北風と太陽」のおはなし、そのままの展開です。
そしてなぜか、日差しは後面からの方が強烈。
それだけ、うしろは無防備ということなんでしょうか。
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土砂降りが、一転して晴天に。
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喜んだのも束の間、背中からジリジリ光線が注ぐ。
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なんとかのぼり上げて、豊沢ダムまでやってくる、45キロ地点くらいかな。
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ダムの上だけは、平らです。
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しばし、ダム湖と一緒に並走。
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踏ん張りどころの坂をのぼれば、第一関門へ。
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第一関門49,6キロ地点、制限時間1時間5分前に通過やれやれ。
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なんとか距離的には半分まで、でも、まだまだ。
ガス欠?
ウルトラマラソンの朝は、はやい。
とくに岩手銀河のスタートは、午前4時です。
なので、スタート前に朝食を、という気分にはなれません。
いつもの休日パターンは、以下のようなものです。
朝おきて、水を少し飲んで、水だけもって走りにでる。
2〜3時間走って、もどって、水分補給。
そのまま、野良仕事を、お昼くらいまで。
つまり、お昼まで、食べものは口にしない。
なので、多少の空腹で動くことに、抵抗感はありません。
でも、ここはウルトラマラソンだしなあ。
レース前、少しは食べておいた方がいいかも。
ということで、宿で、サバの水煮缶をひとつ、いただいてきました。
あとは、エイドに期待しよう。
持参の食べものは、飛脚玉くらいです。
これが、失敗でした。
今回の岩手銀河、エイドにならぶものは、飴玉とかのみ。
小袋に入ったキャンデーばかり。
駄菓子屋か?
かろうじて、ときどき、リンゴのむいたもの。
あと、ゼリーエイドが、一か所あったかな。
わたくし、ゼリーは、あまり好きでないしなあ。
ここまで、食べものを切り詰めたウルトラは、はじめてです。
走るほどに、だんだんと、オナカがすいてきました。
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唯一、いただけたリンゴを切ったもの。
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あとは、持参したお手製の「飛脚玉」。
それでも、ゆくぞ
途中で、モグモグと、パンを食べながら走るランナーに出会いました。
「おいしそうですね」
「さっきのコンビニで、買ったんですよ。
この大会、食べものが全然ないんですもん」
そうです、その手がありました。
小銭は、もっています。
なければ、途中で調達する。
サバイバルの基本でした。
このアイデアをもらったのが、30キロをすぎたくらいでしょうか。
よし、次のコンビニが楽しみだ。
ところが、です。
その「次」が、エンエンと来ないのです。
まじ、エンエン。
そもそも、お店がない。
結局、ゴールまで、コンビニ前を通ることはありませんでした。
もう、いいんだ。
背中からは、容赦ない日差しがおそってきます。
長い、長い、のぼり坂。
前回は、半分くらいは走れましたが、今回は、そんな力はありません。
シャリバテなのか。
暑さのせいなのか。
単なる加齢か。
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なめとこ山が、なめこ汁って見えてきてしまいました。空腹感。
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容赦ないのぼり坂はつづきます。
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夏のバカンス、目一杯やけちゃいますよ(ヤケッパチ)。
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両サイドからは、カエルだかセミだかの声が途切れません。
トンネル
山道の友、トンネル。
って、3年ぶりのこのコース。
トンネルの数が、増えたようです。
とはいえ、コース最高峰へ向かう最後に3つの連チャントンネル。
これは、健在です。
いよいよ、その3連トンネルにやってきました。
ひとつめ、みじかめ。
ふたつめ、長くなってくるし、中は寒い。
みっつめ、長く長く、暗い暗い。
でも、ここを制覇すれば、もうコース最高峰です。
これ以上の、高いところはこない。
あとは、くだりの方が増えてきます。
展望が、開けてきます。
うん、開けてくる。
あれ、開けない。
しかもトンネルから抜け出たのに、暗い。
空が、真っ暗。
さっきまでの、ジリジリと照りつけた太陽と青空は、どこに消えた?
思う間もなく、ふたたびゲリラ豪雨の襲来です。
天気の急変。
あえわてて、ウインドブレーカーを着こみます。
ピシャピシャ、水をはねながら、坂道をくだりつづけます。
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コース最高峰へむかう3連トンネルのひとつ目。短い。
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2番目のトンネルは、長いですが、ライトがついています。
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いちばん長い3番目のトンネルへ。
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出口のないトンネルはない、ということを願うばかり。
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あの先に待つのが、コース最高峰。
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3連トンネルをぬけると、風雲急を告げてきました、空気が一変。
何がなんだか
平地におりたってくると、小雨に変わってきました。
でも、空気はヒンヤリ。
ウインドブレーカーはそのままで、走りつづけます。
66,5キロの、いわゆるドロップバック地点。
多くのひととランナーで、にぎわっています。
いつもは、手作りのたべものがならぶココも、キャラメルとか。
名物ビスケットの天ぷら、なんてのがなつかしい。
簡単に、スルー。
このあたりからです。
ゴロゴロゴロ。
カミナリ様が、やってきました。
ビシッ、ゴロッ。
なかなか近くに来てくれていますよ。
やがて、再びの、モーレツ豪雨。
もう、いいんだ、いいんだ。
何がいいのか、思考回路も、カミナリ電磁波で混線しています。
ただ、足だけは、一歩一歩をすすめてゆくだけ。
そんななか、アレレと感じてきました。
例年のコースと、ちがってきていないか。
再び、山に中に入ってゆくはずなのに、そんな気配が感じられません。
県道みたいな道を走りつづける。
新しいコースなのかな。
前後には、ポツリ、ポツリとランナーがいるので、コースを間違えているわけではなさそう。
それはそれで、高低差が少ないのが助かりますが。
ふたたび、青空が広がってきました。
これが吉とでるか、凶とむかうか。
やがて、ウルトラ最大のピンチがやってくるとは。
(つづく)
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ふたたび、豪雨襲来、の直前。
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もういいんだ、いいんだ。雨に唄えば。
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ここまで打ちつけてくれると、逆に笑っちゃいます。
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そして66,5キロ地点のレストステーション、にぎわっていますが、食べものはないなあ。
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ここに荷物は置いておきませんでした、カミナリ様が鳴りはじめています。
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思いこんだら 試練の道を ゆかす気か岩手
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