「あなたのご希望の条件は」瀧羽麻子著。節目

もやもや

 

このままで、いいだろうか?
新しい一歩を、踏み出すときじゃないか。
いやいや、いまのままで踏んばりどきだよ。

人生は、しばしば迷い道に出会うようにできています。
いつも、ずっと真っすぐ整備された道が用意されているわけではありませんから。

ランニングも、同じかもしれません。
何事にも、「節目」というのがあります。
そこを、うまく見つけられるか。
そこを、うまくのり超えてゆけるか。

長くつづくためには、どこかで切り換えも必要となります。
だって、だれだって年を重ねてゆくわけですし。
変化しない自分や人生、なんてありませんものね。

では、どこが節目なのだろうか。
いまなのか。
いまではないのか。

どのように変えるべきか、あるいは、変えないべきか。
そこを見定めるのは、案外にむつかしい。
そして舵きりが必要ならば、どの方向へと向かうべきなのか。

人生というのは、そういう連続。
なので、いくつになっても、死ぬまで、人生初心者です。

 



 

千葉香澄 40歳

 

この小説の主人公は、香澄といいます。
40歳になった独身、といいますか、いわゆるバツイチ。

就職斡旋会社の社員として、働いています。
部署の名前は『ピタキャリア』。

ここのキャリアサポート部に所属し「転職」希望者の夢をかなえてゆく仕事です。
中途採用されて8年目。
ビルの3つのフロアを使って活動をつづける、中堅の会社です。

具体的には、転職希望者から、個人的に要望を聞いてゆくことからスタートします。

同じ社内には、人材を求める企業からの登録部門もあります。
その求人会社に対応するのは、別に営業部があたります。

個人の転職希望者。
会社の求人希望。
最終的に、両者の仲介をしてゆくのがピタキャリアの仕事です。

ここでは、転職希望本人からの斡旋料はいただきません。
契約が成立したあかつきには、会社側から、年収の3割をいただく、というしくみになっています。

 



 

一ノ瀬慎 29歳

 

最初に登場する顧客は、一ノ瀬慎、29歳のシステムエンジニアです。
大学を卒業して8年目。
おもにアプリ開発の担当をしています。

じつは転職の希望や経歴をもっていたわけではありません。
仕事も、無難にこなしていました。

ところが、慕っていた2年上の先輩が突然に転職することに。
その先輩が「転職」のすすめを口にして、先輩が利用したピタキャリアを紹介されたのです。

うーん、どうしたい。
一ノ瀬自身、転職活動は予期していませんでした。
そのため、はっきりした目標もありません。
すすめられるままに、とりあえず乗ってしまった面談。
ですから、煮え切れません。

それでも、時間をかけ、回数を重ねるにつれ、新しい節目がボンヤリと自覚できるようになります。
もともと口数も少なく、内気な性格です。
積極性も、なかなか期待できません。
しかし、目標が見えてくると、変わってゆくのが人間です。

不器用さも、実直にとり組めば、誠実さに変わってゆく。
やがて、新進気鋭、バリバリの会社への転職の道が。

ですが、そんなトントン拍子に人生って進むもんでしょうか。
きびしい現実が待ちかまえていました。



 

 

夢 希望 評価

 

いまの営業の仕事は、自分にはあっていない。
なので、営業以外の職種なら何でも。
積極的に自分の特性をうったえる顧客。

とにかくはやく仕事を見つけたい。
なにしろ、生活が破綻してしまう。
小さな子どもの養育費、家のローン。
25年つとめた会社が、突然に倒産してパニックにおちいる顧客。

研究者として油の乗りきった仕事に邁進中。
それが、夫の急な遠隔地への転勤。
新しい土地について行って、研究職につく手立てはないか。

優秀なのに、なぜかいつも不採用の連続。
自分がハイスペックすぎるからなのだろうか。
自分の活躍できる会社がないことに憤る顧客。

それぞれの「転職」という人生の節目に寄りそう日々。
人生、さまざま。

 



 

節目

 

顧客の人生に添っていると、自分の人生に重なるときがあります。

自分だったら、どうするだろうか。
こういう選択もありうるんだな。

香澄自身も、幸せな結婚をして、人生の一歩をふみ出していました。
そのとき所属していた部署は『ピタマリー』。
そう、結婚相談にのるお仕事。

人生、先には何がおこるか、とんとわからない。
バツイチになって、他人の結婚相談なんてできない、やりたくもない。
一時はやめた仕事を、引き受けてくれたのが、いまの部署。

だれにも、予測できない人生がある。
それもふくめて、自分の人生。

生き方に、しっとりと寄り添ってくれる小説です。
あ、いま、こんな節目にあるんだな。
どう選んでゆこうか。

そんな自分の生き方にも重ねて読める、すてきな小説です。
いま、どんな節目を迎えていますか。
どんな選択を考えていますか。
あるいは、節目に気がついていましたか。

そんなふうにして読めると、ワクワク感も倍増しそうです。
じっくりと、読みごたえがありますよ。



 

たーさん
節目かな その発想で 人生ゆたかに

 

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