糖質クンの、昔語り

ボクは貴重品

 

ムカシ、ムカシの話をします。
日本の歴史を学ぶと、昔話として、縄文時代とか弥生時代が登場してきます。
でも、そんな時代ではありません。
もっと、もっとさかのぼった時代の話です。

ボク(糖質)は、とっても貴重でした。
ああ、ボクは別名「ブドウ糖」とか「グルコース」ともいいます。
自分から言うのも何ですが、そのボクは、とっても貴重な存在でした。

なにしろ、主食は木の実や、魚介類、身近な小動物たちでしたから。
基本、甘いものは世間にはない。
アイスも、チョコも、ゴハンもない。
ハーゲンダッツ、何のことでしょう。
農耕作業でさえ、知られていない時代です。。
口にできるのは、今風にいえば、脂質タンパク質が主なものです。

具体的には、脂質(75%)、タンパク質(20%)、糖質(5%)という時代です。
今の世は、糖質(60%)超ですからね。
総カロリー自体も、今の世よりずっと少なかったのです。

ですから、カラダの中で、ボク(糖質)は大切にあつかわれました。
とにかく、貴重品
少しでも余裕がみられれば、たちどころに肝臓や骨にためられたのです。
けっして、無駄使いしない。
大切にあつかわれたのです。

どれだけ大事にあつかわれたか。
それは、カラダの中からボクを集める係の者がたくさんいることからも、うかがえます。
ざっとあげても、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどは、みなボクをさがし出す係になっているのです。

ボクが増えすぎたら、どう整理してゆくか、という係はインスリンひとりしかいません。
それは、時代が移った今も同様です。

 



 

なぜ大切にされたのか

 

じつは、ボク(糖質)は、活動の燃料としては主役ではありません。
主役は、双子の脂質兄弟です。
双子だから、パッと見では区別がつきません。

ひとりは心拍や呼吸や体温を一定にたもつ、いわゆる基礎代謝担当の基礎脂質クンです。
もうひとりは、活動の主エネルギーになる活動脂質クンです。
(基礎脂質、活動脂質は、ここでの造語です)。

脂質兄弟は、燃焼時の安定感も高く、しかも燃費もバツグン。
馬力はあるわ、たくさん積めるわ、で車業界からも理想の燃料系とうらやましがられる存在です。

ただし、ひとつだけ弱いところがある。
臨機応変さの出力調整という場面が苦手
カシャカシャと、軽快にシフトチェンジをおこなう、というのができないんです。
ずっと同じペースで燃えつづける、という場面では、向かうところ敵なし、なんですけどねえ。

具体的にいうと、苦手な2つの場面。
ひとつは、出だし。
グワーッと燃料を燃やしはじめるのに、ついてゆけない。
もうひとつは、活動中のペース変化への、即時の対応が無理。

つまり車でいえば、アクセルを踏むとき、ブレーキを押しんだ後の変化に、脂質クンは追てゆけなくなるんです。

そこで、ボク(糖質)の出番になるんです。

 



 

臨機応変さが、ボクの本領

 

脂質クン燃料は、活動の急な変化についてゆけない。

そこで、脂質クンが間に合わないときに、ボク(糖質)が活躍するんです。
ボクは、パッと燃えることができる。
大量にくべれば、おおきなエレルギーを生むこともできる。
しかも、十分な酸素がなくても、燃えることができる。

その臨機応変さ、瞬発性、爆発力、どれをとっても、状況に合わせた活動に必須の機能です。
脂質クンにないこの機能を補う目的で、本来のボクはありました。
ですから、ボクがいなければならない。
だから、大事にされているわけです。

マラソンといえば、均等なペースで走る長距離走です。
活動脂質の格好の出番。
とはいっても、ずっと判で押したように均等に走りつづけてゆくことは困難です。
どうしても、ムラはできます。
コース自体の高低差も、均一ペースの困難さを演出します。

すると、活動脂質だけの燃え方だと、出力不足の部分ができてしまう。
そこで、ボクがうまく穴埋めしながら、燃焼をバックアップできるしくみです。

つまり、ペースの変化に応じて、火力を一定に保てるような潤滑剤的役割、ということです。

これは、決して主役にたっているわけではありません。
でも、ボクがいなければ、安定した燃焼は困難なんです。

 



 

ボクの燃え方は、2通り

 

ボク(糖質)は、2通りの燃え方ができます。

普通は、通常の燃え方。
通常というのは、空気(酸素)と結合して、しっかりと燃えることです。
なので「好気性解糖」とよばれています。
ボク(糖質)が燃えてゆくのは、「解糖」とよばれます。

この燃える場所が、細胞の中の、ミトコンドリアという場所です。
酸素と結合して、ボクは十分に燃えることができます。
ボク一人から、38個分ものATPが作れるんです。
ATPというのは、エネルギーの単位(量)。
ガソリンでいうと、リットルに相当します。

一方で、酸素が十分でない場所でも、ボクは燃えることができます。
空気がない、という意味で「嫌気性解糖」とよばれます。
ただし、あくまで非常体制、です。
そして、効率もよくありません。
ここでは、ボク一人から、2個のATPしか作れないんです。
酸素があれば、38個も作れたのとは、ずいぶんちがいます。

しかも、処分にこまる「乳酸」という老廃物までできてしまいます。
この乳酸の処分費用には、肝臓で6個のATPが必要です。
2個のATPを作る代償として、6個のATPが使われる。

つまり、単純に計算して、マイナス4個分のATPの赤字計上
効率は、まったく良くありません。
マイナス計算でも、今ATPが欲しいんだ。
国の会計と同じ状況です。

 



 

余談ですが

 

 

ちなみに、ガン細胞は、ボク(糖質)しか燃料にできません。
脂質を燃料にすることは、できないのです。
しかも、ミトコンドリアに入れないので、効率の悪い嫌気性解糖しか、利用できません。

効率が悪いくせに、勢いだけはイッパシなので、ガシガシ燃えたがる。
しかも、マイナス収支の、酸素から顔をそむけた燃焼です。
さらにくわえて、老廃物の酸をたくさんつくる嫌気性解糖。

すると、どうなってゆくでしょうか。
マイナス収支なのに、どんどん燃料を使ってゴミを出す。
そう、げっそりとやつれてゆく、です。
やせるんじゃありません、やつれるんです。
しかも、ガン細胞は、たんぱく質まで燃やしちゃいます。

なんで、こんな効率の悪い燃え方をするんでしょうか。
実は、ミトコンドリアの中に入ると、異物としてこわされてしまうのです。
ですから、ミトコンドリアに近づけない。
苦肉の策、ってことでしょうか。
あるいは、ミトコンドリアに近づかなくて生きてゆけるから、カラダの中ではびこれる。

ボク(糖質)の大切さが、わかっていただけたでしょうか。

でも、最近はボクをとり過ぎるひとが増えて、思ってもみない問題が蔓延してきました。
時代の流れですね。
さあ、次はボクの現代編です。

 



 

 

たーさん
スムースな 動きのうらに グルコース

 

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