道は開ける
4リットルの血液を全身にめぐらせる主役は、心臓のポンプ力です。
ドッキン、ドッキン、ふだんは1分間に70回くらいのペースで、血液を吸いこみ、全身に送り出してくれています。
ご存知、心拍数です。
そして、カラダの需要に応じて、心臓はポンプの収縮回数(心拍数)を自動で調整して、カラダで必要とする血流をたもつことができます。
ここで需要が追いつかなくなると、つまり血流(心拍数)がアップアップしてくると、カラダに「息苦しさ」というアップアップ警報をだして活動を抑えようとしてくるんです。
「もう少し、活動をセーブしてね」という警報内容が息苦しさでした。
このシステムは、身についているものであり、終生変わることはありません。
痛さを忘れると節電なんてどこ吹く風、なんていう世間サマとは、この点でまったくちがいます。
なんて、かしこい。
とはいえ、まったく同じ繰り返しでは、能がありません。
マラソンだと、決まってアソコあたりで苦しくなって歩いたり止まったりしちゃうんだよな。
それじゃあ、つまらない。
そこで人類の、とくに前向きな方が考えた息苦しさ突破法。
それこそが「クンレン」です。
走った距離は裏切らない。
いやあ、でも、それはねえ。
クンレンが苦手で続いたためしはない、根性もない、わたくし、途方にくれたんです。
そのとき、あらわれた救世主が飛脚でした。
飛脚が編みだした、というより、当たり前に活用していたのが「足拍数」だった、のではないかな、という話を始めさせていただきます。
ひとりじゃないの
血液循環をになう中心は心臓にまちがいありませんが、心臓ひとりに役目を負わせるなんてことはカラダはいたしません。
血管の弾力性も協力します。
重力も、協力しています。
呼吸も、強力な協力者です。
それらの中でも、ランナーにとって忘れてはならないのが「第2の心臓」の存在です。
えっ、心臓がもうひとつあるんですか。
ムフフ、しっかり組み込まれています。
そんなこと、ありえないでしょ。
いえいえ、下肢に組み込まれているんです。
フクラハギそのものが、第2の心臓の正体です。
ただし、本家の心臓とちがって、使い方を知らないと十分な働きをしてくれないんです。
ということで、第2の心臓の取扱い説明書です。
下肢の静脈あっての第2の心臓
心臓からおし出された動脈血は、そのポンプ作用と重力によって、下半身へ、そして下肢へと一気に流れこんできます。
血液に流れは、速く強いんです。
流れこむのはたやすい、というのはイメージできますか。
でも、一気に流れこんできた下肢への血流を心臓まですい上げるのはいかがでしょうか。
特に、立っているとき。
なかんずく、歩いていたり、走っていたら。
下肢への血流は、心臓からは遠くはなれています。
くわえて、ハンパでない重力も加わっています。
どうしても、下肢の血管、なかんずく静脈には血液の渋滞が生じてしまうのです。
そこで2本足の人類が考えだした秘法は、「下肢の静脈に竹の節をつくって、特殊な弁装置を組みこもう」でした。
下肢の静脈は、竹の節様の構造になりました。
節の中には、心臓方向にのみ開く弁装置がつきました。
その結果、下肢の血液でふくらんだ静脈をギュッとしぼりあげると、心臓に向かって血液がビュッと流れてゆきます。
なんて、かしこい。
でも、どのようにしぼりあげればいいんですか。
歩くことです。
走ることです。
そうすれば、下肢の筋肉、とくにフクラハギがギュギュ〜とふくれた血管をしぼり上げてくれるのです。
それだけ。
第2の心臓の誕生
2本足になったことで、下肢にドンドン血液がたまることを宿命づけられた人間。
そのすい上げ、回収が追いつかなくなると、カラダをめぐる血流自体も不足してきて、循環全体に支障をきたすことになります。
支障をきたしてきたことを知らせる伝言は、はい「息苦しい」。
心臓と下半身とにおおきな重力差をもつ2本足人間には、こういう宿命があったのです。
その解決法として、神サマが考えだしてくださった解決場所が、「フクラハギ」でした。
一方通行の弁装置を内蔵した下肢静脈、その静脈をキュッキュッとしぼり上げられる筋肉でおおったフクラハギ。
この、静脈とフクラハギの合作こそが「第2の心臓」の正体です。
人間特有の、ほこるべき臓器です。
ひとは、一歩をふみ出すたびに、第2の心臓が働き、血液をギュッとしぼり上げてくれるんです。
心臓と下肢との重力差の少ない4本足動物にはみられない、ありがたい装置です。
探究心がおありでしたら、ワンちゃんやニャーくんのフクラハギと比較してみてください。
どこにある?
第2の心臓の特殊性
下半身に渋滞する血液は、歩いたり走ったりすることでフクラハギ第2心臓が活躍することで、本家の心臓に向かってグイグイとおし上げられます。
2つの強力エンジンで血液循環をまわす、すばらしいシステムというイメージです。
それでは、第2の心臓は、どのくらいのおし上げ力が良いでしょうか。
ここで着目していただきたいことは、フクラハギ心臓は自動で働かないということです。
本家の心臓と、フクラハギの心臓の、最大の違いがここにあります。
本家の心臓は、カラダの需要に応じて、送る血液量、つまり心拍数は自動で調整されています。
自律神経系の、すばらしい全身ネットワークのおかげです。
一方、フクラハギ心臓は、自分から意識して足を使わないと、まったく血液をおし上げられません。
そこでまず、フクラハギでもみ上げる頻度を、本家の「心拍数」に対比させて「足拍数」と命名させていただきます。
もちろん、わたしの「造語」です。
世間では、ピッチという用語が使われますが、同じようなものです。
イメージを大切にした呼び名です。
どのくらいの「足拍数」が、心臓に、そして全身の血液循環に好ましいでしょうか。
そして、自分に合っていると思いますか?
ぜひ、考えてみてください。
新しい生理学の世界です。
なんちゃって。
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