いわれ
「アタリマエ」を「アタリマエ」のまま、思考停止にならない。
「アレッ」と思ったら、そこで、一歩立ちどまってみる。
そのためには、「アレッ」と感じられる感性が必要ですけど。
そういう感性をもった方を、尊敬します。
身元良平医師も、そのひとりです。
大正6年生まれ、平成2年没。
もう、この世にはいらっしゃいません。
見本先生は、昭和52年、ひとつの「アレッ」を世に問いました。
「ゴム紐症候群」という概念です。
いろいろと深い洞察もありますが、かんたんに紹介させていただきます。
「ひとに、持続的な刺激が作用しつづけると、広範な自律神経反射をひきおこす」という現象のひとつの臨床報告です。
持続的な刺激に、強い、弱いは関係ありません。
強い刺激だから、強い影響がでる、ということではありません。
この具体的な現象として、カラダにまくゴム紐の存在に着目しました。
ゴム紐は、伸び縮みします。
カラダにまくと、カラダにあわせて、つねに巻きつく。
これが「持続的な刺激」になってゆきます。
この影響に、着目されました。
ちなみに、ふつうの「紐」でしたら、持続的な刺激にはなりません。
断片的な刺激となります。
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ゴム紐は、どこにもある
いちばん普遍的なゴム紐は、「パンツのゴム」でしょう。
老若男女を問わず、今日、たいがいの方は、パンツをはいています。
そしてパンツには、ゴム紐がまいてあります。
ふつうの「紐」のパンツ、というのは、もはや貴重です。
むかしは、おそ松くんのデカパンおじさんじゃなくても、紐パンでした。
紐でむすんで、はく。
だって、ゴム紐はまだ普及していませんでしたし。
いまや、衣類関係には、アタリマエについているゴム紐。
ジャージ系のズボン。
くつ下。
ブラジャー。
ガードル。
パジャマ。
ランニング時だって、同様です。
ランパンに限りません。
多くのランナーが愛用する着圧ウエアだって、立派なゴム紐の仲間です。
いまから、24時間をさかのぼってみましょう。
自分のカラダに、ゴム紐がまかれていなかった時間は、いかほどありましたか。
起きているときはもちろん、寝ているときもゴム紐のお世話に。
唯一、ゴム紐から開放されるのは、おフロの時間帯だけ、とか。
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「アレッ」の瞬間
ゴム紐の普及は、昭和30年代といわれています。
それ以降にお生まれの方々は、生まれたときから、ゴム紐がある生活です。
「アタリマエ」にゴム紐のある生活。
ああ、ここにも「アタリマエ」が登場しています。
といって、生まれたときから、お世話になっているゴム紐。
そこに今さら、「アレッ」と感じるのは、むつかしいでしょうね。
身元良平先生は、大正から平成の時代を生きられました。
医師として、油ののりきった時代に、ゴム紐の普及とかぶったわけです。
身元先生は、患者さんの変化に、気がついていました。
オナカの不調や、肛門、排便の不調患者がふえている。
腰や、脚や、背中の痛みをうったえる患者もふえている。
関節痛のうったえの患者が多くないか。
耳なり、立ちくらみ、ふらつきの声が多くなっている。
不眠になやむ患者が多い。
うつっぽいひとが、ずいぶん多くなっている。
ハダの張りが低下したり、色調が悪くなっていないか。
口内炎とか、粘膜の異常をうったえる患者がふえている。
冷え性が、やけに多くなってきた。
生理痛でなやむ患者が増加している。
これらの多彩な症状の増加は、なぜなんだろうか。
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原因は、ヒトツじゃないけど
たしかに、世の中がおおきく変わってきている。
高度成長まっただ中。
車や電車の普及は、全国におよんできている。
家電の進歩が、家事の姿をまったく変えてきている。
インスタント食品の台頭や、農薬の使用も増加の一方。
大気のよごれも、深刻になりつつある。
つまりは、生活様式も、環境も、かつてない変化をみせている。
これらが、人間をむしばみ、新たな患者をつくってはいないか。
このとき、自分の身体感覚に目がゆきました。
そういえば、ゴム紐パンツは違和感を生じてこないか。
紐パンから、ゴム紐パンに移行中だからこその、するどいひらめきです。
新たな患者層は、みなゴム紐パンツをはいていないか。
そこに、生理学の知恵を活用してゆきます。
ゴム紐は、「持続的な刺激」を産んでいないか。
そしてこれが、自律神経系を通して、人体に影響を産んでいないか。
そう、ゴム紐は、つけている限り持続的な刺激をあたえつづける輪っかです。
そして、この「刺激」は、人類にとって、有史以来なかったことです。
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ゴムの木から、ゴム紐がうまれました。
実践
この卓越した観察眼は、つぎに実証を試みてゆきます。
新しい症状の患者さんは、増える一方です。
「ゴム紐を巻いていないか?」
「少しのあいだ、ゴム紐をやめてみたらどうか」
すると、多くの患者さんたちが、1〜2ヶ月を待つことなく変わりはじめました。
変わったゆくのは、よくなる方向へです。
ただし、おハダの変化には、もう少しの時間が必要でした。
病気の原因は、外からの要因と、内なる要因とに大別されます。
風邪ウイルスという「外因」がカラダに入ってあばれると、「風邪症候群」を生じる。
風邪症候群というのは、風邪の症状モロモロのまとめです。
同じように「ゴム紐」という「外因」が、カラダに変化を産んできている。
そして、それらは何とも多彩な症状をつくってきてはいないか。
それらを「ゴム紐症候群」と名づけたらどうだろうか。
ゴム紐症候群の誕生の瞬間です。
(わたくしの想像ですけど)。
ただその存在は、ゴム紐の利便性の影にかくれてしまいました。
ご愛用の「ハリソン内科書」をみても、この名はでてきません。
「ゴム腫」とか「ゴム人間症候群」は、のっていますが。
世に、みとめられなかったのでしょうか。
専門家が、みとめなかったのでしょうか。
この症候群、スルーしますか?
わたくしは、多いに興味をもちました。
(つづく)
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たかがゴム で終わらずに 立ち止まる
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