4リットルの重みと軽さ
2リットルのペットボトルを手にもってみてください。
ズシリと重い。
重さは、どのくらいあるでしょうか?
はい、約2キログラムです。
中味は、どのくらい入っているでしょうか?
はい、2リットル、2000ccです。
それでは、2リットルのペットボトル2本の内容はどのくらいになりますか?
はい、4リットル、4キロです。
空いた2リットルのペットボトルに、トマトジュースを満たします。
それを、2本用意します。
あわせて、4リットルのトマトジュース。
もったいないかもしれませんが、そのトマトジュースを洗面器にそそいでみましょう。
洗面器には、4リットルのトマトジュース。
ずいぶんあるな、と感じますか?
これっぽちと、感じますか?
ひとのカラダをめぐっている血液の総量は、およそ4リットルです。
大きいひとも、小柄なひとも、血液の総量に大差はありません。
大体、4リットル。
これがクルクル回っているのが、血液循環。
つまり、カラダの主要な運搬係。
正体は、2リットルのペットボトル2本分の血液。
4リットルにたくす命
4リットルの血液に溶けこんでいるものは、何があるでしょうか。
まず肺からとり入れた酸素。
肝臓を介して入ってきた栄養。
逆に、酸素を使ったあとの二酸化炭素。
栄養を使ったあとの老廃物。
つまり、生命現象に必要な、ほとんどすべての物質。
だけではありません。
体調をつかさどるさまざまな情報、ホルモンや神経伝達物質なども、目一杯つまっています。
だから、採血をして血液を分析するだけで、数千をこえる情報がわかるんですね。
血液検査の異常というのは、血液につかる全身のどこかに、うまくいっていない箇所があるのかもしれません。
4リットルの世界って、すごいじゃありませんか。
ぢっと血をみる。
では、血液はどんなふうに全身をめぐっているんでしょうか。
まずは、そのダイナミックな動きに着目してみましょう。
速さ
心臓が1回ドッキンと収縮すると、コップ約半分、80mlの血液をおし出します。
心拍数が1分間に70回とすると、心臓は1分間に、80×70=5600mlの血液をおし出すことになります。
おおざっぱにいって、1分間に5リットル強の血液です。
4リットルの全身血液を、心臓は1分間に5リットル強もおし出しているんです。
ということは、1分もしないうちに、最初におし出された血液は、ふたたび心臓に戻ってきている、ということになります。
平均すると、約50秒でカラダを一周。
思った以上に、速い流れです。
サラサラ、というより、ビューんです。
強さ
心臓は、血液をグッと全身へおし出します。
その最大力が血液への圧力、つまり血圧です。
自分の血圧、知っていますか。
だいたい120mmHgくらいです。
水銀(Hg)を120mmふき上げる力に相当しますよ、という意味です。
自動血圧計をまくと、でてくる数値です。
水銀ですか。
なじみのない物質がでてきました。
毒性も強いので、目にみえるところからは消えています。
昔は、本当に水銀を入れた血圧計をシュポシュポやって、血圧を測っていました。
今は水銀、使えません。
水銀は水よりも13倍ほど重い物質です。
ですので、水の圧力に換算させるのは簡単です。
方法は「13をかける」です。
120mm水銀柱×13=1600mm水柱=1,6メートルふき上がる噴水です。
血液は、水にちかい性質ですので、血液も水と同じくらいにふき上がります。
寝てもらって、心臓に近い動脈に上からストローをさすと、血圧120のひとは、血液が約1,6メートルふき上がりますよ、というイメージです。
ひとの背丈と同じくらい、です。
血圧200の方は、200×13=2,6メートルの噴水です。
畳に横になって、ふつうの家の天井までふき上がる血圧。
うーん、ちゃんと治療しましょう。
チャンバラで首元をかっ切られた悪人の血しぶきが、バァーと天井まで飛んでゆく。
昔のチャンバラ映画でよくみたシーン。
チャンバラ時って、たぶん、いつもより血圧あがっているだろうし、生理学的に正しい描写です。
走る血液
血液って、思った以上に「速く」「強く」カラダをめぐっているんですね。
そうにして、命をつむいでくれる。
しかも、そこに大きな個人差はありません。
ひとの性格は、反映されていません。
走るスピードにも左右されていません。
しかもどんなときにも、決してサボらない。
寝ているときも。
だって、1分も休んでしまったら、アウト、になってしまうんです。
ところで、いまのべてきた「速さ」と「強さ」は、ゆったり安静時のものです。
活動すれば、なかんずく、ランニングなどすれば、カラダの酸素やエネルギーの需要はドンドン増えてゆきます。
おわかり、ですよね。
需要が増えれば、それに答えなくてはなりません。
血液は、その需要を、まわる「速さ」で応じようとします。
1分間に5リットル強を、6リットルに上げ、7リットルにして、という具合です。
つまり、心拍数を上げることで、血液の流れを速め、需要に応じようとするのです。
グルグルめぐる血液のスピードを上げるんです。
さいわい「強さ」を上げようとはしません。
つまり、血圧は、そう変わりません。
というのも、心臓がグイグイ血液をおし出しても、同じ量を吸いこむから、血圧はそうそう変動しません。
だから、血圧の心配はいりません。
ただし、いつもの血圧が普通であるランナーの話です。
もともと血圧が高すぎて心配なランナーの方は、専門家と相談してください。
ただし、走りが生活になじんでくると、血圧高めの方も、おちついてきちゃいます。
注文に応じきれません
血液は、カラダの要求に応じて、グルグル回るスピードを上げてこたえます。
具体的には、心拍数を上げる、ということです。
ところが、上げるにしても限界はあります。
無限に上げてゆく、たとえば心拍数300回なんて無理です。
そもそも心臓のしくみ自体が、シュッと吸いこんでパッとおし出すアナログ式ですから、心拍数が増えすぎれば、吸いこむ量もおし出す量も確保できなくなってしまいます。
有効に働ける最高の心拍数が、最大心拍数とよばれるものです。
無理が過ぎれば、血液循環は、やがてカラダの需要に応じられなくなります。
血液供給が追いつかない、ということです。
それを知らせる合図が「息苦しさ」でした。
ほら、肺の問題じゃないんです。
4リットルの血液を、走っているときに、どう効率よく使うことができるか。
つまりは、カラダからの注文にどう応じられるか。
ここに、走っているときの「息苦しさ」対策のポイントが隠されていたんです。
しつこいですが、肺の問題ではありません。
注文にうまく応じられる走りのひとつが、飛脚の走りです。
話は、つづきます。
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