難問
むつかしい質問、があります。
ちゃんとした答えがだせない。
すると、そこで思考がフリーズ、という場面も少なくありません。
ああ、もう無理。
それでは、発想を変えてみましょう。
それって、質問がむつかしすぎるからじゃありませんか。
むつかしい質問は、だれにとっても、答えられません。
たとえば、歳をとらない方法とか、死なない方法とか。
だれに聞いても、有史以来、答えられたひとはいないのです。
わたしにとって、印象的な質問というと、ジェンナーさんを思い浮かべます。
ジェンナーさんは、イギリスのひとで、種痘を発見しました。
お会いしたことはありません。
200年ほど前の方です。
ジェンナーさんの田舎くらし
ジェンナーさんは、イギリス北部の酪農地帯でうまれました。青年期までを、牧草にかこまれて育ちます。
やがて成人すると、ロンドンに出て、医者の修行をします。
昔のことですから、医学校があったわけではありません。
医者の家に住むこんで、日本でいう、丁稚さんです。
そして20代もなかば、ふたたび故郷にかえると開業医をはじめます。
当時は、天然痘という恐ろしい病気がはやっていました。
天然痘は、今の知識でいえば天然痘ウイルスによっておこる感染症です。
強い感染力をもち、かかると皮膚に凍瘡(とうそう)という病変をつくり、2〜5割くらいの患者が死んでしまう、というものでした。
なおっても、皮膚にアバタを残します。
皮膚所見が派手なので、診断にまようことはありません。
ジェンナーさんも開業すると、天然痘の患者さんをみることになります。
そして、多くの命を失ってゆきます。
どうしたら、治せるだろうか。
むつかしい「質問」に直面していました。
人から、牛へ
そういえば、とジェンナーさんは、昔の話を思い出しました。
ジェンナーさんのすむ土地は、牧草地帯です。
多くの牛が、放牧されています。
若いころ、牛の乳搾りの女性が語ったコトバが、よみがえってきました。
「わたしは牛痘にかかったから、天然痘にはならないわよ」
牛にも、人間と同じようなアバタをつくる天然痘、つまり牛痘がありました。
乳搾りのさい、この凍瘡にふれると、手の傷などから牛痘にかかることがあります。
でも、牛痘だと、だれも数週でなおってしまいます。
牛痘では、死なない。
そして「牛痘にかかったひとは、もう天然痘にかからなくなる」
牛飼いの間では、有名な言い伝えがあったのです。
それなら、とひらめく
牛痘の中には、天然痘を予防する力が備わっているのかもしれない。
ジェンナーさんは、牛痘にかかった水ぶくれの液体を集めると、自分の使用人の子(息子じゃない)に注射をしてみます。
そのあとで、ホンモノの天然痘の液体を注射しましたが、天然痘を発症することはありませんでした。
すごい発見じゃないか。
早速論文にまとめて、大学に提出します。
ところが、それは無視されるどころか、そんな研究はあなたに傷がつくだけですよと警告をうける始末です。
1797年のことですから、200年以上前の話です。
それでもジェンナーさんはあきらめず、次に自費出版をおこないます。
やがて、少しずつ注目するひとがあらわれ、徐々に隣国へ、やがて世界へと知られるようになります。
その結果、ついにWHOは天然痘撲滅宣言をするに至ったのです。
その年、1980年。
人類がはじめて駆逐したウイルスです。
ジェンナーさんが言いだしてから、200年余を要しましたが。
質問を変えてみる
ジェンナーさんも、最初は普通の質問を自分に向けていました。
「どうしたら天然痘を撲滅できるのだろうか?」
でも、むつかしすぎました。
すでに多くの専門家が取り組んでいた難問です。
そのなかで、ジェンナーさんは、専門的知識もない、研究所に所属しているわけでもない。
片田舎で、ひとり、がんばっている開業医です。
それも、丁稚上がりの身です。
そこで、質問の方向性を変えたのです。
「なぜ、乳搾りは、天然痘にかからないのか?」
そこから事態が動きはじめました。
わたしたちも、つい「答えの出ない」質問の前で、立ち尽くしてしまうことはありませんか。
なぜ、痛みがひかない。
なぜ、走りきれない。
このとき、ジェンナーさんだったら、どう切り込んでいっただろうか。
(もうすこし、つづけます)
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