岩手銀河100kmマラソン2022、まわるまわる

大会本部、街宣車に変身

 

クネクネとした山道は、つづきます。
カーブの先に、ランナーの姿が消えることもたびたび。
ふり返っても、ひとり。

いえ、1本道だから大丈夫です、多分。
こんなところで、道を踏みちがえたら、その先が考えられなくなります。
問題は、別のところにあります。

「コース周辺で、熊の目撃情報がありました」
スタート前のアナウンスです。
で、気をつけてくださいね、と。

いったい、どう気をつければいいんじゃ。
もちろん、大会本部も、そんなたよりないランナーのために、知恵をだしてくれています。

どこからか、スピーカー音が、響いてきます。
だんだんと、近づいてくるのがわかります。
外国の歌が、大音響でかかっています。

道の切れ目から、正体があらわれてきました。
大きなワンボックスカーに、巨大スピーカーを積んでいます。
まさに、街宣車そのもの。
そして、屋根にかかれた文字を見て、ビックリ。

岩手銀河100kmマラソン、と書かれています。
おいおい、と思い出しました。

コース上、人間の気配を知らせるために、大会車両が通ります。
たしか、そんなことをいっていました。
この大音響は、大会本部からの、熊よけの威嚇でした。

にしても、外国の歌かい。
なんとなく、レゲエ調なのかな。
岩手の山道に、マッチしていますか?

いま、レース後半、もう力つきかけています。
もう少し、力がわく曲をリクエストできませんか。
たとえば、都はるみとか。
こぶしにのせて、はしりたい。

あんこ〜椿は〜♪

 



大音響で、熊さんを威嚇してゆく大会関係車両、かかる曲は「ある日、森の中、熊さんに出会った〜」(ウソ)

 



三たびのあやしい雲が出現。

 



もー、いいんだ、いいんだ。

 



ピッチピッチ、ジャブジャブ、ランランラン。こういうランもある。

 



やまない雨はない、というのを願います。

 



あったかいのを1本、自販機のありがたさよ。冷えたカラダにしみます。

 



たぶん、はじめての新しいコース。

 



すっかり、日差しがもどってきています。

 



なんとか、ガンばってすすみます。

 

異変

 

後半の山道が、コース変更で、比較的まっすぐになっていました。
たんたんと走る、つもりでいました。

83,3キロ地点の第4関門、午後4時。
88,1キロの最終関門、午後4時40分。
そういう案内がありましたが、その関門地点がどこだか不明。
ちゃんと通っているんだか、どうなんだか。
ただ、時間は間に合っている、と思う。

そして、いよいよ残り4キロを割ってきました。
西に傾いた日差しが、強まっています。
すっかり、青空。
夏の夕暮れをおもわせる光景に変わっています。

自販機をおく納屋の下。
ひとりのランナーが、上をむいて、そのまま大の字になっています。
ちょっと不安になって、声をかけさせてもらいました。
うす目をあけて、「大丈夫」と。

わたくしも、疲れがピークです。
自販機で、ジュースで一服しよう。
ノドをうるおわすと、立ちあがります。

アレレ。
アタマが、傾いてゆきます。
目がまわる
はじめての体験です。

目がまわる」というのは、じつは都合のいい表現です。
アタマがふらつけば、何でも、目がまわると表現しちゃいます。
貧血でも、つわりでも。
(つわりの経験はありませんが)

なので、よく使う「」があります。
いまの症状を「目がまわる」というコトバを使わないで表現できますか。

 



この直線路で、いきなり襲ってきた魔法陣グルグル攻撃。

 



あと3キロもゆけるかどうか、真剣に思案。

 

目のまわりかた

 

目がまわる感じを、「目がまわる」をつかわないで表現してみる。
アタマから、血の気がひいている感じ。
カラダが横揺れして、ふんばらないと倒れそう。
そのまま、しゃがみ込みたい。
目の前の景色が、ボオッと見える。
そのまま、穴に落ちてゆくよう。

自分で、自分の症状解析です。
いやはや、とんでもな状況になっているようです。

脈をみたら、走っていないのに、がはやい。
(GPS時計の脈拍計は、バッテリー節約のため、オフにしてます)
そして、脈が弱い。
あやや、血圧も、やや下がっているかも。

これで歩きだそうとしたら、完全に、千鳥足です。
とりあえず、しゃがみこむ。

ハイハイの姿勢でいると、少しはアタマがスッキリします。
うーむ、あと3キロちょっと。
残りを、ハイハイですか。
それとも、リタイヤ

ボクが逆の立場だったら、リタイヤをすすめたかもしれません。
とはいえ、97キロを走ってきて、そういう決断は、なあ。
もう、寝っころがって、休みたい。

でも、です。
ここまできて、あきらめがたい思いは、たち切れません。
両足を広げて、踏んばれば、何とか前にすすめそう。
しかし少しスピードを、なんて欲をだすと、たちまちフラフラ感が出現。

さいわい、90キロ地点を、2時間ほど残して通過してきていました。
あと3キロ。
歩いて、キロ15分かけてもゴールはできる。

ゆっくり、ゆっくり、「歩く」。

 



雫石への橋をわたって、完全にヘロヘロ歩き中。

 

思案のしどころ

 

雫石へ入る橋をわたると、最後ののぼり坂
そこをのぼり始めると、ゆっくりでも、フラフラ感で倒れこみそう。

縁石に腰をおろして、呼吸をととのえる。
脈拍があがっているので、脈がおちつくのを待つ。
どうやら、脈拍数症状が関連していそうです。
目の前をすすむランナーたちには、笑顔でエールをおくる。
「ラストだよお」
ほんとに、ラストにゴールインできるのか。

少しいっては、やすむ。
脈拍は、決して、あげない。
そのくり返し。
そして町なかの通りに入り、あと1キロ。

まったくの歩きです。
それも、バランスをとるために、両足をひらいてガニ股歩き。
周期的に、フラッとくるけど、なんとかゆける。

そしていよいよゴールの見える直線路までやってきました。
最後は、走って決めたい。
いや、ここで倒れたら、それこそ救護班に収容です。
カッコつける余裕なんてありません。

とにかく、ゆっくり、ゆっくり。
一歩一歩を、踏みしめるように。
そして、ついに歩いてゴールラインを通過。
いやあ、ホッとしました。

まだ地球が回っていますが、足をふんばって喜びをかみしめる。

13時間48分00秒。
制限時間に、12分とせまる記録って、最近はいつもこんなもんじゃないか。

これまでで、いちばん危なかったゴールとなりました。
ゴール会場では、食べものブースができていました。
ゴールすると、無料飲食券も、いただけます。
これが、なぜコース上になかったのか。

フラフラするアタマで、食べものブースを遠目に見ながら、スルーします。
いま、自分のカラダの中では、いろんなことがおこっている。
電解質異常、逸脱酵素異常、水分バランス異常。
そしてたぶん、エネルギー切れ。
ひとことで、熱中症だとか、脱水症なんていえるものではないでしょう。

 



この1,7キロが、べらぼうに遠い。

 



坂道は、脈拍が上がってしまって、フラフラ、縁石に腰をおろして一休み、後ろを振りかえる。

 



なんとか、ゴール会場が視野に入ってきました。



そして、目の前に、ゴールの姿が。ここでコケたら、あかん。

 



ナムナム。

 



そして、南部鐡の完走メダルが。

 



100キロを支えてくれたアンヨと、ワラーチは大丈夫です。

 



飲食ブースは、まったくのスルー。

 

最後のミッション

 

さて、ここで本日最大のミッションが、待ちかまえています。
直帰しないと、明日の仕事ができない。

ゴール会場から、盛岡駅まで、シャトルバスがでています。
約40分ほどかかるはず。

この日に家に帰るためには、盛岡駅午後7時50分の東北新幹線はやぶさ号に乗らなくてはなりません。
そうそうに、体育館で荷物を受けとる。

さいわい、本日は、下はズボン、上はウインドブレーカー姿でゴールしています。
それほど、あやしい格好ではない。
(いえ、十分あやしいです)
くわえて、レース中に、3度のゲリラ豪雨シャワーをあびている。
銭湯に、3回も、いったみたいじゃないか。
(勘違いです)

もう、そのままの格好で、バスに乗りこむ。
足元は、ワラーチのまま。
そして、無事にはやぶさ号に間に合いました。

ほとんど1日、まっとうな食べものを口にできませんでした。
なのに、逆に、食べものを受けつけない胃袋。
車内でとったのは、あったかいお茶のみ。

あとは、途中で、寝すごさないこと。
無事に、午後11時すぎに家に到着
おフロであたたまって、ようやく落ちつきました。

人間、最後に必要なのは、「ぬくもり」でしょうか。
(おフロのぬくもり、というのがさみしいけど)

 



走ったマンマの格好で、はやぶさ号に乗りこみます。あとは、ちゃんと途中下車しなくては。

 

たーさん
地球はまわる そこに合わせる 必要なし

 

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