出会いがしらの、ガツン
多くのランナーにとって、いえ、ちょっと表現が甘いですね。
すべてのランナーにとって、今回は、まったく役に立たないお話しです。
それなら、いつもは役に立っていると思ってんの?
いえ、すみません。
毎度、バカバカしいお話の一席。
わが20年をこえるランニング人生の中で、これまで最大、最高、急激、激震的といっていい大事件にまきこまれた、とっても私的な、とってもローカルな、教訓にも何にもならない事例報告です。
でも、わたしにとっては、ショーゲキ的な一場面。
それは、ちょうど1年前にさかのぼる9月28日です(日誌による)。
里山には栗が実をつけ、山道のいたるところにも山栗のイガや実がころがっている時期でした。
だんだんと夜明けが遅くなってきた早朝。
夜のとばりが引いてゆく、薄明るくなってゆく時間帯。
わたしは、近くの山道をかけのぼっていました。
ずっとつづく、のぼり坂です。
息がきれます。
スピードもでません。
突然、目の前を巨大な、一瞬、軽自動車かと思わせるような、優に100キロはこえているイノシシがしげみからとび出してきたのです。
目の前、ほんの2メートルほど。
「うわあ」
思わず、声がでました。
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1度あることは、2度
凍りつく、ということって実際にあるんだ。
考える余裕はありません。
ただ、アタマが真っ白になっていました。
どうしたら、いいの?
こういうときに限って、急ブレーキはかかりません。
飛び出すな、オッチャンは急に止まれない。
本番レースでは、すぐに足が止まってしまうのに、おもしろいものです。
すると、間髪を入れず、本当に直後に、ふたたび木々を蹴散らせてあらわれたもう一頭の大イノシシ。
右手から、左手へ。
冷静に考えれば、母子だったのかもしれません。
でも、もう子じゃあありません。
少なくとも、先頭を走りぬけたイノシシと体格のちがいはありません。
ウリ坊、なんてもんじゃありません。
ザザザザザッ。
風の又三郎みたいな音だけを残して、二頭の巨大イノシシはあっという間に林の中に消えてゆきました。
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ハアハアハア。
ここで、はじめて足が止まりました。
ドキドキドキ。
胸にせまる動悸と息切れ感は、坂道とイノシシ遭遇のW攻撃のたまものです。
いや、忘れていました。
よる年波のたまもの、も追加です。
過去の光景
ひとは死に直面したとき、それまでの半生を一瞬のあいだに回顧する、といわれています。
わたしの脳裏にも、これまでの短くはなかったランニング人生が走馬灯のように流れ…てはゆきませんでした。
大事なことを忘れていました。
もう記憶力の低下も加わっているんです。
それにしても、「ド」のつくド田舎では、こういうことがあるんです。
車にぶるかることは、ありません。
車は入ることもできない、せまい山道。
しかし、イノシシは通る。
こんなところで倒れていたら、しばらくは誰にも発見されないことは確実です。人と出会ったことがない山道。
数年前、近所の老夫婦がつくっていたサツマイモ畑が一晩のうちにイノシシに掘り返される事件がありました。
いるんです。
いるんですが、自分の身にふりかかってこないと事の重大性はわからない、ものなのかもしれません。
そのイノシシくん、まだ健在です。
ときには、河原にそって相当な遠出もしているようです。
今や「指名手配書」もはり出されています。
しかし、インパクトはどうなんでしょうか。
アメリカなら、ここに賞金がのってくるんだけどなあ。
うー、ウォンテッド(by ピンクレディー)。
![](https://hikyaku-bashiri.com/wp-content/uploads/2018/09/P1020544-e1538296763312-768x1024.jpg)
そしてまた、山栗がいたるところに落ちている時期になりました。
くやしいのは
上空からのドローン映像で振り返ってみたいと思います。
あやしい中高年のオッチャン(わたくし)が、早朝の山道を地下タビでヘイコラのぼってきています。
本人は走っているつもりですが、客観的には走りになっていません。
キロ8分ほどのスピード。
おじいさんは山に芝刈りに、とまちがえそうな光景です。
そのルートに直角方面から、道なき道の急斜面を一気にかけのぼる二頭のイノシシがいます。
カラダのブレもなく、巨体の上下動もなく、突き進む走りで、ギアが最速に入っているようです。
走る、というよりは、氷の上をすべってゆくボブスレーのようなスピードです。
このままゆけば、両者は出会い頭にゴッツンコか、と思われましたが、オッチャンのスピードが出てこないのが幸いしたようです。
二頭の巨大イノシシは、オッチャンの目の前を横切ると、そのまま目にも止まらぬ速さで山の奥へと消えてゆきました。
圧倒的、ブッチギリの驚異のスピード格差。
野生対文明に毒された老いたランナーとの対比、ああ。
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そうだ、この手がある
金太郎さんが強くなったのは、足柄山のクマさんと相撲をとってきたえたたまものです、多分。
イノシシさん。
なんでアンタは、道なき道の急斜面でさえ、あのような猛スピードで駆けめぐれるんですか?
野生の本能ですか?
今度、いっしょに走ってもらえませんか。
田舎の山の中で日々イノシシとかけめぐった、たあさんは、ひとたび地上のレースにでるや、ケニア・エチオピア勢何するものぞという猪突猛進走法を武器に、圧倒的余裕でゴールをぶっちぎってゆきました。
はい、こういうのを妄想といいます。
いやいや、すでに、せん妄まで入ってますか。
幸か不幸か、その後、イノシシペアとは、ごぶさた状態です。
しかし人口減少にかたむくわが町で、ひとの数は減っても、野生動物たちは元気です。
山の師匠よ、今どこぞ。
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すべて目撃されてる仲間たちです
かわって、江戸の飛脚から走りを教わる日々です(宣伝)。
イノシシも飛脚も、関心のないランナーの方におかれてましては、まったく役にもたたないお話でした。
どーも、すみません。
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