マラソンとこむらがえり(3)

なぜの連発

 

筋肉が「急に」痛くなる。
マラソン中のコムラガエリは、この範疇にはいります。

どこが痛みを感じとるのでしょうか?
筋肉につく「筋膜」が主な痛みの感覚器です。
ちなみに、筋膜というのは、筋肉を「つつむ」イメージだけではありません。
筋肉塊、筋細胞まで、こまかくはりめぐらされています。

なぜ痛むのでしょうか?
筋肉細胞から、痛み物質が発せられるからです。
たとえば、ブラジキニンとか。

どうして、痛み物質がでるのでしょうか?
筋肉細胞に、「異変」がおきたからです。

異変とは、具体的には、どんなものでしょうか。
2つに大別されます。

ひとつは「外因性」。
外力などで、筋細胞が、こわされる。

もうひとつは「内因性」。
筋細胞が、アップアップになる。

アップアップって、どういうこと?
筋細胞の「酸欠」です。
つまりは、酸素の供給が低下すること。
だいたいは、血流がなくなってきて、おこります。

 



 

酸欠の恐怖

 

心臓の強烈な痛みの代表疾患が、狭心症と心筋梗塞です。
狭心症は、心臓への血流の低下。
心筋梗塞は、心臓への血流停止。
どちらも、酸欠をまねく症状です。
血液の中には、豊富な酸素があります。
そして、小さな心臓でも、心臓から送りだす血液の5%が必要です。

細胞は、酸素不足に敏感です。
いつも酸素はまわりにある、という前提で生きていますから。
脳ミソは、数秒以上の血流低下で、意識を失います。
そもそも、息どめだって、何秒できますか。
1分も止められていたら、すごい。

そういう細胞に、酸素供給がたたれたら、どうなるでしょうか。
たちどころに、細胞死が始まってしまいます。

ですから、細胞には、酸欠にたいするセンサーがするどい。
ちょっとでも不足を感じれば、合図します。
苦しいよ、さらには、痛いよ(痛み物質の放出)。
切羽詰まった緊急信号です。

そして、コムラガエリも、ひとつの酸欠状態にあります。
いうなれば、フクラハギの狭心症発作。
これも、みてゆきます。

 



 

痛みの意味

 

筋細胞が痛がる。
あらためて、なぜこのような反応を示すのでしょうか。

これはたぶん、神さまの設計図なんでしょうね。
静かにせよ」というお告げ。

痛いのなら、お休みなさい。
野生動物は、このきまりをよく守ります。
これが、痛みをやわらげてくれる方法だからです。
これが、たいがいの場合、はやくに回復できる方法だからです。
だれから教えてもらったわけではないのにね。

すごく理にかなった行動です。
なのに、人間ときたら、痛いのに無理をする。
あまつさえ、痛みをかくす薬なんかまで、作っている。

マラソン中の、コムラガエリ。
これって、だいたい突然おそってきます。
ただし、まったくの突然ではありません。

だいたい予兆がある。
痛みの前には、ハリ感がでる。
場合によっては、ふだんの生活からハッている。
そこに気がつくランナーと、気がつかないランナーはいますが。

その予兆は、何を暗示しているのでしょうか。

 



 

休ませたい理由

 

では、なぜ筋肉を休ませたいのでしょうか。

疲れが、たまってきたからですか?
疲れ自体は、通常、そんなに緊急事態ではありません。
休めば、ぬけるものですし。

休ませたい理由は、筋組織の「ハカイ」を察知したからです。
筋肉が、こわれだしているよ。
そのSOSサインが、「痛み」です。

そして、本格的なハカイの前から、暗示するサインもだしてきます。
それが、マラソン中のコムラガエリの予兆。
ハリ感です。

寝ていると、明け方にコムラガエリで目がさめる。
ゴルフ後半戦のコムラガエリ。
これらに、筋組織のハカイは、まだありません。
ふつうは、たんなる「酸欠」です。
筋組織自体は、こわれていません。
ですから、血流さえ回復すれ、ウソみたいによくなる。
筋組織をゆるめて血行をもたら芍薬甘草湯の本領発揮です。

ところが、マラソン最中には、そんな「いやし」的方法では解決無理です。
単なる酸欠じゃないんですね。

 



 

ハカイの意味

 

なぜ、マラソン中は、筋組織がハカイされるのか。
おわかりですね。
ハカイは、くり返す「走り」の衝撃の結果です。

だって、何万回、トントンととびはねましたか。
しかも、そのとびはね方です。

最近は、走り方がよりダイナミックになっているように見受けられます。
その理由のひとつが、いわゆる「厚底・前傾」シューズの登場です。

わたくし自身は、厚底・前傾シューズはもっていません。
というより、ランニングシューズ自体をもっていません。
なので、あくまで観察上の考察となります。

厚底・前傾シューズのランナーは、力強く前にでます。
歩幅も、ひろがっています。
そのシューズにのるだけで、そういう力が生まれるんでしょうね。
とくにスピードをあげるほど、顕著。

ということで、みなさま、よくとびはねていらっしゃいます。
よく、とびはねられる。
これはすなわち、着地に勢いがつくことでもあります。
着地時のショックを受けとめるためも意味のある、厚底。
とはいえ、クツだけで、その衝撃は受けとめられないでしょう。

そのため、とくに「かかと」や「ふくらはぎ」に負荷がかかる。
そういう高負荷を、何毎回もくりかえす。

その結果、おおきな2つのハカイがおこるでしょう。
(1)筋細胞自身のハカイ。
(2)筋細胞間を灌漑する細血管のハカイ(断裂)。

ハカイされた筋細胞からは、痛み物質の放出と、炎症がはじまります。
ハカイされた細血管は、血流を途絶えて、酸欠をまねきます。

この2つが同時進行するのが、マラソン中のとくに脚筋細胞たち。
ほかの状況でのコムラガエリとは、ことなる病態というのが、おわかりですね。
特殊だから、特殊に考えねばならない。
つまり、両者の対応をしないと、解決にむかわない。
ここに、特別扱いの必要性があると考えます。
(つづく)

 



 

たーさん
脱水に ムクミの混在 根は深し

 

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