グラウンド・キーパー

おもてには、出てきませんが

たまに、サッカーコートや野球場の横を通ることがあります。

広い空間（どうしても必要）
平らな地面（ナナメってたら大変）
均質な表面（石ころあったら危険）

思いきりボールを追ったり、走ったり、打ったりする場です。
足もとが荒れていたら、安心していいプレーもできません。

ところで、サッカーコートや野球場。
マメに使っていれば、キレイに保つことはできるでしょうか。

そんなことは、ありません。

使っていれば、デコボコもできます。
ゴミも飛ばされて、入ってくることもあります。
夏になれば、土のグラウンドなら草だってはえてきます。
雨がふれば、ぬかるんで、水たまりだってできるでしょう。

つまり、手を入れなければ、どんどん荒れてしまうものです。

そこを手入れするのが、グラウンド・キーパーです。
試合のときには、出てきませんが。

することは、ありません

体調が、どうもよくない。
近くの病院へいったら、もっと大きなところで調べてもらいましょうと。
そして入院した大学病院や、センター病院。
最新式の医療機器と、豊富なスタッフ。
ようやく出された結論。

ちょっと手おくれです。
進行がはやすぎて、手のうちようがありません。
治療の適応を、逃してしまっています。

そんなことが、あります。

そこでしばしば出されるコトバ。
「もう、することはないので、近くの病院を紹介します」

することは、ない。
あるいは、できることはない。

ショッキングな出来事なので、家族だけにそっと伝えられることがあります。
本人に、グサリといわれることもあります。

ガッカリ、を通りこして、絶望。

おいおい、ちょっと待ってください。

（写真と、本文に関係はありません）

することは、山のよう

本当にすることは、ないのでしょうか。

逆です。
新しくすることが、山のようにでてきています。

食べられないのを、どうしたらおいしく味わえるだろうか。
動くときついけど、どうしたら起きられるだろうか。
不安でねむれなくなってしまった夜を、どうしたら安眠にもってゆけるだろうか。
痛くてつらいのを、どうしたら癒されるだろうか。
息苦しいのを、どうしたら楽にすごせるだろうか。
スッキリだせなくなってしまったウンチを、どうしたらサッパリできるだろうか。
だるくて仕方ないけど、お風呂には入れないだろうか。
とり残された焦燥感を、どうわかってもらえるだろうか。

いままで「当たり前」で、考えることもなかったくらしの一コマ、一コマ。

決して、目立つものではなかったこと。
ひとに語るほどのものではなかったこと。
でも、じつは、とっても大切だったこと。

これらのひとつひとつに、新しい工夫をはじめてゆかねばならない。
ああ、なんてやることは、イッパイあるじゃないか。
どんどん、どんどん、でてくるじゃないか。

そのなかで、治療方針（ガイドライン）通りの治療法だけが、ハズレただけじゃないか。

たとえば、食べること

ムカムカがつづく。
オナカがはって苦しい。
においが、何でもキツく感じる。
口の中の感覚が、なくなっている。
口をあける力がだせない。
ノドの奥が、ヒリヒリ痛い。
歯ぐきが、ドロのように、溶けてるみたい。
味がまったくわからない。

でも、何でもいい、ああおいしい、という感覚がほしい。

昔、あんなに好きだったアイスクリーム。
甘い、ふわふわのショートケーキ。
がっつり、かみついた焼き鳥。
ノドをグビグビと通過するビール。

さあ、どうしたら味わえるでしょうか。

やることは、キリがありません。
ためしてみることは、無限大です。

ああ、これって、グラウンド・キーパーの仕事に通じてませんか。
試合の、土台作り。

グラウンド・キーパーを忘れない

すばらしいプレー。
盛りあがる、拮抗した試合。

こういうのができるのは、縦横無尽に駆けめぐれるグラウンドがあるから。
そのグラウンドを守っているのが、グラウンド・キーパー。

試合の舞台には、でてこないかもしれない。
選手と、ちょくせつ話もしないかもしれない。
極端なはなし、存在を意識されることもないかもしれない。

でも、欠けちゃ、ならないものです。
世の中には、そういうものが、たくさんあります。
あるけど、なかなか見えない。

荒れてみて、グラウンド整備の大切さが、わかります。
同様に、大病や故障をして、くらしのひとつひとつの大切さが身にしみてきます。

まず、グラウンドを整えておくこと。

わたしたちのグラウンド。
それは、日々の衣食住でしょうか。
くわえて、休養。

とかく乱れやすくなる年末年始。
くらしのグラウンド・キープにも気を使いたいものですね。

それあっての、走り（笑）。